第377話 改めて戦闘開始を開始する
「もう!なんて格好をさせるの!?私は世界を滅ぼす気なんてなかったわよ?」
生物のように有機的な動きをする漆黒の鎖から解放されたシャーロットが顔を赤らめたままそう言ってくる。
「いやいや……、デボラは相当ヤバい結果になる可能性があったって言っていたけど……?」
「あの時だってきちんと照準を合わせてその範囲だけを滅ぼしたわよ!」
自覚していないのか狙っているのかは分からないが、ぷんすか……、という表現が似合いそうな様子で弁解する美人のエルフ。
この夏、ルガリア王国家の二大公爵家の一つであるウッドヴィル公爵家がとある陰謀に巻き込まれたことがあった。ミナト、シャーロット、デボラの三人は前公爵のモーリアン=ウッドヴィルや現公爵の娘であるミリム=ウッドヴィルとのちょっとした縁から、彼等が領都アクアパレスへ赴く道中の護衛という依頼を受けることになったのである。そしてその道中で大量の魔物による襲撃を受けることになり、そこでシャーロットは東方魔聖教会のローブを纏った男の
その時の魔力を感知したデボラに言わせると世界が崩壊しなかったのは単に運が良かっただけということになるらしい。
「でも今回はアイツと背後にいる百体以上ありそうなゴーレムを対象にしようとしていなかった?さすがに規模が違うかと……」
「私は不可能を可能にする女なの!」
もの凄い意味不明な宣言に思わず遠い目をしてしまうミナト。ナタリアが巨大な大剣を右肩に担いだまま左手で眉間の当たりを押さえて俯いている。
『自分で不可能って言っているし……。でも発動自体は問題なくできそうだった……。世界を滅ぼさないことができるかどうかってことなのかな?』
そんなことを考えるミナト。しかしながら気分を害しているようでもシャーロットの姿はとても美しくまた可愛らしい。
「もうあの魔法のことはいいわ!でもあの男は私が片づける!まだ今のミナトに人族を殺させたくはないの。ミナトとナタリアはゴーレムをお願いね!」
どうやらいつものシャーロットに戻ったらしい美人のエルフがそう役割を決めてきた。シャーロットたちはミナトに人族や亜人を殺させようとしない。シャーロットが言うには、人族、獣人、ドワーフ、エルフといった種族は自らと似た種族を殺し続ける行為を行うと魂が焼かれるらしい。そしてその焦げ付きが魔力に現れるという。確かにシャーロットが元暗殺者だと推察したウッドヴィル家の執事から感じた魔力で確かにミナトは気分の悪さを感じていた。
唯一つ気になったのは、
「シャーロット?今のおれってどういうこと?」
そう聞いてみるミナト。するとシャーロットはさも当然と言わんばかりの表情で、
「だってミナトの種族ってまだギリ人族でしょ?今はまだダメよ」
しれっとそう返してくるシャーロット。
「人族を超えることがあるかもしれないって!?」
「あははっ」
「顔を背けながら乾いた笑いで返さないでもらえるかな!?」
「ほら!ミナト!アイツとゴーレム達が動き始めるわよ!」
ミナトとの会話を強制的に切り上げるかのようにしてシャーロットにそう言われ視線を向けると、
「ふ……、ふ……、ふふふ……、何も起こらない……、そうですよね?そうに決まっています!あなたがあの魔女であるわけがない!つまり鉄塊の女王さえ斃してしまえば王都は我らのもの!王都の冒険者がこのダンジョンに興味を持っているこの時、敵対するのは魔物に不得手な騎士団!私達の諜報は完璧です!」
『いや……、鉄塊の女王って一人のアースドラゴンのことを指しているよね……?アースドラゴンの里に一杯いるからいつでも何人でも王都とかここに喚んでこれるし……。それに今の王都にはミオだっている……。情報がガバガバだよね?』
心の中でそう突っ込んでみるミナト。そんなことを指摘することはなく、
「シャーロット!アイツを宜しく!ナタリア!おれは右側から行くことにする!」
そう宣言してミナトは身体強化魔法をかけつつ走り出す。
「任せておきなさい!」
そう返して改めて好戦的な笑顔でローブの男を見据える美人のエルフ。
「では
ナタリアもその場から一瞬でエプロンドレスと鉄塊……、じゃなくて大剣がその姿を消す。アースドラゴンの超高速移動だ。
そうして戦闘が開始されるのであった。
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