第378話 伝説の水魔法
「薙ぎ払え!
駆け続けるミナトがそう唱えると足元の影から漆黒の鎖が無数に出現する。そうして現れた漆黒の鎖は金属製のゴーレムを槌のごとく打ち据えることで破砕し、刃の如く斬りつけることで両断し、ヘビの如く締め上げては捻じり切る。瞬く間に破壊されたゴーレムの山ができあがる。
『アニムス・ギアに飲み込まれてゴーレム化した真っ赤なローブのアイツは強度をオリハルコン以上って言ってたけどこれくらいなら問題ないかな?』
それが絶賛ゴーレムを薙ぎ払い中のミナトが持つ正直な感想だ。このゴーレムは王都へ進攻するために対ナタリア……、というか対アースドラゴンに特化して造られたものらしい。【闇魔法】の
『二千年間もの企みが無意味だったと理解させてやる!』
理由はこれであった。
『それにしてもどうやってこの数を地上に持って行くのかな……?』
ミナトは薙ぎ払いつつもそんなことを考える。どこかに転移の魔道具などがあるかもしれないが今はゴーレムの殲滅に全力を注ぐミナトであった。
「参ります~♪斬~♪斬~♪斬~♪」
ミナト以上の高速移動を続けながらそんなおっとりとした口調とは完全に一致しない動きでナタリアが大きすぎる鉄塊……、ではない大剣を振るう。一振りごとに三体以上のゴーレムがその姿形を留めない程に爆散しては消えてゆく。高速移動をしながら大きすぎる大剣を振っているにも拘らずナタリアの剣速は圧倒的だ。凄まじい速さで金属製のゴーレムが粉微塵に吹き飛ばされる。
オリハルコン以上の硬度と言った話はナタリアの前では全く意味を成していない。ナタリアの大剣は鋼鉄製でゴーレムの装甲はオリハルコン以上……。一般的にみればナタリアの大剣でゴーレムの装甲を切り裂くことは不可能とされる筈なのだが、
「
ナタリアがそう言って微笑むころには半分以上のゴーレムがミナトとナタリアによって殲滅されていた。
「バカな!!バカな!バカな!バカな!そんなことはあり得ない……。あり得ないのですよ!我等は鉄塊の女王を超えるためにあのゴーレムを創ったのです!なぜゴーレムの装甲が鉄塊の女王の大剣を受け止められないのですか!?そしてあの鎖は一体……?ありえない……、そんな……、そんなことはありえなあぁぁぁぁぁぁい!」
ミナトとナタリアの無双に驚愕して絶叫する魔聖教会のローブを纏った男。そんな男の顔を目掛けて、
バシャッ!
直径三センチほどの水塊がぶつけられる。
「…………なんですか……、なんのつもりでしょう……?…………これが……、こんなものが……、効くとでも思っているのですか!?」
ふざけた攻撃とでも判断したのだろう。何のダメージもなかったと判断した男は怒りに震えながらそう返す。視線の先にいるのは美人のエルフ……、シャーロットだ。
「さっきは使う魔法を間違ったわ。それは認める。だからお前にこの魔法を使うことにした。ありがたく思いなさい!私がこの魔法を使うのは二千年前……、お前のような東方魔聖教会連合の連中を滅ぼしたとき以来よ!」
沈んだ眼で男を見据えつつそう答えるシャーロット。その目には何の感情も見られない。
「こんな
そう言って右手をシャーロットへ向けようとした男だが、
「あが……、な、なんですか……、あぎ……、あげ……、げげげ……」
突然硬直して苦しみ出す。手の先から水分が失われたかのように皺が現れそれが徐々に全身へと広がってゆく。
「殺戮系とも称される対生物用に開発された伝説の水魔法……、名前は
シャーロットがそう言っている間にも男は見えない何らかの力によってぎゅっと引き絞られるかのような状態になる。そしてその状態はますます進行しその引き絞られた全身は古木の肌のような色と質感へと変貌した。さらには音を立てながらその五体は引き千切れ砂となって虚空に散る。そこにはローブなどの身につけていたものだけが残された。
「ふう……」
シャーロットが息を吐く。後はミナトとナタリアがゴーレムを殲滅するのみ。東方魔導連と魔聖教会、その二つのローブを纏っていた男達の計画はミナトたちによって完全に潰えた瞬間であった。
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