第449話 ミナトたちは最下層を目指す
『前進あるのみでス~』
『迎撃でス~』
『殲滅しまス~』
『撃退でス~』
『蹂躙なのでス~』
『圧倒でス~』
『斃すのでス~斃すのでス~斃すのでス~斃すのでス~斃すのでス~』
二百体以上にもなる虹色のスライムたちが巨大かつ真っ赤なスケルトンをその酸弾で蹴散らす光景はまさに圧倒的な蹂躙劇である。
「こういう物量で押してくるような展開はピエールの独壇場かな?」
「スゴイと思うわ!ピエールちゃんは本当に頼りになるわね!」
ミナトがそう呟き、シャーロットが同意する。
ここは王都の南西にある禁忌とされるダンジョン『
何故、第一階層だけ魔法が使えたのかその辺りがよく分からないミナトである。
さらに第一階層は多種多様な魔物がひしめき合っていたが第二階層以降に出現した魔物は真っ赤なスケルトン一種類のみ。ただし階層が深くなるにつれスケルトンのサイズは大型化し、最初は剣を装備した剣術が使えるスケルトンのみが出現していたのだが、槍、盾、メイス、弓矢といった多彩な武器を装備したスケルトンが出現するようになる。この第九階層ともなるとスケルトンの背丈は三メートルを超え、装備している武器はどれも巨大で禍々しい魔力を放つ何らかの魔法武器となっているようであった。
そしてミナトが驚いたのは魔物の数である。
これまでも世界最難関ダンジョンを潜った際は『火のダンジョン』では大量のサラマンダー、『水のダンジョン』では大量のジャイアント・フロッグ、そして『地のダンジョン』ではピエールの影響を受けた地の大樹がイレギュラー的に創り出した大量のゴーレムと戦ってきた。ここ『
『魔法も使えないしスケルトンは純粋に強そうで数も多い……、というかこれは多すぎる。そしてここのスケルトンはドロップ品を残さない。ここは冒険者にとって悪夢としか表現できないダンジョンだな……』
そんなことを考えるミナト。
非常に危険で強力な魔物が多数出現するダンジョンではあったのだが、
『酸弾~!』
二百体を超すピエールによる酸弾の一斉射撃で頭部を魔石ごと溶かされ消滅する多数のスケルトン。分裂することができたピエールはここ『
そうして森の中でスケルトンを殲滅しながら進むと第十階層へと降りる階段を見つけることができた。ピエールのお陰で周囲にスケルトンの気配はない。
「ふぅ。ピエール!お疲れ様!君がいてくれて助かったよ!」
「ピエールちゃん!見事だったわ!」
ミナトとシャーロットがそう声をかけると、ミナトたちが纏っていた漆黒の
『ピエールたち、みんな頑張りましタ~!』
そんな念話を飛ばしながら子犬くらいのサイズになったピエールがミナトの方へと飛んできた。しっかりと受け止めるミナト。
「ああ、本当に凄かったよ!」
「うふふ……」
褒めるミナトの腕の中でふるふると震えるスライムをシャーロットが撫でる。そのつるスベした感触が心地よい。ひとしきりピエールの感触を楽しんだミナトとシャーロット。ピエールも満足したのか手のひらサイズになってミナトの肩へと移動する。
「次が第十階層か……、そろそろ最下層でもいいような気がする……、というか最下層であってくれ!」
視線を第十階層へ降りる階段へと向けながらミナトが自身の願望を口にする。
「うーん……。どうかしら?ここはかなり特殊なダンジョンではあるけれど世界最難関ダンジョンではないから第十階層が最下層っていう可能性もあるけど……。でも油断は禁物よ?」
そんなミナトにそう言葉をかけるシャーロット。その真面目な表情は文句のつけどころがないほどに美しい。
「ああ。ピエール!お願いできる?」
『ハイ!』
ミナトのその言葉だけで全てを理解したピエールが二体に分裂した。
『イってきまス~』
そうして一体のエンシェントスライムが第十階層へと降りて行った。それから周囲のスケルトンを警戒しながらおそらく十数分は経過しただろうか……、
『戻りましタ~!』
元気な様子で第十階層へ潜っていた方のピエールが帰還する。
『やっぱり第十階層も魔法が使えませン~。そして奥に大きな金属製の扉がありましタ~。このダンジョンの主の部屋ではないかと思われまス~。階段の周囲の魔物は殲滅しマしたのデ、今なら簡単に降りられまスヨ?』
その報告にミナトとシャーロットは顔を見合わせて頷き合う。そしてピエールに感謝を伝えると第十階層へとその歩みを進めるのであった。
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