第208話 意外な歓迎?
ミナトたちの視線の先にいたのはドワーフの女性……、いやケイヴォンの双子の兄妹であるリーファンよりは多少年上かもしれないがまだ少女と呼んだ方がよいかもしれないあどけなさが残っている。ミナトが知っているドワーフよりは身長が高く細身のそのスタイルは人族の少女と変わらないと言えるかもしれなかった。
「ええ。こちらのケイヴォンさんから紹介を受けましてね。この依頼を受けさせてもらおうと思ったんですよ。あなたが依頼者のアイリスさん?」
背後からの問いに答えるミナト。ケイヴォンさんと呼んだのは彼がきちんとした仲介者であるよう立てるためだ。
今回の依頼は通常の手順とは異なり、ミナトの手元にある依頼書をギルドの受付に提出すれば受けられるというものではない。ミナトが手元の依頼を受けることをギルドに報告すると、冒険者と大会参加者が話し合う場が設けられることになる。そこで大会参加者が冒険者の人となりを見極めた上で正式に依頼を出すかどうかの決定をすることになっていた。
するとその傍らにいたケイヴォンが前へと進み出る。
「アイリスさん。おれ師匠の仕入れのお供でグトラの街まで行ってきたんだ。その帰り道に護衛してくれたのがこのミナトのアニキが率いるパーティでさ、ミナトのアニキはF級だけどすっげー冒険者なんだ。だからおれ……、アイリスさんの依頼を受けてくれるように頼んだんだよ!」
「ケイヴォン君が?わ、わたしのために?」
アイリスと呼ばれたドワーフの少女は驚いてそう聞き返す。その様子は当惑しているように思えた。
「おれはアイリスさんが凄い才能と腕を持っていると思ってる。だからこの大会で活躍してほしいんだ!さっきまで依頼が張ってあったってことはまだ冒険者に依頼ができていなかったんだろ?この大会は依頼できる冒険者がいないとき知り合いの職人から冒険者を紹介してもらうのは問題ない。だからおれはミナトのアニキをアイリスさんに紹介したいんだよ!」
ケイヴォンが力強くそう言い切った。
「やったじゃないか!アイリスちゃん!」
「いいね~!やるじゃねえか!ぼうず!」
「ライバルの職人に冒険者を紹介か?男だね~」
「アイリスちゃん!今回、俺らは手を貸してやれない。少年の紹介を受けるべきだぜ?」
「応援してるぜ!アイリスちゃん!」
「この街の未来はアイリスちゃんのものだからよ!」
少し前にギルドに戻ってきていた冒険者達から歓声が上がる。
『なんだろ?これ?冒険者達はアイリスさんを応援している?』
ミナトがそんなことを思いつつ不思議そうな顔をしていると、
「冒険者の兄ちゃんたち!よくぞぼうずの頼みを受けてくれた!」
「よ!冒険者の鏡!」
「見たところ旅の冒険者だな?この街の冒険者はあんた達を歓迎するぜ!」
「アイリスちゃんを助けてやってくれ!」
「あとは大会に向けておれたちが頑張るだけだな!」
ミナトたちにもそんな言葉が飛んでくる。ミナトたちがアイリスの依頼を受けようとしていることを歓迎してくれているのは間違いないようだ。
「冒険者達の反応が意外そうだな?」
ミナトたちに野太い声が掛けられた。声の主はインパクト抜群の壮年の男性である。人族だが、スキンヘッドに筋骨隆々、その身長は二.二メートル、体重も百五十キロはあるだろう。あまりのド迫力に言葉を失うミナト。こういうときに【保有スキル】の泰然自若はうまく仕事をしてくれない。
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
「ギ、ギルマス!」
「ど、どうも……」
ケイヴォンとアイリスもそう呟きながら固まっている。ケイヴォンの呟きからミナトは眼前の大男がどんな人物なのかを理解する。
「はっはっは!俺の名はラーモンド。このヴェスタニアの冒険者ギルドでギルドマスターをしているものだ!」
豪快な笑い声と、野太い声がギルド内に響き渡る。
『やっぱりギルドマスターだった……。それにしてもキャラが濃い……』
そんなことをミナトが思っていると、
「我が冒険者ギルドはアイリスの依頼を受けようとしたお前たちを歓迎する。ちょうど依頼者のアイリスもいることだ。さっそくだが依頼者と冒険者の話し合いを始めるとしようじゃないか!外国からきたお前さん達に俺から話しておきたいこともあるしな!はっはっは!」
突然のことに『えっ?あ、あの……、わ、わたし……』と戸惑っているアイリス。それとミナトたち一行、そして言いたいことを言いきって放心状態だったケイヴォンも含めギルド職員に半ば強制的に先導される形で二階にある会議室へと案内されるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます