第359話 実に異世界ファンタジーな事象
今日は無の日、Barはお休みである。昨晩からずっと降っていた雪はすっかり止み、朝の太陽の輝きと共に見事なまでの冬の青空が広がっている。こういう日の朝は随分と冷え込むものだが、そんな気温は関係ないとばかりに朝の王都にはいつもの活気が満ち溢れ始めていた。
「プレゼントか……、プレゼント……、プレゼントね……」
そんな王都の表通りをぶつぶつと呟きながら歩いている男性が一人……。ミナトである。随分と寒い朝だったので、厚手の
『冬祭りまであと五日だっけ……?食前酒として皆にカクテルは造るし、ちょっと頑張った料理も作る……。料理に合わせるワインはブルードラゴンの里から貰ってくればいいとして……、問題はプレゼントだよな。できればちょっと特別な贈り物をしたいけど……』
指輪も考えたが……、この世界ではそういった習慣はないらしい。それにシャーロットによるとこの世界の属性を司るドラゴンはあと三種いるようで、シャーロットはその全てをミナトに会わせたいらしい。その結果どうなるかは大体分かっていて……、
『既にハーレム展開を受け入れる覚悟はしてある……。指輪は全員が揃ってから……、って揃うんだよな……?上限が無いなんて展開は……』
浮かんできたあまりよろしくない今後の展開を頭を振って抹消する。傍から見るとちょっと不審人物だ。そうやって歩きながらいろいろと考えてはみるのだが、
「ダメだ……。いいものが思いつかない……。こんなときは気分転換だよね。冒険者ギルドにでも行って何か依頼を探してみようか……」
いい加減煮詰まってきたミナトは考えることを一旦放棄し、冒険者ギルドへ足を向けるのであった。
「……混んでる……?」
冒険者ギルドに到着したミナトの口から出た言葉がこれである。午前中とはいえ既に太陽はだいぶ高い。通常、この時間帯なら冒険者達は既に依頼を選び終わり依頼達成のため各所へ散って冒険者ギルドは閑散としている筈だが何故かホールが冒険者で溢れていた。
ホールにいる大勢の冒険者を横目にミナトは依頼が貼ってある掲示板のところへ行く。普段なら既に大半は剝がされている筈なのだが依頼が豊富に残っている。
『こんなにいろいろ依頼を見るのは初めてかも……、これは狩猟依頼か……、食堂からの依頼、大森林で角雪ウサギを五匹……、美味しいのかな?他にも狩猟依頼がいっぱいだ……。あとは……?運河の舟に乗り魔物からの護衛……、これは寒そう……。過酷そうだけどこれもたくさんある。あとは王都周辺にあるダンジョンでの採取依頼か……。全体的に食料となる狩猟依頼と運河とかの護衛依頼が多いね。雪で陸路が難しいって話だから運河が重要ってことか……』
食料となる魔物の狩猟依頼が多くある。これなら特に依頼を受けずに大森林で狩りをしても普段以上の金額で引き取って貰えそうだ。そんなことをミナトが考えていると、
「ミナトさんは潜らないのですか?」
背後からよく知った声が聞こえてきた。
『この前もこんな感じじゃなかったかな?』
そう思いつつミナトが振り返るとそこには受付嬢をしているカレンさんが立っていた。
「カレンさん。おはようございます」
とりあえず挨拶をしてみるミナト。
「はい。おはようございます。ミナトさんのお姿が見えたのでお声をかけたのですが……、掲示板を見ておられたのですか?」
ギルドで依頼の掲示板を見る……、冒険者にとって至極当然の行為をしているミナトに不思議なものを見るような視線を送ってくるカレンさん。
「え、ええ……。そうですけど……?」
カレンさんの視線の意味が分からず戸惑うミナト。
「あ……、もしかしてご存じないのですか?」
少し驚いた様子を見せるカレンさん。
「な、何のことでしょう?」
さらに戸惑うミナトである。
「えっとですね……、王都の南に新しいダンジョンが発生したのです。現在はギルドによる調査中でして今日にでも潜ることができるようになる予定で、ホールにいる冒険者の皆さんはそれを待っているのですよ」
カレンさんからの完全に予想外な情報、ミナトは新しいダンジョンの発生という実に異世界ファンタジーな事象に俄然興味が湧くのであった。
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