第337話 冒険者ギルドの会議室で再会する
シャーロットたちに今回はピエールと二人で護衛依頼を受けることの許可をもらった翌日、冒険者ギルドを訪れたミナトとピエールは受付嬢のカレンさんに依頼を受け『王家の墓への祈り』における護衛の一人として参加することを伝えると、再度、冒険者ギルドの二階へと案内された。
「ミナト様!この度の件、感謝の言葉もございません」
上級冒険者が打ち合わせのために使用する会議室の一つでその言葉と共にミナトとピエールを待っていたのは一人の女性。このルガリア王国に存在する二大公爵家の一つであるウッドヴィル公爵家。そのウッドヴィル家現当主の長女であるミリム=ウッドヴィルである。
ミリムは公爵家の現当主の長女であるが、継承権を弟である長男に譲る形で放棄し魔物の研究者をしている変わり者だ。しかし上流貴族の間では極めて明晰な頭脳の持ち主ということが知られており、ウッドヴィル公爵家を支える知恵者として一目置かれる存在でもあった。
『公爵家は王家の親戚筋……。彼女が動くってことは王家に厄介ごとでもあるのかな……』
そんなことを考えつつ、ミナトは無難に挨拶を交わした。
「あの……、ミナト様……、そちらの方は……?」
そう呟くミリムの視線はミナトの肩の上でふよふよと揺れる青い球体の魔物に注がれている。
「この子はピエール。私の従魔ですよ。今回の護衛依頼は私とこのピエールで対応させて頂こうと思っています」
今日も絶賛普通のスライムに擬態中のピエールを紹介するミナト。
『よろしク~』
ふよんと揺れつつミリムには聞こえない念話で挨拶をするピエール。ミリムがミナトへ敵意を持っていないことを知っているのか友好的な感情が念話に乗っているのを感じるミナト。どうやらピエールはミリムのことを敵ではないと認識したようだ。
「従魔ですか……、ミナト様は多才なのですね……、ってそうじゃありません。改めまして護衛依頼を受けて頂き本当にありがとうございます」
「えっと……、どうしておれ達が依頼を受けたことを?」
「依頼を受けて頂けた場合、この会議室への案内をカレンさんにお願いしていましたので……」
「なるほど……、それでミリムさんは何故ギルドに?」
「今回の護衛依頼について説明をさせて頂きたく思い伺わせて頂きました」
ミナトの問いにそう答えるミリム。どうやら詳しい話を聞かせてくれるらしい。Barの閉店後にウッドヴィル家の者が訪ねてくる展開やミナトが呼び出されてウッドヴィル公爵邸へ赴く展開を予測していたのだが、手間が省けたと思うミナト。
「盗聴防止の魔道具を起動します。私は退席させて頂きますね」
そう言い残してカレンさんが会議室を後にする。残ったのはミナトとミリム、そして机の上に移動してふるふると揺れているピエールのみ。
「ミナト様には今回の事情を全てお話しさせて頂きます。他言無用でお願いしますね」
「私のパーティーメンバーとは共有しますが、それ以外の者には絶対に漏らさないことは誓えますね。契約魔法を使っても構いませんよ?」
「いえ……、それには及びません。ミナト様が確約して頂けることで十分でございます」
そう言って軽く頭を下げたミリムは真っすぐミナトの方へと向き直る。
「今回、『王家の墓への祈り』という儀式を復活させたのは王家の判断です。目的は王家とそれに連なる血族……、私達のような公爵家もそれに含まれるのですが、その権威を高めるためです」
『貴族間の暗闘ってことかな……?』
ミリムの言葉を聞いてふいにそんな言葉が思い浮かぶ。ここルガリア王国では善政がしかれ国は富み、民衆も豊かな暮らしができている。ここ十年以上は周囲に戦火の火種などもなく安定して発展している国だが、貴族の暗闘や権力争い、王位を巡るゴタゴタなどは普通にあるものらしい。
『さてさて……、今回はどんな冒険が待ち受けているのか……』
そんなことを考えながらミリムの説明を聞くミナトであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます