第373話 どこまでが本当なのかは分からないが……

 シャーロットの話は続く。


「魔聖教会も最初は教会って名称そのものにあんまり意味は無くて魔法を得意とする者達が集まった……、グランヴェスタ共和国の古都グレートピットにあった冒険者のクランみたいなものだったって聞いたわ」


「それがどうしてめっちゃヤバい宗教団体に?」


「よく分かっていないのだけど、後に宗主って呼ばれる人物が現れて組織が変わったと伝わっているわね」


 ミナトの問いにシャーロットが答える。


わたくしもその話なら聞いたことがあります。どこまで本当かは分かりませんが人族の身でありながら火の魔法レベルがとても高かったと……。ただその力は魔王から授かったものということでその人物は魔王に心酔することになったとか……」


「力を授ける?そんなことが本当に可能なの!?」


 ミナトはそう声を上げる。


「少なくとも私は聞いたことがないし、私もそんなことはできないわね」


 シャーロットがそう断言する。


「この私にできなかったことをあの魔王ができたとはとても思えない……。だから私は突然変異的に誕生した魔法レベルの高い人族を魔王が何らかの手口で誘惑したって考えているわ。そんな人族に率いられ、大陸中が不安に駆られる中、力に溺れ魔王の望む混沌と殺戮の世界こそ己が生きるべき世界って考えた者達が集まったのが魔聖教会よ」


 そう言うシャーロットの説明をナタリアが引き継ぐ。


「そして魔聖教会は人族や亜人を材料として禁忌でありかつ強力な魔道具を作り出すことができる東方魔導連の力に注目しました。東方魔導連の力を取り込むためその行いを正当化し協調路線を取り、最終的には東方魔聖教会連合という組織になったと言われていますわ~」


 シャーロットとナタリアの説明を頷きながら聞いていたミナト。そして一つ気になった。


「二人の説明って伝聞のところが多いけど、その二つの組織ができた頃ってシャーロットとか世界の属性を司るドラゴンさんたちって何をしていたの?」


 ミナトの問いかけにナタリアが『うふふ……』と笑いつつ、グラスに入ったトマトジュースを手に視線を逸らす。どうやら触れられたくない話らしい。ミナトはシャーロットへと視線を移す。


「あの頃って……、私やドラゴンたちにはちょっと色々とあってね……。あまりこの世界の変化に注目できなかったのよ……」


 シャーロットがごにょごにょと言い訳じみた返しをする。


「いろいろと?」


「……そう……、いろいろ……、あったのよ……」


 最後は消え入りそうな声だ。顔も真っ赤である。どうやら聞いてほしくないようだ。


「分かった。その辺りはいつか聞かせてね?」


 そう言ってみると可愛らしく頷いて見せるシャーロット。その抜群の美しさと可愛らしさに完敗のミナトはそれ以上の追及はしないことにした。


 お話の時間は一旦ここで終了とすることにして、


「ミナト!このダンジョンを踏破するわよ?」


わたくしもお供します~」


 先ほどの可愛らしい赤面はどこへやらシャーロットがダンジョン攻略へと気合を入れ、ナタリアもヤル気のようオリハルコン製のガントレットを装備した拳を打ち鳴らす。


『ワタシもがんばりまス~』


 再び外套マントへとその姿を変えミナトに纏われているピエールも気合が入っているようだ。


「よし!行きますか!」


 ミナトを先頭にして一行は第三階層へと降りるのであった。

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