第409話 ミナトは北のダンジョンを探索する
「ここが最下層……」
目の前に広がる広大な草原を前にそう呟くミナト。ここはグランヴェスタ共和国の首都ヴェスタニアから北へ徒歩一時間といったところにある通称『北のダンジョン』と呼ばれるダンジョンである。
ミナトは冒険者ギルドで受付嬢の話を聞きいた後、今回の目的であるシルバーラグという魔物についての情報を集めるため資料室へと向かった。北のダンジョンが初心者向けということもあってか、幸いなことに資料として出現する魔物の情報が詳しくまとめられていた。その資料によるとシルバーラグという魔物は北のダンジョンの全階層で見かけることができる。だが遭遇率は下層へ行くほどに上がるとのことだった。
そこで早速行動を開始したミナト。寒さ対策にピエールではない普通の
首都ヴェスタニアから北のダンジョンまでの街道、さらに第一階層から第三階層までは稼ぎにきた多くの冒険者を見かけたのだが、この第四階層では周囲に他の冒険者の気配を感じない。そして階段周辺には魔物がいなかった。
『第四階層だけ冒険者と魔物がいない……?冒険者は受付嬢さんの話にあったキラーオストリッチとかファイアドランカーって魔物を危険と判断しているのかな?資料にも載っていなかったし……。でも魔物がいないのはなんで……?』
そんなことを思うミナト。第一階層から第三階層までは確かに大量の魔物がいた。レグホンの姿形は確かに白い鶏であった。だが体長が一.五メートルほどもあってなかなかに迫力がある。エミュはミナトがオーストラリアで実際に見て触れたエミューとほぼ同じ大きな鳥だった。ただどちらもそこまで強くて厄介な魔物ではないらしく第一階層から第三階層までのあちこちでたくさんの冒険者がレグホンやエミュを取り囲んでいる光景があった。
『どっちの肉にも興味があるから帰りに何匹か斃してもいいかな……』
第四階層の地図を確認しながら心の中でそう呟くミナト。
『ボス部屋は奥にあるけど資料によると踏破は推奨されていないし今回は行かなくていいよね』
そう方針を固めたミナト。
「よしシルバーラグを目指して第四階層を探索だ!」
ここだけは声に出して草原のフィールドに踏み出すミナトであったが……。
「これって……、ダチョウ……?」
呆然と見上げながらそう呟く。草原を歩き始めて数十分、大きな木々が生い茂る一帯があったのでそこへと分け入ったミナト。シルバーラグが
『フォルムはダチョウだけど……、体長が四メートルくらいあるんですけど……、さらにあの筋肉ムキムキで血管が脈打って蒸気まで吹き出している凶悪な脚……、あ、目が合った……』
ギュワァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!
羽を大きく広げて敵意剥き出しで威嚇してくる巨大なダチョウの魔物。
『これがキラーオストリッチ?攻撃方法ってやっぱりその脚から繰り出される蹴りかな?』
そんなことを考えつつ身体強化魔法を発動し魔物の攻撃に備えたところ、突如として魔物から魔力が膨れ上がるのを感じるミナト。
「!?」
それと同時に大きく広げられた羽から多数の羽毛が撃ち出される。飛んでくる羽毛、向かってくる先端は針のように鋭い。
「そっち!?」
ミナトがそう返すのと足元の影から夥しい数の漆黒の鎖が出現すのは同じタイミングである。生み出された漆黒の鎖がうにょうにょとまるで生物のような有機的な動きで向かってくる羽毛を弾いて落とす。
【闇魔法】の
「おっと……」
高速でミナトとの距離を詰めたキラーオストリッチが凄まじい勢いでミナトの顔面を狙いその凶悪な脚を使用した前蹴りを放ってくる。本来、人族や亜人は決してまともに受けてはならないとされている強力な一撃をミナトは難なく漆黒の鎖で受け止める。同時に大量の鎖でキラーオストリッチをグルグル巻きにして、ギリギリと締め上げた。
「
ミナトの呟きと共に拘束されたキラーオストリッチの頭部が漆黒の炎に包まれる。地獄の業火に頭部を焼き尽くされたキラーオストリッチが光の微粒子となって虚空に消え、ミナトが抱えきれない程の大きな肉の塊がドロップされた。
「うーん……。これってどう見ても鶏肉だよね……。ダチョウの肉は淡泊で美味しいって聞いたことがあるけど前の世界で食べたことあったっけ?」
ドロップした巨大な肉の塊を確認してそう呟くミナト。
「えっと……、キラーオストリッチの肉……、ゲットだぜ?」
【収納魔法】の
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