第261話 古都の冒険者ギルドへ
無事に古都グレートピットの防壁内に到着したミナト。そんなミナトの眼下には巨大な大穴が口を開けている。
「これが……、この大穴自体が『地のダンジョン』?」
「ええ。大穴の上の空間に手を延ばすと確かめられるわよ?」
「?」
シャーロットに言われて手を前へと伸ばしてみると、
「……?これって?障壁?」
何かに遮られて手が止まる。あちこち触ってみると……、どうやら透明な壁が大穴の周囲を覆うように展開されているようだ。
「そこから先がダンジョンになっていて隔絶された空間になっているのよ。あっちにある入口からしか入れないのは変わっていないみたいね」
そう言ってシャーロットが反対側を指し示す。一キロ以上あるかもしれない反対側、そこから螺旋状に大穴の底へと通じる道が形成されているのが見える。なるほどあそこから穴の底を目指すらしい。しかしミナトは疑問の表情を浮かべる。
「ここって有名なダンジョンだよね?でもあの螺旋状の通路に誰もいないのは何故……?」
ぐるぐると広大な大穴を降りるための通路には冒険者の姿がなかった。
「うーん……。どうしたのかしら?ここから見える穴の底があるじゃない?あそこを抜けたところからが第一層なのよ。このダンジョンはいろいろな鉱石が取れるはずだから冒険者がいてもおかしくないのに……。冒険者ギルドに行けば何か分かるかもしれないわね」
そう話してミナトとシャーロットは冒険者ギルドを目指すことにする。通行人に聞いたところ『地のダンジョン』の入り口付近に冒険者ギルドはあるらしい。古都グレートピットの街並みを見物しながら通りを歩くミナトと今はフードを被っている美人のエルフ。
この街も王都のような高い建物があるわけではないが、人通りはかなり多く活気がある。障壁があることで滑落などの心配はないとはいえすぐ近くに巨大な大穴が空いているというのに誰もそのことを気にしていないようだ。そしてグランヴェスタ共和国の街であることの証のようにあちこちの屋根の煙突から煙が吹き上がっている。グトラの街や首都のヴェスタニアと同様にドワーフの工房が軒を連ねているらしい。ここも職人が多く暮らす街のようだ。
「これだけ工房が多いってことは『地のダンジョン』から得られる資源がかなり豊富ってことなのかな?」
「多分そういうことでしょうね……。今の冒険者がどこまで『地のダンジョン』に潜れるかは知らないけど第五層まで潜ればミスリルも採れるし少量ならオリハルコンも手に入るわ。オリハルコンとかはもっと深く潜らないとたくさんは採れないけどね。武具を作る職人にとっては夢のような環境らしいわよ?そのせいで大戦のときは重要な戦略拠点とされていたのよ……」
どうやら激戦地となった理由は『地のダンジョン』から採れる資源を争ったからのようだ。
「ちなみに『地のダンジョン』って第何層まであるの?」
そこが気になるミナト。『火のダンジョン』も『水のダンジョン』も一筋縄ではいかないほどの広大さを誇るダンジョンだった。特に『水のダンジョン』の自由落下のような行為は……、できることならご遠慮したい。
「フフフ……、ヒミツ~!」
そんなとびっきりの笑顔で片目を瞑られても……、確かにシャーロットは絶世の美女であるがこの返答には不安感が込み上げてくる。
「いきなり種明かしをしても楽しくないじゃない?大丈夫!きっと上手くいくから!」
冷汗が背中を伝うのを感じるミナトであった。
ほどなくして冒険者ギルドへと到着するミナトとシャーロット。ヴェスタニアの冒険者ギルドほどではないが三階建てのその建物は一階建ての多い周囲の建物と比べるとひときわ大きく感じられる。
『今日はスマートに情報収集できますように!』
『おかしな連中が手を出してきたら返り討ちにするだけよ!』
平和的な訪問を望むミナトにシャーロットが好戦的な念話を投げてくる。
『オテヤワラカニオネガイシマス』
とりあえずお願いだけはしておくミナトであった。
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