第213話 打合せの完了とテンプレの予感?
ウンダーベルグを見つけたことで歓喜しブルー・フロッグの殲滅を高らかに宣言するミナト。
「ミナト……、ドワーフでも初めてならその味に戸惑うってお酒を一息に飲み干していたけど大丈夫なの?」
シャーロットが聞いてくる。
「ああ!これはおれのいたところにあったウンダーベルグってお酒と同じものだと思う。とても薬草感が強いお酒だからそのまま飲むのは本当にこれが好きな人だけって感じかな。この国でもドワーフが薬として使用しているってアイリスさんも言ってたでしょ?ストレートはそれくらいちょっと個性的なんだよね」
とてもいい笑顔でそう答えるミナト。その様子からすごく嬉しいらしいことがよく分かる。
「その……、うんだー……、べるぐ?そのお酒もカクテルに使えるってこと?」
目を白黒させているアイリスを置き去りにシャーロットが重ねてそう尋ねてくる。
「うーん……、一応はスティール・アンド・アイアンってカクテルとかで使われてる。だけどおれとしてはソーダ割りがイチ推しかな?特に名前とかは付けられてはいないんだけど……」
少し考えるような素振りと共にミナトがそう答えてきた。
「ソーダ割り?炭酸水で割るってこと?」
「そう!炭酸水で割ると薬草感のある独特の風味でちょっと苦めだけどさっぱりと飲めるお酒になるんだ。食後酒とかで飲めばすっきりしていい感じになると思う。例えば食事を終えてBarに来たお客とかの最初の一杯……、美味しい料理を一杯食べた後にこう……、薬草の香りと苦みがあってかつ炭酸の効果でさっぱり飲めるお酒で舌も気分もリフレッシュ……、そんな感じかな?」
ミナトの説明にシャーロット、デボラ、ミオの三人は興味をそそられたらしい。
「ミナト!帰りに買っていきましょう!飲んでみたいわ!」
「うむ。賛成だ!」
「ん。ボクも!」
彼女たちの言葉に笑顔で同意するミナト。今夜の食事も楽しくなりそうだ。そうやってひとしきり盛り上がった後、ミナトはアイリスへと向き直る。
「アイリスさん!」
「は、はい?」
声をかけられアイリスは我に返る。
「おれ達にとってウンダーベルグ……、じゃなかったこのフロッグの小瓶はどうしても欲しい物でした。ブルー・フロッグを狩りまくりますので期待してください。魔石を五個ということですが、全て特殊個体のものにできるくらいは狩ってみせます!」
「え……?」
ミナトに勢いよく言われ言葉に詰まるアイリス。
「よーし!依頼はきちんと達成するつもりだったけど俄然ファイトが湧いてきた!」
「いいわね!手伝うわよ!」
「カエル狩りだな!」
「ん。狩りまくり!」
そう言い合って気勢を上げるミナトたち。
「あ、あの……、それで私を同行して頂ける件は……?」
肝心の点について確認するアイリス。そんな彼女にミナトは笑顔を返す。
「おれはアイリスさんが同行するのは全く問題ないと考えている。念のためだけどみんなの意見はどうかな?」
ミナトが聞くと、
「問題ないわ。魔石の鑑定にも興味があるし同行は歓迎よ」
「うむ。我も問題ない!護衛に関してもしっかり対応させて頂こう!」
「ん!ボクも!」
その答えを聞いてミナトは再度アイリスに向き直る。
「そういうことでアイリスさん。ブルー・フロッグに関してはこれで問題ないかな?」
ミナトの言葉に、
「はい!宜しくお願いします」
アイリスが頭を下げるのだった。
「ブルー・フロッグは魔石を狩りまくるとして
追加で素材について確認するミナト。
「はい。こちらは通常の素材でお願いします」
笑顔でそう言われてしまう。これは仕方ない。大会の規定により高級な素材は使えないのだ。
「ただこちらも品質を確認したいので私も同行させて頂きたいのですが……」
アイリスが遠慮がちにそう聞いてきた。
「承知しました。同行に関しても問題ないですよ。ね?」
「ええ!」
「うむ!」
「ん!」
それくらいの対応は問題ない。むしろもっといろいろな注文をつけてくれてもいいくらいだとミナトは思っていた。そんな感じで
「先ずは
そう提案されミナトは了承した。これで全ての打ち合わせが終了したことになる。
「依頼を受けて頂きありがとうございます。宜しくお願いします」
そう言って頭を下げるアイリスに、
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そう答える。二日後の出発が楽しくなってきたミナト。そして二日後の集合場所をアイリスの実家でもある工房にしたいとのことだったので、最後に工房まで案内してもらうことになった。
アイリスとミナトたちが冒険者ギルドから出たとき、
「おお!アイリスさんじゃないですか?」
「ご無沙汰しております」
妙に気取った声がアイリスとミナトたちにかけられた。全員が視線を声の聞こえた方へ向ける。そこにはドワーフの男と人族の男が立っていた。どちらも若い。だがその目には嘲りや蔑みといった感情が宿っているのをミナトは見逃さない。
『これってテンプレ的な展開ってやつか……?』
ミナトの心の呟きは誰に耳にも届くことはなかった。
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