第376話 美人エルフが激おこです
ドーム状の第五階層にシャーロットの魔力が吹き荒れる。その魔力の波動に当てられ驚愕の表情を浮かべるのは真っ黒い生地に金色の稲妻のような模様が入ったローブを纏った男。
「バカな……、この魔力は……、ハァ、ハァ……」
魔法に関する才能が無い者であれば、この状況では直ちに意識を失っている筈である。息を荒げながらもなんとか意識を保っているこの男は人族としてはかなりの魔法の使い手かもしれない、などと自身も動けない状況下で考えるミナト。
「魔聖教会のローブを纏っている時点で人族としての道を踏み外していることは分かっている……。そこのゴーレム!アニムス・ギアに自分を喰わせたあの東方魔導連のバカがやっていたことの廉価版ね?アニムス・ギアに魂を操作した人族や亜人を喰わせ金属製のゴーレムへと変異させる。アニムス・ギアを生み出すだけでも相当な犠牲が必要なのに、一体どれだけの人族や亜人を自分たちの道具にするつもりなのよ……。お前達がどうして東方魔導連や魔聖教会の衣装を纏っているかは知らない。だが二千年前から東方魔聖教会連合だけは滅ぼすとこの私が決めている!そしてお前はあの名前で私を呼んだ!覚悟しなさい!」
シャーロットがそう言って集中するためか目を閉じる。
『どうやら意外と冷静みたい……』
シャーロットがどんな行動に移すのか心配していたミナト。
『シャーロットがあの男を斃して……、ゴーレムは手分けして斃せば問題ない……?』
そんなことを考えるミナトは妙に冷静である。この世界では命は前の世界ほど重くはない。それと眼前の男は亜人を確実に大量虐殺している異常者だ。だがたとえその二つを踏まえても、前の世界で
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
そしてシャーロットから噴き出す魔力が微量の熱を帯び始める。
『火魔法?』
ミナトは動けないままに驚いた様子を見せる。シャーロットは闇魔法こそ使えないがそれ以外の魔法レベルは全て八。当然、火魔法も使えるが、延焼といった周囲への影響からあまり使っていない。いまここで男とゴーレムを焼き尽くそうとしているのか……。
そしてシャーロットは右の
『これって……、デボラが言っていた
「私はお前達を許さない……。あの時にそう決めたのよ……」
凄絶な笑みとその気迫のこもった言葉に男の表情が恐怖に染められる。シャーロットが魔法を唱えようとしたその瞬間、
「
そこに響いたのはやっとのことで絞り出したミナトの声。出現した漆黒の鎖が生き物のような有機的な動きで美人のエルフを拘束する。王都の東にある大森林で最初にこの魔法を唱えたとき、夥しい鎖を発生させ、それに絡めとられたシャーロットがあられもない姿になったあの日の再現だ。
『あの恰好っておれの深層意識とか……?違う!魔法の仕様だ!仕様!』
心の中ではそんなことを考えつつ必死に首を左右に振るが、結果は上手くいったらしい。ミナトの目論見通り第五階層に渦巻いていたシャーロットの膨大な魔力も発動寸前だった
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
「ふう……。助かった……」
身体が動かせることを確認してそう呟くミナト。傍らではまだ少し顔色の悪いナタリアが立ち上がって鉄塊……、じゃなくて大剣を担ぎ直している。消滅を免れたらしい男やゴーレムは状況が理解できていないのか固まっていた。
「ミナト……、ちょっとこれ……、恥ずかしいから早く下ろして!」
見上げると触手に捉えられたかのようなシャーロットがじたばたと手足を動かしつつ顔を赤らめて言ってくる。どうやらいつものシャーロットに戻ってくれたらしい。その様子に笑顔になったミナトは
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