第374話 第五階層で待つもの
ミナト+
この二つの階層は第二階層と基本的には同じ造りで大きなホールが細い通路で繋がれており、ホールごとに魔物がいて戦闘になるといったものだ。魔物もデス・スパイダーではなくゴブリンやコボルトといった弱い魔物ばかりである。やはり第二階層はあの真っ赤なローブの男によって何らかの手が加えられたいたのだろうとミナトは推測していた。
しかし第二階層から第四階層までが同じ構造となると、今度は第一階層が岩場であることに違和感を覚えてしまう。さらに第一階層では鉄鉱石が採れるとのことだったが、第二階層から下では鉱石がとれそうなポイントは見つかっていない。
『鉱石が採れるダンジョンってことだったけど、今となっては第一階層の情報も怪しい。それにしても誰が調査をしたんだろうか……』
冒険者ギルドに向かったミオはカレンさんと共にこのダンジョンを最初に調査した冒険者ギルドの職員を捕まえることができたのかも少し気になるミナトであった。
「ミナト!行きましょう!」
「いつでも大丈夫です~」
シャーロットとナタリアが言ってくる。そんな美女二人に笑顔で頷き、
「よーし!第五階層へしゅっぱーつ!」
「「おー!!」」
そうして一行がミナトを先頭に第五階層の階段を下りると、
「あれ?なんか雰囲気が違くない?」
ミナトの口からそんな台詞が零れ落ちる。第二階層から第四階層まで階段を下りたところは細い通路に通じていた。でもここは最初から広いドーム状の空間らしい。幻想的に光を放つ天井は第一階層を思わせた。
「ここが最終階層かしら?」
「あらあら~?マスター!シャーロット様!ここでは鉱石が採れそうですよ~?」
降りてきた階段の背後にあるドームの壁面に触れたナタリアがゆったりとした口調でそう言ってくる。そして、
「え~い!」
そのおっとりとした口調からは想像ができない程の拳速でオリハルコン製のガントレットを纏った拳でその壁面を殴りつける。ミナトは魔物との戦闘を想定して自身に全力とはいかないまでもある程度の身体強化魔法をダンジョン内では常にかけている。そのため動体視力もそれなりに向上している筈なのだがミナトはナタリアの拳が全く捉えらなかった。
同時に爆音が轟き、壁が粉砕される。
「ダンジョンの壁って壊せるんだっけ?」
「『地のダンジョン』で採掘したでしょ?基本的にダンジョンの壁や床は壊せないってことになっているけど採掘ができるところでは普通の人族や亜人でも破壊は可能ね。でもミナトなら関係ないじゃない?」
「え?」
「ミナトや私たちならその気になればダンジョンの床をぶち破ることも不可能ではないわ。面倒だからやらないだけでね?」
そう答えて片目を瞑ってみせる美人のエルフ。
「ソ、ソウデシタネ……」
思わぬシャーロットの言葉に固まりつつ返すミナト。言われてみれば【闇魔法】の
『何かあったら怖いからやらないけどね……』
ミナトがそんなことを考えていると、
「やはりこれはミスリルが含まれていますね~。純度はそこそこですが~、ダンジョンの第五階層で少量でもミスリルが採れるということは王都にとってはよいことかと~」
自らの拳で破壊した岩盤を確認し笑顔でそう教えてくれるナタリア。彼女たちアースドラゴンは『地のダンジョン』の最下層で暮らし、鉱石などを用いて魔道具を製作することができる。こういった鉱物の鑑定もできるようだ。世界最難関とされる『地のダンジョン』はよく知られてはいるが、ミスリルを採掘できる鉱山はこの大陸には数えるほどしか存在していない。そして魔力をよく通すミスリルは魔道具の製作において重要な素材である。そのためミスリルは高値で取引されていた。
「こんな王都の近くで量が少なくてもミスリルが採れるって……、王都の周辺にあるダンジョンじゃ鉱物があまり採れないってカレンさんも言っていたから、これはいい報告ができるかな?」
ミナトが笑顔でそう言った瞬間、
「「「!!」」」
ミナト、シャーロット、ナタリアの三人が同時に振り返りドーム状の空間の奥へと視線を送る。
『明らかに気配というか魔力を感じた……。けどなんだこの感じ……』
『そうね……、誰か……、会ってもよいことが起こらない何かがこの奥にいるわ』
『マスタ~、
『マスターの護りは万全でス~』
念話で状況を確認し、音もなく【収納魔法】の
ミナトを先頭に魔力を感じた方へと歩みを進める。広いドーム状だと思っていた第五階層だが奥へ行くと大きく右へと曲がる形状をしていた。その右へと曲がった奥から気配を感じたらしい。さらに歩みを進めると……、
「やっと満足しましたか?あなたがもう少しよい素材が欲しいというから待っていましたが……、そろそろ王都へ向かう時間がですよ?」
誰と何を勘違いしているのかそんな台詞が聞こえてくる。そこには真っ黒い生地に金色の稲妻のような模様が入ったローブを纏った男。そしてその背後には無数のゴーレムがいる。
「もういい加減にしてほしいわね……」
そんなシャーロットの呟きがミナトの耳に届くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます