バーテンダーは古都グレートピットを満喫する
第254話 温泉を楽しむ冒険者
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……、これぞまさに極楽♪」
頭に折り畳んだ手拭いを乗せたミナトは満足気にそう呟く。空を仰げば満天の星空に明るい満月、そして頬に感じる程よい秋風。一部屋に一つ備え付けられているという源泉かけ流しの大型露天風呂。露天風呂にも拘らず
ここは古都グレートピットから徒歩圏内にある温泉街の一つ。何故か古都グレートピットをぐるりと取り囲む防壁内では温泉が湧かず、その周辺でのみ温泉が湧くことが確認されているのでグレートピットの周辺に温泉街が造られているらしい。周辺とはいってもグレートピットの防壁を出て徒歩圏内にそれら温泉街はあり、魔物などは魔物除けの魔道具の仕様に加えて冒険者や衛兵が定期的に駆除しているので安全に移動できるような仕組みが出来上がっているという。
ちなみのこの温泉街の名前はバーデン。『ドイツの温泉?』とミナトが思ったことは秘密である。こういった温泉街には案内所が設けられ温泉を楽しむ旅人や住人に最適な宿を紹介してくれるとのことで金銭的に激しく余裕のあるミナトたちは何よりも風呂のクオリティに拘って本日の宿を探した。
ミナトはこの世界に転生した身ではあるが中身は完全に日本人である。そのため風呂が好きだ。普段の生活では水浴びとシャーロットやミオの使う
そうして選んだ宿がこの『戯れる妖精は泡沫の夢を見る亭』である。相変わらずネーミングはファンタジーであった。
そうして現在、ゆったりと湯船に浸かって寛いでいるミナト。極上のリラックス空間である筈なのだが……、
「うーん。これは最高ね。気持ちがいいわ」
湯気の向こうに見事としか言いようのない美しい肢体を誇るスレンダーな真珠のような眩しい白のシルエットからそんな言葉が聞こえてくる。
「うむ。この習慣は素晴らしい!このような習慣を人族や亜人が持っているとはな。こういったことに工夫を凝らすのは流石といったところだ!」
同じくそんなことを言っているのは圧倒的な迫力のグラマラスな肌色のシルエット。
「ん~♪いい気持ち!」
とても気持ちよさそうな声がまるで少女のような可愛らしい肌色のシルエットから聞こえてくる。
どうもミナトがリラックスできる空間ではなくなっているらしい。まさにハーレムではあるのだが温泉というこのシチュエーションのせいなのか不思議と嬉しいよりも恥ずかしい気持ちが強く出るミナト。
そんなミナトに気付くこともなく三つのシルエットはわいわいと実に楽しそうだ。
「ふーむ……。それにしてもシャーロット様の肢体の美しさよ。やはり人族の
グラマラスなシルエットが自身の大きくて形の良い双丘を持ち上げながらそんなことを言っているらしい。そんな行動はとらないでほしいミナト。
「デボラ!それは違うわ。胸、足、腰、そしてお尻。デボラのどれもが
スレンダーなシルエットからのグラマラスなシルエットへの評価は極めて高いらしい。
「ん。ボクにはどっちもない……。だめ……?」
可愛らしいシルエットがそんなことを聞いている。
「ミオ!それも間違いよ。あなたのその姿が一番好きって
えらい言われようである。ミナトは苦悶の表情を浮かべ俯きながら湯の中へと沈んでいく。居たたまれない気持ちという言葉が心にしみるミナトであった。
「ミナトはどう思う?」
こっちに振らないで頂きたい。そうは思うが俯いた顔を上げ視線を声の方へと向けると……、
「!?」
一陣の風が吹いて……、湯気が消えたそこには一糸纏わぬ美しいエルフの姿。その背後にはグラマラスな肌色と少女体形の肌色が気持ちよさそうに寛いでいる。ちなみにオリヴィアは『水浴びはちょっと……』と温泉が苦手らしくお留守番である。
「えっと……、ワタシニハワカリマセン……」
まだまだ夜は長い……。また幸せかつ少しお疲れな朝を迎えることになるのか……。改めていろいろな覚悟を決めるミナトであった。
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