第419話 冒険者達の戦闘訓練
『なるほど……、全員が前衛だとは思っていたけど……、バランスはとれているのだろうね……』
心の中でそう呟くミナト。彼の眼前では
一見すると盾を装備していない全員が剣士と思われるパーティなのだが、ホブゴブリンとの戦い方を見るとケルノスが受け流す剣術で前衛に立ち相手のヘイトを集め、残りの三人が攻撃に回るのが基本の立ち回りのようだ。ただ全員が攻撃特化の脳筋のパーティということではなく……、
『王家からの依頼で一緒だった時はダンジョンに出現するオーガをピエールの分裂体が殲滅したし、このダンジョンで会った時はデス・スパイダーを相手に全滅寸前だったため実力をよく分かっていなかったけど戦い方が上手い。まただ……、あのポーションを使う判断や後方に下がっての投擲武器の使用……、全員が剣士だけど……、きっと全員が斥候の技術を身につけている……、そして無茶をしない慎重な戦いを心掛けている……。弓使いや魔導士はいないけど遠距離攻撃は投擲武器である程度はカバーしているのかな……?』
それがミナトの見たB級冒険者パーティ
ミナトはシャーロットと初めて会った時に教えて貰ったことを思い出す。
シャーロットは言っていた……、この世界のステータスは【可能性】、【保有スキル】、【保有魔法】の三種類の項目からなっている。【保有魔法】を持っていることは滅多にない貴重な才能であることは事実だが、他の二つは異なると……。
【可能性】とは三つの数値であり、【攻撃力】、【防御力】、【俊敏性】と表示される。だがシャーロットによるとこの数値はあくまでも可能性でしかないとのことだ。この数値が高い場合、それに関連する行動についての物覚えはよくなるので、一見すると優位に見えるもののこの数値の差は人生にほとんど影響を与えないことが知られているそうだ。昔には攻撃力が十なのに剣聖と呼ばれるような剣士になった者が現れたこともあり、現在では数値が二桁あればあとは努力で何とかなるというのが常識であるらしい。
さらにシャーロットは【保有スキル】についても過信は禁物であると教えてくれた。生まれつき【剣術スキル】を持った者が剣術に秀でるのは間違いないが、努力を怠れば能力を伸ばすことが出来ないのはスキルを持っていても変わらないらしい。かつての剣聖は【剣術スキル】を持っていなかったっていう有名な逸話があるという。スキルを持つということは高い才能や能力を得るということではあるけれど人生を決める決定打にはならないとも教えてくれた。
この世界に日本で読んだラノベ世界のようなジョブというものは存在しない。魔法の習得は才能が無いと難しいようだが、それ以外での自身の足りない要素は努力次第で何とかなる世界らしい。
B級冒険者パーティ
一方、ティーニュとロビンの方はというと……、
「ふむ……。素晴らしい……、端的に言って素晴らしい。己の実力をしっかりと認識し最善の手を尽くすその技能。人族の器でよくここまで練り上げたものよ!」
木剣を肩に担いだロビンが驚嘆するようにそう言う。その前には肩で息をするティーニュの姿があった。
「ハァ、ハァ……、そう言って……、頂けるのは……、あ、ありがたいのですが……、ロ……、ロビンさんの……、守りを抜けませんでした……」
「吾輩の守りの剣を抜くにはまだまだ足りぬよ……。だが吾輩との訓練を続けるのであればお主をもう一段階……、いや人族の器の限界までは引き上げることができるかもしれぬぞ?」
ロビンの言葉にティーニュが驚いた表情になる。
「お主が自身の考える限界まで努力したことは先程の戦闘を見ればよく分かる。吾輩と戦うこの訓練を行えばその限界の壁を超える可能性があると言っておこう!」
「お願いできますか?」
ティーニュが息を整えメイスを構えた。
「ふふ……。その心意気やよし!今度は吾輩も攻撃を加える。己の限界を超えてみよ!」
「……参ります!」
ティーニュが再びロビンに挑む。
『こっちも白熱しているみたいだね……』
そう呟くミナト。どうやら今回の戦闘訓練はなかなかに上手くいっているらしいと思うミナトであった。
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