第324話 アースドラゴンの名
「はあ……、エンシェントスライムが
溜め息交じりでシャーロットがそう零す。
「でもこの
「ミナトが普段使っているマントと比較したら何もかもが桁違いね」
シャーロットがそう言うようにこういった外套風ではないがミナトもマントは幾度か使っている。中二と言われてしまいそうだが、日焼け止めのないこの世界では日光を遮ることができるマントやローブ、それに付随するフードなどは長距離を移動する冒険者に愛用されているのだ。
「冒険者に黒い
嬉しそうにそう宣言するミナト。本当に気に入ったらしい。これができるならドラゴンを探す物語に登場するターバンと羊飼い風のファッションも……、という考えが頭を
『物理攻撃と魔法攻撃がマスターに届くことはありませン。不意打ちもワタシの酸弾で撃墜しまス』
そんな念話が伝わってくる。とても頼もしい……、とてもとても頼もしい装備である……、のだが……。前半は問題ないが後半の内容に不安感を覚えるミナト。エンシェントスライムの酸弾はただの酸ではなく魔力的な結界も貫通できる非常に強力なものだと聞いた。それがピエールという名を得てさらに強化されている可能性がある……。ミナトは突然襲い掛かって来た盗賊のような輩がオートマチックにグロイ最期を迎える絵を想像して顔を引き
「あ……、い、いや、ピエール、さ、酸弾はおれの指示がない限り使わなくていいかな?」
グロイ映像の想像に冷や汗を流しながらそう言ってみるミナト。
『わかりましタ。マスターを守ることを優先しまス』
テイムの効果なのかとても素直にミナトの言うことを聞くピエール。
「みんな見た?エンシェントスライムがギリギリと判定されているけど人族の言うことを聞いているわよ……」
「うむ。マスターが規格外ということはよく分かっていたつもりだったがまだ我の認識が甘かったと言うほかあるまい……」
「ん。マスターは最高……、規格外の真なる魔王さま……」
「これは夢だと説明された方がまだ説得力がある程の光景ですからね……」
美女たちが何やらこそこそと話しているがミナトの耳までは届いていないらしい。
ふよん。
ピエールが再び虹色に輝くスライムの形にもどる。
『皆さま以外の方とご一緒するときは
そしてさらに美少女の容姿へとその姿を変えた。
「普段はこっちかスライムの形でいますネ」
そう言ったピエールの前にシャーロットたちが立つ。
「きちんと私たちから挨拶をしないといけないわね。私はシャーロット。よろしくお願いするわ!」
「我はデボラ。共にマスターと歩んでいけることを光栄に思う。よろしく頼む」
「ボクはミオ。同じマスターの眷属として宜しくね?」
「私はオリヴィアです。宜しくお願いします」
美女たちの挨拶にペコリと頭を下げるピエール。
「改めましてピエールでス。よろしくおねがいしまス」
また一人新たなメンバーがミナトのパーティに加わった瞬間である。ミナトの脳内にはドラゴンを探すゲームの新しいメンバーが入った時のサウンドが響いていた。
「あの~、ピエールちゃんの次に
そんなピエールを背後から抱きしめつつおっとりとした声でアースドラゴンの長が言ってくる。彼女も周囲でミナトのカクテルに続いてさらなるウイスキーを楽しんでいる他のアースドラゴンたちも既にピエールのことは怖がっていないらしい。
「どうやらマスターにテイムされた効果が広がってきたのだと思います~。恐怖感は既に無くて、仲間意識と可愛らしさしか感じません~」
そう言ってアースドラゴンの長がピエールの頭を撫でる。背後から抱きしめられつつされるがまま撫でられているピエールからはまんざらではない感情が念話を通して伝わってくる。あまり表情は変わらないが嬉しいとは思っているようだ。白いワンピース一枚の美少女を背後から抱きしめながら撫でるエプロンドレスを纏ったデボラ以上にダイナマイトなボディを誇るほんわか笑顔の美女。それを見ながら談笑しているシャーロット、デボラ、ミオ、オリヴィアという超絶な美人たち。なんだか破壊力が凄い光景である。
そんな光景を目の栄養として楽しみつつミナトはアースドラゴンの名前を考えることにする。
『地のダンジョンでアースドラゴンたちは小麦や大麦を造り、その上でウイスキーを造っている……。豊穣の女神の名って……、デメテルとかイシュタルとか……。でも神様の名前ってちょっと仰々しいかな……。アースドラゴンさんは長身でほんわか系の美女で……、ヨーロッパ風の名前が似合うかな……、ヨーロッパ風の名前、名前、名前、そうそう女性名ね。女性名、女性名、女性名、女性名……』
そうしてミナトは一つの答えを絞り出した。
「ナタリアって名前はどうかな?」
そう提案した瞬間、アースドラゴンの長の体が光り輝くのであった。
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