第361話 お約束の展開が待っているかもしれないが……
「来ちゃった……」
そう呟くミナトの視線の先では何人もの冒険者が列をなしている。
時刻は正午の少し前、雲一つない冬の青空に太陽が輝いている銀世界に本日解禁となった新たに発生したダンジョンの入り口があった。好奇心に駆られたミナトはとりあえずダンジョンの入り口までやってきたのである。
ピエールがいないため今日の装備は冬用に
解禁日で冒険者が殺到するとこを見越してなのか冒険者ギルドの職員が潜るのを制限しているらしい。特にトラブルもなく数人ずつ、もしくはパーティ単位で間隔をあけながらダンジョンに潜っている。
『さてと……、勢いでここまで来たけど、どうしようか……。
そんなことを考えつつ冒険者達の列に並ぼうとして、
『そういえばソロでダンジョンに入ったことってなかった……、危ないことをするなってシャーロットたちから叱られる……?』
ふと転生前に日本で読んだラノベのハーレム物で主人公がヒロインたちに囲まれながら正座するシーンが頭を
冒険者達の行列は滞りなく進みあっという間にミナトの番になった。
「新しいダンジョンです。情報は少ないのでお気を付けください」
そんな冒険者ギルド職員の声を背にダンジョンに潜ってみると……、
「おお!寒くないし明るい……」
鉱物系のダンジョンと聞いて世界最難関ダンジョンの一つである『地のダンジョン』を想像していたミナト。
『地のダンジョン』の第一階層は岩場によって構成される幻想的に光る天井があるドーム状の広大なフィールドだったが、この新しいダンジョンは普通にゴツゴツとした岩場が広がっていた。気温は冬の装備で涼しいと感じる程度、そして空間が明るいのは天井が発光しているためでよく見ると光る苔のようなものが付着している。
そして周囲にはたくさんの冒険者。どうやら駆け出しの冒険者らしい。入り口付近で鉱石を探すのだろうか……。
「えっと……、なになに?第一階層は岩場の広がるフィールドで……、あちこちにある岩山では鉄鉱石が確認されている……、そして魔物は第二階層へと降りる階段付近にストーンゴーレムを複数確認するが動きは鈍くそれほどの脅威はない……、か……」
冒険者ギルドでもらってきた資料を読むミナト。恐らく周囲にいる冒険者も読んでいる筈だ。
『ちょっとここは冒険者が多すぎる。第二層まで行ってみるとしますか……』
心の中でそんなことを呟くミナト。資料によると第一階層はそこまで広くはないらしい。
歩みを進めるがそれにしても冒険者が多い。どこを見渡しても視界のあちこちに冒険者達を捉えることができるほどだ。
『こんなんじゃ採取も大変だろうね……』
最高品質の鉱物なら『地のダンジョン』の最下層でいくらでも入手可能なミナトは鉱物の採取に興味はない。ただ、ここが新しいダンジョンということで何かこのダンジョン特有の珍しい物などが見つかったら面白いだろうとは思っている。
「あ、これが階段?」
思わずそんな言葉が口から洩れる。比較的ゆっくりと移動していたのだが簡単に階段が見つかった。躊躇なく第二階層へと階段を下りるミナト。
『えっと……、第二階層はいくつかの小さめなホールが細い通路で繋がっている階層です……。ホール内ではストーンゴーレム、ゴブリン、コボルト、オークを確認しました。調査時にはこれ以上の危険度を持つ魔物は確認できませんでしたが他の魔物がいるかもしれないので注意して下さい……、か……。そして……、第三階層への階段は最奥のホールにありましたがその先は自己責任でお願いします……、ね。冒険者はやっぱり危険な職業か……』
階段を下りながらギルドがまとめた資料を読みながらそんなことを考える。そうして階段を降りきったところは資料の通りに細い道が続いているが曲がりくねっているのか先がよく見えない。そして石の壁に浮き出た模様が何故か意図的に描かれているような気がして、通路というよりも回廊といった雰囲気を感じる。
「とりあえず最初のホールまで行ってみようか……、今日のところはそこまでってことにして、シャーロットたちを誘ってまた今度……」
そう呟きながら曲がりくねった回廊を歩いていると石造りの扉に出くわした。これが最初のホールへの入り口らしい。ミナトが扉に手をかけたその瞬間、勢いよく扉が開かれそれと同時に、
「え?」
ミナトは凄まじい力で扉の奥へと引きずり込まれるのであった。
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