前のエピソード――第222話　シャーロットとデボラは無双する

　冒険者崩れと思われる男達を斃しきったシャーロットとデボラ。その男達の気配が消えたことをミオはしっかりと感じ取った。

「ん。終わったみたい……」

　そんな言葉を呟くミオ。それを聞いていたアイリスが

「あ、あの……、な、何が終わったのでしょう……？」

　そう聞いてくる。

「ん。シャーロット様とデボラの勝利。ボクも戦いたかったがこれはしょうがない」

　そう言ってミオは胸を張りドヤっとポーズを決めるとピースサインをしてみせる。

「勝利……。あ、あの……、男の人達は……？」

「ん？知らない方がよいこともある。だから内緒。さ、戻る」

　ミオはそう言うとアイリスの手を取り来た道を引き返した。ほどなくしてシャーロットとデボラの姿を視認する。

「ミオ！戻ったのね」

「ん。アイリスさんは無事。シャーロット様もデボラもお疲れ様！」

「うむ。運動にもならなかったがな」

　そんな会話を交わしている三人の傍でアイリスは周囲を確認する。十人はいたはずの冒険者崩れと思えた男達は影も形も見当たらない。そうしていると、

「あの連中のことは忘れなさい。冒険者は自由。そしてその自由の代償として己の命は常に自己の責任で管理することになるわ。そんな冒険者を襲おうとしたんだもの。その後は言わなくても分かるでしょ？」

　シャーロットにそう言われアイリスは頷く。

「はい……。そのことは父から聞いていました。父も冒険者に同行して採取に赴いた際、同じ経験をしたそうです。武具の職人であれば冒険者との交流は必要不可欠ですから……。ですが初めて自分がその渦中に置かれると……」

　アイリスの足が震えていた。ショックを受けたのかもしれない。

「うむ。この事態に衝撃を受けるのは自然なことと言えるだろう。それはアイリス殿の感性が正常であることの証だ。そしてこれは乗り越えねばならぬものであろう？今は動揺を抑えることは出来ぬと思うが、今日この経験ができたことを僥倖と捉えることだな」

「は、はい……」

　デボラのアイリスはなんとかそう答えるのだった。そうして四人がミナトを待って佇んでいると……、

「ただいま～！」

　そんな明るい声と共にミナトが戻ってきた。右手には何故か生きたまま大人しく捕まっている魔物……、大烏（オオガラス）が三匹。そして左手に鎖を持っておりその先には意識を失っている二人の男が簀巻きに近い状態で拘束されていた。

「ミナト！お帰りなさい！」

「うむ！マスターの方にも二人行っていると言っていたが問題なかったようだな！」

「ん！さすがマスター！」

　三人の美女が駆け寄る。

「とりあえず拘束しておいた」

『アイリスさんにはこの鎖が【闇魔法】ってことは内緒にね。黒い鎖ってことにしておいて！』

　口に出した言葉に加えて念話でそんなことをお願いし、

「斃すことはしなかったよ……。シャーロットからできることなら止めておけって言われていたからね」

　そんなことを報告するミナト。

「正解よ。同族を殺せば魂が灼ける。この世界において人の命は決して重くない。いつかはミナトも人族の命を奪う日がくるわ。だけど今日じゃなくていいと思うのよね」

「うむ。その通りだ。マスターには相手を無力化する方法があるからな」

「ん。ボクもマスターはそのままでいいと思う」

　三人にそう言われて笑顔を返すミナトであった。

「さてと……、とりあえずこいつらは放っておいて……」

　そう言って左手で持っていた鎖を放り出すミナト。悪夢の監獄（ナイトメアジェイル）によって生み出された漆黒の鎖はミナトの手を放しても存在させ続けることができる。悪夢の監獄（ナイトメアジェイル）でスキルと魔法の使用を封じられ、堕ちる者（デッドリードライブ）で運動能力と共に意識レベルも低下させられているため男達が意識を取り戻すことはない。