第452話 踏破を目指して戦闘開始
二百体以上のピエールたちが酸弾で溶かした植物が次々と魔物へとその姿を変え魔法陣でどこかへと転送される。
「取り込んで植物にしていた魔物を破壊したら元の魔物に戻る……、これはなんとなく分からなくはない現象だけど、どうして元の姿になった魔物を再度取り込まないでどこかに転送させるのかな?」
そんな素朴な疑問を呈すミナト。
「ミナト!ダンジョンって謎な部分が多いの。一度取り込んだ魔物は取り込めないとかいろいろと説はあるけど未だ詳細は不明だわ」
それがシャーロットの回答だ。どうやら原因は分からないらしい。
「シャーロット……、この魔法陣で転送された魔物って……?」
ミナトはあることに思い当たった。眼前の現象はあまりよいことではない現象だと思われる。
「そうね。地上に転送されている可能性が高いわ……」
シャーロットがミナトの頭の中を代弁する。これがこのダンジョンから魔物が氾濫する原因かもしれなかった。
「でもミナト!第一階層の入り口付近に大量の魔物がいたことも事実よ!あのザイオンって貴族が何をしたのかは分からないけど、私たちが何もしなかったら第一階層の魔物が外に出てきていたと思うわ。それに
そう言ってきたシャーロットに頷くミナト。
『それにしても……』
少し思うところがある。三百年前の冒険者もこの空間に辿り着いのかもしれないというところに驚きを隠せないミナト。もしそうであったら魔法が使えない状態であのスケルトンの群れを突破できるかなりの手練れであったのだろうことを想像するミナトだった。
「今のところはゴブリン、コボルト、オーク……、強そうなオーガは一体だけ……。転送先が地上だとしてもまだほとんどが弱い魔物だからこれくらいの数なら問題ない?」
魔物が転送される光景に視線を向けつつそうシャーロットに尋ねるミナト。
「そうね。オーガなら
頷きつつそう返してくれる美人のエルフ。
「シャーロット!この空間を壊す方法は?」
短剣を構えつつそう問いかけるミナト。
「
ミナトにそう応えるシャーロット。その言葉にミナトが反応する。
「今はおれもシャーロットも魔法が使えない。広範囲を攻撃できるのはピエールだけだ。ピエール!百体で周囲の植物に酸弾で攻撃!残りの百体で植物から変化した魔物を攻撃!転送前に斃いしてしまおう!」
『『『『『承知でス!マスター!』』』』』
ピエールが力強くぷるんと揺れると周囲に散開して目につく植物に酸弾を放ち始めた。
『斃すのでス~!』
『殲滅でス~!』
『汚物は消毒でス~!』
一部なにやら物騒な言葉を話しているピエールもいるようだが瞬く間に空間に生い茂っていた植物が酸で溶かされる。
『魔物ヲ確認!攻撃でス~!』
『転送前ニ攻撃でス~!』
『逃がしませン~!』
そうして溶かされた植物が元の魔物の姿を取り戻そうとしたところに再度ピエールによる酸弾での攻撃を受け魔物はその五体を溶かして消滅した。巧みに連携を取る二百体以上のピエールによってそこかしこでそんな蹂躙劇が繰り広げられる。
『これならなんとかなるのかな……?』
ミナトがそんなことを思っていると、
「ミナト!」
シャーロットの鋭い声に振り返るミナト。そこには投擲されたナイフによって右の前足を砕かれた体高二メートルを超える巨大な木製の狼がいた。瞬時に敵だと判断したミナトは身体強化を全開にして短剣を振るう。木製の狼の頭部が砕け散りその全身が虚空へと消える。
「助かったよシャーロット」
笑顔で感謝を伝えるミナト。
「集中を切らしちゃダメよ?どうやらコアは私たちがピエールちゃんにさせていることを理解したみたいね。木製だったけど生きている狼型の魔物と同じ動きをしていたわね。きっとコアがコントロールしていると思う。次も私たちを狙ってくるわよ!」
そう言って投擲用のナイフを構えるシャーロット。この空間は魔法が使えない。シャーロットは身体強化魔法を使えるが、ミナトのようにスキルを使って身体強化ができるとは聞いたことがない。それなのに投擲用の小さなナイフで巨大な木製狼の足を砕いてみせた。端的に言って尋常な威力ではない。
「シャーロット?どうやってそんなナイフであの狼の足を粉砕したの?それにそのナイフってどこに隠してあったのかな?」
「い、いいじゃない!気にしないで!それよりも魔物に集中よ!」
はぐらかされるミナト。シャーロットの顔が少し赤い。どうやらシャーロットはやろうと思えば素であれくらいの威力を出せるらしい……。それにしてもあのナイフ……、魔導士風のローブの下に身につけているあのスカートに隠してあったとしたら……、暗殺者仕様でちょっと怖いし、元の世界で若い頃に見た新宿を舞台にする作品に登場する長髪の女刑事を思い出してしまうミナト。
『あれはスカートの下じゃなくて太腿に装備していたっけ……』
そんなことを思い出しながらもミナトは襲い掛かってきた新しい木製の狼へ一歩を踏み込むと手の短剣に力を込めて木製の狼をその頭部から両断するのであった。
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