第434話 きっとメンドーそうなパターンで……
受付嬢をしているカレンさんの説明で冒険者ギルドの会議室に緊張が走る。
「さっき発端となった出来事の当事者はまだ到着していないって言っていたけどよ。その『
B級冒険者パーティの
「はい……。ウィルさんもご存じの方で、王城に連絡しギルドへの出頭命令をお願いしました」
そう答えるカレンさんの表情は冴えない。一方のウィルはというと、カレンさんの回答とその表情でどうやらカレンさんが誰のことを話しているのか分かったようだ。
「お、おい……、まさか……、あの野郎はたしか領地に送られて永年の謹慎処分ってことに……」
驚いた表情となったウィルがそう呟くように言うと、
「先頃、その謹慎が解けたそうで王都に帰還されました」
カレンさんの言葉に項垂れるウィル。他の
「おいおい……、マジか……」
「あいつが戻ってきていたのか?だとしたらそのダンジョンへの潜入ってやつに巻き込まれた連中が気の毒だぜ……」
「勘弁してほしいもんだ!」
「最近の王都は冒険者が活動のしやすい街ってことで評判になっていたってのに……」
『問題のある冒険者?領地に送られてってことは貴族で冒険者?』
『かもしれないわね……、なにかメンドーな奴な気がしてきたわ』
『どんな冒険者なのデショウ?』
念話でそんなことを話しているミナトたち……、すると、
「ちょっと待て……、だとすると……、ティーニュさんヤバくないか?」
一人の冒険者が立ち上がり唐突にそう言い放つ。表情を暗くしていた冒険者達の視線がティーニュへと集まる。その視線にいつものようにフードを目深に被ったティーニュは首を傾げるが……、次の瞬間、何かを思いついたかの如くティーニュに向けられていた視線が一斉にシャーロットへと集中した。
「そ……、そうだ!姉さんの方がヤバいぞ……」
「な、なあ……、これ俺達にとばっちりは来ないよな?」
「ああ、久々に姉さんの無双が……」
「何言ってやがる!ミナトさんに抑えて貰うようにお願いしないとだな……」
ぞんなことを呟いている冒険者達の顔色は真っ青である。
「?」
周囲の様子にティーニュと同じように首を傾げるシャーロット。その表所はとてもとても美しい。そんなシャーロットを見ていたウィルが、
「こりゃ、ダメだろ……。カレンさん!ミナトさん達の助力が必要なことは分かる。だがミナトさんのパーティをアイツに会わせることは賛成できねぇよ!」
渋い顔でそう断言するが、
「確かに私もその通りだと思うのですが、ミナトさん達にもここで待機するようにと上からの指示がありまして……」
カレンさんが頭を下げながらウィルにそう返しているが、『カレンさんの上って二大公爵家か王家じゃないの?』なんてミナトが考えているのは秘密である。それにしても……、
『これって高位貴族のどうしようもない女好きの息子とかが親の権力を笠に冒険者になってやりたい放題していたパターン……?イイ女を見ると俺の女になれとかって貴族の権力を振りかざして迷惑を振りまく……、的な?』
『ミナト?それもミナトの世界にある創作物の話?』
『ああ、典型的なロクデナシが登場するパターンだ。そしてシャーロットが絡まれて……』
ミナトの言葉にシャーロットに黒い笑みが浮かぶ。
『この私に俺の女になれとかって絡む?フフ……、これは伝説の水魔法を使えということね!』
『ヤメテ!あの魔法は結構ヤバかったから!』
『ワタシが溶かしましょうカ~?』
くりんっとこちらに可愛らしい笑顔を見せつつそう言ってくるピエールも怖い。
『ピエール!殺しちゃ多分ダメだよ。冒険者達の表情が暗いのはきっとそいつの家がかなり高位の貴族だからだと思うんだ。きっと腕力に訴えたら周囲の冒険者達ごと王都で活動できないようにしてやるぞ、とかって脅しをかけているんだろうね』
そう言って諫めるミナトだが、
『ミナト!行方不明にする方法なら簡単よ!
『ワタシの酸なら何も残りませン~』
もの凄い好戦的な笑みを浮かべる美女と美少女。周囲の冒険者達が震え上がるほどの壮絶な笑みというやつである。
『いや……、おれにも【重力魔法】の
【重力魔法】
攻撃系極大重力魔法。触れた者だけに作用する小型で超高質量かつ超重力の物質を高速で放ちます。触れた者はその物質に飲み込まれ二度と出てくることはできません。生物のみに使用可能。ある程度の質量がある無生物や他の魔法が触れた場合、何ごともなく消滅するので遠距離からの使用には注意が必要です。躰に纏った結界や衣服でも消滅するので必ず直に当てられるよう使用しましょう。
『今のミナトは同族を殺しちゃダメよ?』
『まだギリ人族ですからネ~』
『そうなんだけどね……』
同族を殺すと魂に傷のようなものが発生しそれは魔力に澱みのような違和感となって現れる。シャーロットたちにはそれがとても不快なものであるらしい。だからシャーロットたちはミナトが人族や亜人を殺すことを決してさせなかった。ただこの世界の命はミナトがいた日本とは比べることもできないほどに軽いので、いつかは人族や亜人を殺すことになるかもしれないとシャーロットには言われている。その時の種族がどうなっているのかは定かではないが……。
そうして冒険者ギルドの会議室が紛糾していると……、
「冒険者ギルドというのは我々のような貴族という存在とその身分というものを
ドアの向こうからそんな怒声が聞こえてくる。周囲を確実に見下しているその口調にミナトはこれまでにない不快感を覚えるのだった。
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