第230話 ダンジョン『カエルの大穴』へ
二日後、依頼主であるアイリスと再び合流したミナト、シャーロット、デボラ、ミオはダンジョン『カエルの大穴』の入り口へと到着した。ダンジョン『カエルの大穴』は首都ヴェスタニアの北にある草原地帯にその入り口がある。こちらは徒歩で片道二時間ほどかかった西の森と違い徒歩三十分ほどで到着できた。ちなみに今日もヴェスタニアの空は見事なまでの快晴である。
「あ、あの……、ミナトさん?ほ、本当に大丈夫ですか……?なんでしたら明日以降に延期しても……」
これからダンジョンに潜ろうとするところで心配そうにアイリスがそんなことを言ってくる。
「あ、あはは……、大丈夫ですよ。こ、今回も問題ありません。ここがダンジョン『カエルの大穴』の入り口ですか~。さあ狩りの時間です。頑張りましょ~。あはは~」
乾いた笑いと共にそう返すミナト。昨日は宿から一歩も出ることなく過ごしたはずのミナトだが、今日も明らかに憔悴していた。目の下にはくっきりと
『おかしいな……、全員で一緒に……、ってのはやめてもらったはずなのに……』
ミナトはそんなことを心の中で呟いている。そんなミナトの様子に、
『うむ。シャーロット様のせいだな』
いつも以上に輝く鮮やかな紅い髪を風に靡かせながらデボラがそんな念話を飛ばす。
『ん。シャーロット様が悪い』
こちらもいつも以上にサラサラかつ艶やかさを湛えている青い髪を風に靡かせてミオがそれに続いた。
『な、なによ!あなた達だってあんなに楽しんでいたじゃない!』
言葉には出さないが心外だという表情でシャーロットが二人へと念話を返す。そんなシャーロットも肌は見事なまでに艶々である。
『我とてあそこまでは……』
『ん。ジョウネツテキ……』
しれっと言い放ってくるデボラとミオ。
『う~……』
シャーロットはエルフの特徴である可愛い耳までを真っ赤にして俯いてしまった。背後の三人がそんなわちゃわちゃをしていることに気付いていないミナトは、
「さてと……、では行くとしますか?確か第一階層か第二階層にブルー・フロッグが出現するんでしたよね?」
「はい。ダンジョン内は湿地帯のようになっていてそこでブルー・フロッグに遭遇することになるかと……」
ミナトの確認にアイリスがそう返す。アイリスの返答内容はミナトが冒険者ギルドで確認した内容と一致する。
「よし……、みんな!」
ミナトがそう声をかけるとシャーロット、デボラ、ミオの三人はあらかじめ決めておいた所定の位置に移動した。先頭がミナト、その後にシャーロットとアイリスが続き、さらに後方にデボラとミオが位置する。そうして一行はダンジョン『カエルの大穴』へと潜るのであった。
「広い……、そして明るいね……。なるほど……」
ミナトの呟きが漏れる。入口を抜けると途端に広大な空間が広がっていた。太陽が見当たらないが明るい青空が広がっており、ご丁寧に雲までが浮いている。地面は水場と草地が混在するいわゆる湿地帯が遠くまで広がっていた。
「冒険者ギルドの情報ではこのダンジョンはそれほど大きい規模ではなく。最下層は第五層。第二層までが初心者歓迎のダンジョンで、第三層以下はC級以上が推奨されているとのことだ。マップもあるし大した問題があるとは思えないけどアイリスさんの護衛も兼ねているから注意して進もう」
ミナトの言葉に、
「分かったわ!」
「うむ。承知した!」
「ん。了解!」
同意を示す三人の美女。とりあえず第一階層でブルー・フロッグを探すことにして移動を始める。だが……、
「ブルー・フロッグ……、いなくない!?」
思わずそう声を上げるミナト。一行はマップに従い第二層への階段を目指しながらブルー・フロッグを狩ることを予定していた。目の前にある小高い丘を越えれば第二層への階段が見えてくるといったところまで進んできたにも関わらずブルー・フロッグどころかまだ魔物に一匹も遭遇していない。
「おかしいわね……。どんなダンジョンでもこれだけ進めば一匹くらいは魔物に遭遇するはずなのに……」
シャーロットも首を傾げている。
「これってもしかして……、ダンジョンが踏破されてる?」
そう呟くミナト。
主と呼ばれる魔物がいるダンジョンでそれを斃すと一定期間ダンジョンから魔物と宝箱が消滅することを踏破と呼ぶ。高難易度ダンジョンの踏破は冒険者にとっては富と名声を得るチャンスとなるのだというが……、
「このマップにも注意書きがある。『カエルの大穴』は初級の冒険者にとっての狩場であり、主を斃した際にドロップするアイテムが全く無価値なものであることから踏破は禁止って……」
「どうやらその注意を守らなかった冒険者がいたみたいね……」
ミナトの言葉にシャーロットがそう返す。アイリスは状況がまだよく分かっていないようだ。
『マスター!』
『ん。誰かが来る』
デボラとミオがそう伝えてくる。ミナトの索敵能力にも何者かを感知した。すると第二階層への階段があるはずの丘の向こう側から七人の男女が姿を現す。
「あ~、あいつ……」
見たことある面倒な顔にミナトはげんなりした表情でそう呟くのであった。
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