第414話 ギルドからの依頼

 冒険者ギルドのホールでミナトに声をかけてきた二人の女性。カレンさんだけだと思っていたミナトだが、


「あれ?冒険者ギルドにロビンがいる?」


「吾輩は間違いなくロビンであるぞ?」


 可愛い胸を張って堂々と言ってくるロビン。


「シャーロットたちと一緒じゃなかったの?」


「吾輩が直接あそこの防衛機……、ごほっ、ごほっ、す、すまぬ。何でもないのだが……、も、もちろんシャーロット様からも本日のことは了承を得ておるぞ?」


 ミナトが王都に東にある大森林の最奥に建てているのは新しいおうち、つまり新居ということだ。それなのにもかかわらず、


「いまとても物騒な言葉が聞こえた気もするけど……」


「な、なんのことであろう?吾輩にはよく分からぬが……」


 ジト目でロビンを見据えつつ呟くミナト。その言葉に冷汗を流しつつなんとか否定するロビン。


『ま、聞いても教えてくれないよね。シャーロットも秘密って言っていたし……。ムリに聞き出したり、内緒で見学とかに行ったら……、みんなと大変なこと戦闘とかになったりしそうで怖い……』


 ミナトが使う【闇魔法】である絶対霊体化インビジブルレイスによる隠蔽は完璧である。


【闇魔法】絶対霊体化インビジブルレイス

 全ての音や生命反応を感知不能にする透明化に加えて霊体レイス化を施せる究極の隠蔽魔法。対象は発動者と発動者に触れておりかつ発動者が指定した存在。発動と解除は任意、ただし魔法攻撃の直撃でも解除される。追加効果として【物理攻撃無効】付き。ま、あると便利でしょ…。


 だがステータスの説明文にあるように絶対霊体化インビジブルレイスは魔法の直撃をうけると解除されてしまう。シャーロットであれば周囲に霧状、もしくは粒上に魔力の塊を発生させ、それを魔法の直撃と判定させて絶対霊体化インビジブルレイスの解除などを試みることが可能だろう。


『自分の家が建てられてゆく過程を見るのがこれほど楽しいとは思わなかったって剣客を商売にしていた親子の父親の方が言っていた気がするし、ちょっと見てみたかったけど今回はシャーロットたちにお任せだ』


 改めてそんなことを考えるミナトであった。


「それでロビンはどうしてカレンさんと一緒に冒険者ギルドに?」


 やっと本題に入るミナト。


「はい。ミナトさん達が活躍された南のダンジョンについてです」


 ミナトの問いに笑顔でカレンさんが答える。


「第五階層へと降りる階段付近に王城から派遣された騎士様の常駐が決定しました。既に派遣されている状態です。これで状況が整いましたので今回は試験的という形になりますが、第五階層でロビンさんに冒険者さん達の戦闘訓練をやって頂こうということになりました。つきましては今回の訓練の立会人をミナトさんにお願いしたいとなった次第です」


「立会人?別に大丈夫ですがそういうのって高ランクの冒険者が請け負うものだと……。私の階級で大丈夫でしょうか?」


 そう返してみるミナト。一応、ミナトは最下級のF級冒険者なのだ。


「この王都で活躍する冒険者さんで、ミナトさんの実力に疑いを持つ人なんておりませんから」


 とびっきりのいい笑顔でそう返してくるカレンさん。


「それに今回は王都でも上級とされる方々をお連れ頂く予定になっています」


 そういうカレンさんに促されてギルドの会議室へと移動するミナトとロビン。


「こちらが今回の戦闘訓練に参加される冒険者の皆さんです」


『なるほどね……』


 カレンさんの言葉に心の中でそう呟くミナト。その会議室に集められたのは、


「ミナトさん!よろしく頼むぜ!」


 そう言ってきたのは王都で活躍する四人組のB級冒険者パーティ『鉄の意志アイアン・ウィル』のリーダーであるウィル。他の三人もウィルの背後で手を挙げている。この冬になってから何かと顔を合わせることがあり、ミナトとは顔見知りの冒険者といったところだ。


「宜しくお願いします」


 そう言ってシスターのような装いとフードを目深に被った状態で挨拶をしてくるのはA級冒険者のティーニュ。彼女は女神の二つ名で呼ばれる有名な冒険者で、ルガリア王国の二大公爵家の一つであるミルドガルム公爵ウッドヴィル家や王家からの信頼も厚い冒険者だ。ソロでの活動が中心で対人戦の強さには定評がある。


 鉄の意志アイアン・ウィルの四人とティーニュが今回の戦闘訓練の参加者ということのようだった。


「今回は試験的な運用ですからミナトさんもご存じの上級冒険者の方に参加をお願いすることになりました。『鉄の意志アイアン・ウィル』の皆さんもティーニュさんも今回の戦闘訓練にご興味があったことも理由の一つです。参加頂いた感想などをギルドで共有し冒険者の皆さんへの説明資料に使用させて頂く予定でもありますね」


 カレンさんの説明に頷くミナト。今回の参加者が顔見知りであったことで、


『無用なトラブルはなさそうだ……』


 そう安堵するミナトであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る