第262話 この世界にもクランがあった
「はい?」
思わずそんな声を上げたのはミナトである。
「『地のダンジョン』は封鎖中?」
そう問い返してみると、
「はい。明後日に予定されているレイドの準備期間として一時的に封鎖されています」
にこやかにそう話すのは古都グレートピットにある冒険者ギルドの受付嬢。
頭からすっぽりとフードを被ったシャーロットのお陰だろうか無事に受付嬢のいるカウンターまで辿り着くことができた。ホッとしつつ『地のダンジョン』について受付嬢に尋ねたところ返ってきたのが『地のダンジョン』はレイドの準備期間のために封鎖中との説明であった。
レイドとは多くの冒険者によって行われる大規模探索のことである。
「今回のレイドは現在も参加する冒険者の方を募集しています。お二人もレイドに参加されるのであれば内容についてご説明させて頂きますが?」
そう聞いてくる笑顔の受付嬢。
『話だけでも聞いておこうか?』
『その方がいいと思うわ』
念話で短くシャーロットに確認をとったミナトは受付嬢からレイドについての説明を受けるのことにする。
受付嬢の説明によると、今回のレイドはここ古都グレートピットに拠点を置くグランヴェスタ共和国唯一のA級冒険者パーティによって設立されたクラン『大穴の
冒険者にはS級からF級までの七つの階級に分かれており、それぞれ冒険者証となるプレートの色で区別される。
S級冒険者:
A級冒険者:金、超一流…一国にほんの僅か
(以上の冒険者は滅多に遭遇することが出来ない)
B級冒険者:銀、一流…一国に数人
C級冒険者:銅、上級…一国に数十人
D級冒険者:鉄、普通…一国に数百人
E級冒険者:青、見習い…多すぎて計測不能
F級冒険者:赤、初心者…多すぎて計測不能
A級冒険者は冒険者の中でも選ばれた者にしかなれな到達点であり周囲の冒険者から畏怖されるような存在である。一応は現在F級であるミナトたちよりも階級はかなり上ということになる。実際の実力は別にして……。
そしてこの『大穴の
「クラン?」
とりあえず聞き返すミナト。元いた世界のラノベからの知識でクランの意味は何となく分かる。だがルガリア王国にそんな組織はなかったため、クランについて確認したかったのだ。
「ああ、他の街から来られたのでしたね?クランとは古都グレートピットで独自に発達した冒険者の相互扶助組織のことです」
そう説明する受付嬢。ここグレートピットにある『地のダンジョン』やそれ以外のダンジョンに潜って稼ぐ冒険者の大半が採取した鉱石を売ることで生計を立てている。ダンジョン内では魔物からのドロップ品も大半がなんらかの鉱石であるらしい。
ドロップした鉱石は例外なく基本的に重い。問題になるのはその運搬だ。マジックバッグなどは超希少な魔道具でありおいそれと入手はできないため、当然担いで戻ることになるがそんな重量を背負って行う魔物との戦闘は危険すぎる。そのため魔物との戦闘と運搬それぞれに特化する形で大人数のパーティを編成しダンジョンに挑んで大量の鉱石入手を狙うクランという組織が出来上がったという。
『それって上級の冒険者から搾取される仕組み?』
『ちゃんと納得できる報酬が得られるならよい組織体制じゃない?』
不審なことを考えてしまうミナトである。
シャーロットによると第五層辺りまで行けばミスリルや少量のオリハルコンなども採れるらしいが、受付嬢によるとグレートピットで活躍する冒険者が潜るのは第三層までが一般的らしい。『大穴の
『ミスリル鉱山はこの大陸の限られたところにしかないからここで採れるミスリルはきっと高額で取引されているはずよ』
そんなシャーロットの説明にミナトは頷いて応える。
「そしてこの度、『大穴の
やっぱり笑顔でそう説明される。
『参加したら『地のダンジョン』に潜れるけどおれの
『知られるとロクでもないことになりそうね……。黙っていましょう』
ミナトはちょっと考える。レイドに参加すべきかどうか。他の冒険者との余計な軋轢を避けることを考えると不参加の方がよいに決まっているが……。
『知らないクランとかに遠慮するってのもちょっとね……』
そんな気持ちも確かにあった。
『参加でいいんじゃない?ミナトの闇魔法があれば途中離脱も簡単だし……』
シャーロットが念話を飛ばしてくる。確かにそれは可能だと思うミナト。
『何か仕掛けられたら喰い破るだけだしね?』
好戦的な笑みをフードで隠しつつそんなことを言ってきた。そしてそれも可能なわけで……。
結局ミナトはシャーロット、デボラ、ミオ、そしてせっかくだからオリヴィアにも同行してもらおうと考え、五人で参加するという意向を伝えた。参加の登録を終えて振り返り広いホールへと視線を向ける。ちょっと依頼が貼ってある掲示板でもひやかしに行こうかと考えていたところ……、
「おい!兄ちゃん!」
お約束のようにいかついオッサン系冒険者に絡まれてしまうミナトであった。
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