第274話 同行者追加一名
ここは『地のダンジョン』の第四層、レイドにおける第二の休息ポイントとされた場所である。第一の休息ポイントでは一人の脱落者も出すことがなかったのだが、ここでは二十名が本隊からの離脱を申し出ることとなった。ミナトの指示でデボラとミオもその中には含まれている。
離脱した者達は第四層から地上を目指し移動を開始することになる。その帰還の最中に『大穴の
そうして本隊である『大穴の
『何事もなければいいのだけど……』
移動しながらそう念話でこぼすのはミナト。
『でも何かが起きると思っているんでしょ?』
そう返してくるのはシャーロットだ。
『多分ね……。でもあの状況でデボラとミオの素顔を目の当りにしたにもかかわらず、最後まで魔物を相手に採取のサポートのみをすることができたらあのクランは清廉潔白って断言できると思わない?』
台詞が多少棒読みである。希望的観測とはこのことだと自覚のあるミナト。期待薄とも表現できる。
『ミナト……、このクランに当てはまるとは全く思わないけど、そもそも冒険者に清廉潔白って言葉は無理があると思うわ!』
『ソ、ソウイワレテイシマイマスト……』
シャーロットの正論に何も言えないミナトはカタコトで返す。
『あの様子だと自分の命の危険を顧みないで嬉々として二人に襲い掛かりそうだったじゃない?』
デボラとミオの素顔を見たときに戦闘役の冒険者達が浮かべた下品な笑みを思い出してシャーロットがそう言ってくる。
『その時は全て二人に任せると言ってある!』
そこは明るく返すミナト。そんなことをする連中の命に関して自分が関与する気はないミナトであった。
『お二人を襲う……、自ら断頭台に上ってその首を差し出すのとほぼ行為が同じですね……』
移動しながらふるりとその身体を震わせながらそう言ってくるのはオリヴィアだ。
『ま、何かあっても離脱した運搬役の冒険者達はデボラとミオが護ってくれるだろう。おれ達はここに残っている運搬役の冒険者が無事に稼げることを祈るとしますか……。シャーロット、第五層まで誰も脱落しないように必要があれば回復魔法をお願いね?』
『そこは任せて頂戴!』
移動しながらドヤっとポーズを決めるシャーロット。その様子に
一方、第四層における二つ目の休息ポイントに残された冒険者達はというと……。
「よーし!俺は『大穴の
ボウギンと名乗ったB級冒険者のそんな言葉と共に移動を開始していた。
戦闘役はボウギンを含めてB級、C級の冒険者が二十五名。運搬役は二十名。戦闘役は二人から三人で運搬役二人程をカバーすることになるようだ。
『うむ……。とりあえず我とミオで二人組というところか……?』
『ん。それで構わない……』
デボラとミオは二人で行動することを念話で確認していると、
「すいません……。お二人と同行させて頂いてもよろしいでしょうか?」
そう声をかけてきたのはミナトに絡んだ女性冒険者の相棒であった魔導士風の女性冒険者である。
『マスターはこの女がそれほど疲弊していないのに残っていたと言っていたが……』
デボラはミオの方を見る。
『ん。連れて行って問題ないと思う』
ミオが言ってきた。どのみちこのダンジョン内において力でデボラとミオを何とか出来る存在などこの地下深くにいるアースドラゴンぐらいのものだ……、たとえアースドラゴンであっても、
そんな状況で女性冒険者を恐れる理由はない。
『仮に連中が襲ってきてもこの者に危害を加えさせなければよいか……?』
『ん。その通り!ボクの結界で問題ない』
ミナトに頷き返し、デボラが女性冒険者へと向き直る。
「うむ。我らは構わない。我はデボラ。こっちはミオだ。そなたの名を教えてほしい」
デボラの傍らで小さく手を振るミオ。
「これは失礼しました。名乗りが遅れてしまい申し訳ありません。C級冒険者のエレナと申します」
そう言って頭を下げるエレナと名乗った女性冒険者。デボラとミオはエレナを加えた三人で第四層からの帰還と鉱石の採取を目指して行動を開始することを決めるのだった。
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