第389話 ミナトはこの後のことを考える
王都近郊にあるダンジョンの第五階層にあるダンジョン主の部屋。ミナトはそこで遭遇した
「ふぅ……。ステータスの確認も終わった……、あれ……?この後どうするんだっけ?」
不意にそんなことを呟くミナト。
「踏破するつもりでここまで来たけど、ミナトがロビンをテイムしちゃったしね。このダンジョンは主を失った状態ってところかしら?」
そう教えてくれるのはシャーロット。ダンジョンによっては主と呼ばれる魔物がいてそれを斃すと一定期間ダンジョンから魔物と宝箱が消滅する。人々はそれを踏破と呼び冒険者にとっては富と名声を得るチャンスとなっていた。また有名ダンジョンの踏破は高位の冒険者資格を得ることについて極めて有利に働くこともあるらしい。
「それって大丈夫なの?」
「うーん……、ちょっと分からないわね。ダンジョンって色々あって主が分からないダンジョンも多いのよ。だけどテイムで主がいなくなるっていうのは聞いたことがないけどね?」
そう言って片目を瞑ってみせるシャーロット。
『いい……』
シャーロットの見目麗しいとしか言えないその様子を心中でそんな感想に結び付けるミナト。
「うむ。ダンジョンの主になるような魔物は基本的にテイムなどできない」
そう言って力強く頷くデボラ。見事なサイズの胸を張っている姿は文句なく美しい。
「ん。さすが最強の魔王さま!」
ミオがしれっと言ってくる。いつもの無表情だが可愛らしさが強烈だ。
「でも~。このダンジョンはミスリルが採れるということですし~。王国の直轄になるなら主の情報は必要になりませんか~?」
おっとりした口調だが的を射た発言をするのはナタリア。そのダイナマイトなスタイルとふんわりとしたお姉さん的な魅力のギャップが凄い。
「マスターのしたことですからね。ルガリア王やウッドヴィル家の者達にうっかりテイムしたと告げれば誰も文句は言いません」
そう毅然とした態度で断言するのはオリヴィア。こうしているとキリっとした中性的な魅力が実に素敵である。
「ロビンさんはテイムされル前とアトで感じが違うのデスカ~?」
ロビンに問いかけているのはミオよりもさらに年下の美少女形態をとっているピエール。驚くほどに可愛いがミナトの傍らにいると犯罪の香りがしてしまいそうだ。
「ふむ……。吾輩は間違いなくマスターにテイムされておる。だがダンジョンの主を辞めたという感覚もない……。主のみをしていた時はこの部屋からの移動は難しいと感じていたのだがどうやらどこにでも行けるようになった感覚があるが……」
戸惑う様子を見せつつそう言うのは漆黒のドレスを纏ったロビン。美しい容姿、艶やかな黒髪の長髪とスレンダーで色白な肢体が妖艶とも表現できそうな美しさを湛えている。ただその美しい声色とベテラン感のある騎士っぽい口調が合っていない。
「そう言えばロビンってどうやってダンジョンの主になったの?」
素朴な疑問を投げかけるミナト。
「ふむ。随分前になるがこの辺りを通りかかった時に不思議な力に引き寄せられるようにしてこの部屋に辿り着いたのだ。そしてそのままずっとここに居たという感覚だな……」
ロビンが考え込むような仕草と共にそう言ってくる。
「このダンジョンってそんなに前からあったんだ……。やっぱり東方魔聖教会連合の連中が計画のためにダンジョンそのものを隠蔽していたのは間違いなさそうだね」
「ふむ。東方魔聖教会連合のような下衆な者どもがいたことを知っていれば吾輩自ら切って捨てたところだが、生憎とマスターにテイムされる前はこの部屋から出ることは叶わなかったようだ……」
ミナトの言葉にそう答えるロビン。そんな二人の会話を聞いていたシャーロットが、
「ロビンの話だと……、もしかしたら新しくダンジョンができたときに近くの強力な魔物を何らかの力で引き寄せて主にしてしまうのかもしれないわね。ダンジョンには姿を隠して主や他の魔物を管理するさらに上位の存在がいて、それがダンジョンに冒険者を招き入れているって仮説を立てた研究者がいたけど、ちょっと信じてしまいそうになるわ」
「前にもそんな話をしたことがあったね。おれの世界にもそんなラノベがあったよ。確か感情の高ぶりをエネルギーにするから冒険者が死に過ぎないように丁度いい感じにダンジョンを運営する的な……」
シャーロットの言葉にミナトはそう返す。
「ということは……、主はロビンのままで、ロビンはダンジョンを出て他の場所にも自由に行ける状態ってことね?ならこのままで何の問題もないと思うわ。国王と二大公爵家に『ミスリルを少量だけど採掘できるダンジョンでした。ダンジョンの主はきわめて強力な魔物でしたがテイムできました』ってミナトが報告してBarでロビンを新しい従業員として紹介すれば解決よ!きっとこの姿のロビンを見て色々と察してくれるわ。冒険者ギルドの方はカレンさんにお任せね!」
頭痛と胃痛に悩まされるこの国の重鎮たちの姿が頭の中に見事なタッチで描けてしまったミナト。冒険者ギルドの方はそれで問題なさそうだと思えてしまうところが不思議である。
「おれ達はそれで問題ないけど……、大丈夫かな……?」
ミナトはそう呟くが……、
「ふむ。シャーロット様?先ほど仰ったBarとはいかなるもので……?」
ロビンがそう尋ねてきたので、よい機会とばかりにシャーロットがミナトのBarとカクテルについて熱く説明する。
「おお!それは素晴らしい!マスターはスキルではない方法でそのような技術を修めているのですな。吾輩、戦闘の形態では食料を求める必要はないのですが、マスターから授かったこの身体は食料を摂取することが可能なようです。酒はかつての外の世界を巡っていた際に人族や亜人が飲んでいたのを見て羨ましいと感じたことを思い出します。それにカクテルというものは是非とも飲んでみたいです」
笑顔でミナトの両手を取り、可愛らしく飛び跳ねるスレンダーな美女。容姿と口調が全く整合していないが嬉しそうなことは十分に伝わってきた。口調はそのままだが行動はうら若き美女のそれに近くなっているのかもしれない。
「そういえば……」
何かを思い出したかのようにその嬉しそうな動きを止めるロビン。
「この部屋の奥……、ダンジョンの最奥部に小さいですが酒の湧く泉のようなものがありましたぞ?」
即座にその泉を確認することを決断するミナトであった。
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