第451話 ダンジョンで極めてまれに起こる現象
『『『『『ワカリましタ~!酸弾で一斉射撃でス~!』』』』』
ミナトとシャーロットの周囲を固めた二百体以上のピエールが一斉に周囲の植物を標的として酸弾を撃ちまくる。植物が次々と溶かされその原形を失うがピエールの酸弾は止まらない。
「ミナト!足元に注意して!」
シャーロットがそう言ってきた瞬間、
「え?うゎああああああああああ!」
素早くミナトの両足首へと絡みついた蔦によってミナトは空中へと高く持ち上げられた。そこに迫る群れと表現できるほどの大量の蔦。しかし叫び声こそ上げたもののミナトの心は冷静だ。こんな時も【保有スキル】である泰然自若はいい仕事をしているらしい。
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
この空間では魔法が使えないので【眷属魔法】である
【保有スキル】白狼王の飼い主:
白狼を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
身体強化魔法の性能を圧倒的に向上させる。上限はなし。強化の度合いは任意。
強化しすぎると人族では肉体が瓦解する危険があるので注意。
種族が人族であるときは気を付けましょう。
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。アースドラゴンを眷属化したため取得。
「この!」
【保有スキル】白狼王の飼い主を可能な限り全開で発動した身体強化により足首の蔦を引き千切り、グランヴェスタ共和国の職人であるアイリスに造ってもらった短剣で迫る大量の蔦を次々と斬り飛ばす。その剣の冴えはミナトが【闇魔法】を得意としていることを忘れさせてしまうほどの見事なものだ。
「やっぱりロビンに会えたのは幸運だったかもね」
【保有スキル】暗黒騎士の主君の効果を改めて実感するミナトである。
【保有スキル】暗黒騎士の主君:
あ、人族である場合は身体強化をお忘れなく。非常に苛烈な剣技のため自身の身体が保てない恐れがあります。
「シャーロット?どうしておれの足元に蔦が攻撃してくるって分かったの?」
無事にシャーロットの傍らへと着地することができたミナトはそう美人のエルフに問いかける。
「ごめんなさい。でもミナトのお陰でこの空間の正体を確信したわ!見て!」
シャーロットの美しい白い指が指し示す先へと視線を向けるミナト。その視線の先にはピエールの酸弾で溶かされた筈の植物があった箇所。既に溶かされドロドロになった植物だったものが残されている。その光景にミナトはとんでもない違和感を覚える。
「おかしくない?ピエールの酸弾を受けたんだよね?」
ピエールの酸弾は極めて強力だ。その酸弾を受けたものは溶かされ最終的には消滅してしまう。だが不定形の液体となっている植物だったものは消滅することなくその場に残されていた。すると……、
「ウソでしょ……?」
その視線の先で起こった現象にミナトは思わずそう呟く。液体が動き出し何やら固形物へとその状態を変化させ始めた。そんな現象がピエールが溶かした周囲の全てで発生していた。そうして何かの肉塊にその形状を変化させる先ほどまで植物だったもの。
「きっと魔物に変化すると思うわ!」
シャーロットがそう言ってくる。
「うわ……、本当だ……、液体から内臓、筋肉、外見が形作られて皮膚で覆われる様子がめっちゃグロい……。泰然自若が無かったら胃の中身がリバース確定のホラー演出……。あ、完成してきたみたい……、ゴブリン、コボルト、オークにオーガ……。シャーロット!これってどうなっているの?」
問いかけにその美しい顔をミナトへと向ける美人のエルフ。その美しい顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。
「植物になる事例は見たことも聞いたこともないけどこれはダンジョンで極めて稀に発生する現象よ。古い言葉で
「なんでそんなことを……?」
「理由はよく分かっていないけど、取り込まれた魔物は死ぬことも消滅することもなく永遠に空間に囚われるとされているわね。かつては生物に不老不死を与える研究とかの資料にされていたような気がする」
そんな話をしていると……、どんどんと魔物が完成されてゆく。
「ピエールちゃんが攻撃を与えたことで空間からの呪縛が解けて魔物が元の姿を取り戻したのよ!」
「シャーロット!あれって魔法陣?」
「私の知らない現象ね……」
ミナトが魔物の足元に輝く魔法陣に気が付きシャーロットが怪訝な表情をする。すると魔法陣の光に飲まれたゴブリンがその姿を消した。
「あ……、もしかしてダンジョンから大量の魔物が溢れたのって……」
「三百年前にこのダンジョンに潜った冒険者もこの空間で何かを破壊したのかもしれないわね。ミナト!ピエールちゃん!このまま魔物を転移させ続けるのはマズいわ!この空間を壊すわよ!」
シャーロットの言葉にミナトは短剣を構え直し、ピエールはぷるんと揺れるのであった。
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