第406話 ミナトは素材を提出する
「こっちがミスリル鉱石でこっちがクリスタルゴーレムの魔石ですね」
無事に素材を手に入れたミナトがグドーバルの工房で涼しい顔で素材を並べる。ソロによる『地のダンジョン』の探索であったためクリスタルゴーレムを見つけるのに手間取ったミナト。そのままダンジョンで夜を明かしてからグランヴェスタ共和国の首都ヴェスタニアへと帰還した。つまり素材の収集にかかった時間はわずか一日……。
そのためなのかグドーバルの表情が先ほどから驚愕の表情のまま固まっている。きっちり数十秒は固まった後、
「ミ、ミナト殿……、これらの素材をたった一日で……?そ、それにこのミスリル鉱石……、これは……、これはこれはこれはこれはこれは……、この品質はもしや……?」
ミスリル鉱石に喰いつきを見せるグドーバル。どうやらミナトがどんな品質のミスリル鉱石を入手してきたのかに思い当たったようで、
「えっと……、人族や亜人の技術でも純度百パーセントの精錬が可能となる最高品質のミスリル鉱石かな……?」
「!?」
再び驚愕の表情で固まるグドーバル。
「グドーバルさん?大丈夫ですか?」
ミナトの言葉も届かないようでさらに数十秒固まってしまった。
「ミナト殿!この鉱石の価値を分かっておるか!?純度百パーセントで精錬されたミスリルは確かに存在する!だが儂の知る限りそれはこの国の国宝として保管されている結晶ただ一つだけなのじゃぞ!?」
復活したグドーバルがそう言ってくる。
「グドーバルさんが精錬したらこの国で二つ目ですね?」
しれっと返すミナト。
『確か家の建設に大量に持って行ったってアースドラゴンさんが言っていたからグラン親方達も驚愕しているんだろうな……』
そんなことを思っていたりする。ちなみにルガリア王国の大森林に建設中であるミナトの家の設計を任されたドワーフの職人であるグラン親方はミスリル結晶については『あんなに純度が高いものにお目にかかったことはない』で済ましていたがオリハルコンとアダマンタイトを目の当りにして呼吸を忘れて気絶していたりする。
「そういうことを言っているわけではないのじゃが……。まあよいわ……。クリスタルゴーレムの魔石もそうじゃが、これ程のミスリル鉱石までもたった一日で入手してしまうとはの……。一体どこでどうやって……、いやそれは冒険者の秘密というやつか……。聞くだけ野暮というものじゃな……」
「そう言って頂けると嬉しいです」
神妙な顔つきで言ってくるグドーバルの言葉に笑顔で返すミナトであった。
「あれ……?そういえばケイヴォンとリーファンの二人は?お使いですか?」
グドーバルが工房内でこんなに大騒ぎしているのに弟子の二人が姿を現わさないことを不思議に思ったミナトが問いかける。
「あの二人は冒険者ギルドじゃよ。ミスリル鉱石とクリスタルゴーレムの魔石以外に必要となる素材に関して昨夜のうちにまとめておいたのでな。足りない素材を手に入れるため冒険者ギルドへの依頼を任せたのじゃ。ギルドに素材の在庫があるのが一番じゃが……、しかしミナト殿がこれほど早く素材を揃えるとは思わなんだ。二人が依頼をしてきたのであれば急ぎの依頼に変更せねばならんの……。まあ一番の問題じゃったミスリル鉱石とクリスタルゴーレムの魔石が手に入ったんじゃ!ミナト殿は安心して待つとよい。」
どうやら素材に関して問題はないらしいと思うミナト。そうして思い出したかのように……、
「あ、それとですね……」
ミナトはカバンの中を探るような動作で【収納魔法】である
「クリスタルゴーレムの魔石は試作に使用してください。本番はこっちを使用してくれると嬉しいです」
そう言って金色に輝く金属のインゴットをテーブルへと置くミナト。
「ミナト殿……、そ、それはもしや……?」
その金属のインゴットを目の当りにして大量の冷汗を流しながらグドーバルが息も絶え絶えといって様子で聞いてくる。
「精錬済みです。最高品質のオリハルコンですね」
「…………」
反応がないことを不思議に思ったミナトが視線をグドーバルへと向けると……、
「呼吸が止まってる!?喝をいれる方法なんて知らないぞ?これはマズいかも……」
立ったまま気絶してるグドーバルの姿がそこにあった。ミナトは回復魔法が使えない。そしてどこかの漫画のように喝を入れる方法なんて知らないミナトである。街において回復魔法の使い手は神殿と呼ばれる場所にいるという。しかしケイヴォンもリーファンも不在では首都ヴェスタニアのどこに神殿があるか分からない。
『プレゼントは秘密にしたかったけどここはミオに来てもらおう……。それがいい、そうしよう……』
決断したミナトが【転移魔法】の
「親方!!大変だ!!」
「一大事です!!」
工房の扉を蹴破る勢いで血相を変えたケイヴォンとリーファンの二人が飛び込んでくるのであった。
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