首都ヴェスタニアとドワーフの少女
第199話 グトラの街の冒険者ギルド
新しいカクテルであるハリケーンとエッグベネディクトで楽しいブランチを堪能したミナトたち。午後になってからミナトはシャーロットを連れて冒険者ギルドへと向かっていた。天気は見事な秋晴れでありる。天気が良かったのでグランヴェスタ共和国の首都であるヴェスタニアへと出発してもよかったのだが、ミナトはもう一泊を決定し冒険者ギルドで依頼を探すことにしたのだ。冒険者ギルドへの道順は宿の受付で教えて貰っている。
ちなみにデボラとミオは宿でお留守番である。食事が美味しかったのでもう少しのんびりとしていたいとのことだった。オリヴィアは王都の大森林へとミナトが送り届けた。王都の東にある大森林に
「ミナト?どんな依頼を探すの?」
いつもの魔導士風のローブを纏いフードを目深に被ったシャーロットが聞いてくる。
「首都ヴェスタニアにそのまま行ってもよかったけど、ヴェスタニアに行くことができる依頼があったら受けてみようかって思ったんだよね」
こちらも冒険者風の出で立ちのミナトがそう答える。
「ヴェスタニアに行くことができる依頼?護衛の依頼とかかしら?」
「ああ。護衛でもいいし、何かの品物を届けるとかね?ちょっとは冒険者らしいことをしてみようかなって……。それに何かいい出会いがあるかもしれない」
冒険者としてこの世界を見て回る。ミナトがこの世界で生きるにあたり目標として掲げたものの一つだ。
「アクアパレスまでの護衛の依頼を受けなかったらオレンジ・ビターズに出会えなかったかもしれないものね?」
笑顔でそう言ってくるシャーロットにミナトは強く頷く。
「あれはウッドヴィル家との関係がなかったら手に入らなかったかもしれない……。そう考えるとその時は運が良かったよ」
「今回も何かの出会いがあるかもって思っているの?」
「可能性は高くはないけど、おれたちだけでヴェスタニアに向かうよりも何かが起こりそうだからね」
そんな話をしていると二階建ての建物が視界に入った。この街は一階建ての建物が多いのでそれなりに目立つ。王都の冒険者ギルドより規模は小さいが看板に『冒険者ギルド』と書いてあることを確認しミナトはそのドアを開けた。
普通の冒険者は朝に依頼を受け、その日の夕方、または夜まで活動する。まだまだ午後の早い時間帯なので冒険者ギルドは閑散としていた。依頼が張り出されている掲示板はすぐに見つかった。ミナトはシャーロットを伴って掲示板へと足を向ける。
「う~ん……、やっぱりこの時間帯だといい依頼ってないかな?」
「それは仕方がないわよ。残っているのは……、ペットの散歩、孤児院の手伝い、下水道の掃除か……。どれも恒常的に出されている依頼ね。これだとヴェスタニアに行けそうにないわよ?」
予想通りではあるがヴェスタニアに行くどころか街の外に出るような依頼すら残っていなかった。どうしたものかと思っていると、
「あの……、F級冒険者のミナトさんでしょうか?」
そう声をかけられた。
「はい?」
そう言ってミナトが振り返ると声をかけてきたのは冒険者ギルドの受付嬢の一人だった。
「確かにF級冒険者のミナトはおれだけど……」
そう言いながら冒険者証を示すミナト。その冒険者証を確認した受付嬢は安堵した様子で笑顔になる。
『何かあったのかな?』
『ミナトと一緒にいると退屈しないわね?』
念話でそんなことをシャーロットと話してみる。
「よかったです。この街の冒険者ギルドにようこそ!私は受付嬢をしているフルールと申します。実はルガリア王国の王都にある冒険者ギルドで働いているカレンから連絡を貰っていたんです!階級は関係なくてとても優秀な冒険者の方だと。実はお願いしたい依頼がありまして……、いまお時間大丈夫ですか?」
そう言われたミナトは、
『シャーロット?』
『ミナトの好きにしていいけど、とりあえずは話を聞いてみたら?それにしてもあのカレンって子はあちこちから随分と信頼されているわね』
『それは確かに……、そうだね。話を聞いてみようか?』
シャーロットと念話で確認して、受付嬢であるフルールの話を聞くことに決めた。ミナトとシャーロットはカウンターへと案内される。
「実は首都であるヴェスタニアに工房を構えている職人さんの一行の護衛ができる冒険者パーティを探していたのです」
そう言われて、
「護衛の依頼?」
ミナトは問い返す。掲示板にそんな依頼は残っていなかったのだが……、
「はい。実はこの護衛の依頼は職人さん達に馴染みの冒険者パーティが受けていたのです。ですがその冒険者パーティが昨日、街の外で素材集めを行っていた際、魔物に襲われ怪我人が出てしまいまして護衛の依頼を受けられなくなったのです。そこで冒険者ギルドに信頼できる冒険者パーティを紹介してほしいと言われまして……」
護衛の依頼は顧客との信頼が重要となる。冒険者の場合、ならず者のような連中もいないわけではない。信頼があるというのは冒険者にとってなかなかに重要なことなのだ。
「それでおれ達に護衛を……?」
「はい。そういうことになります!」
笑顔で頷く受付嬢のフルール。
「この街には来たばかりで信頼も何もないおれ達だけど……?」
ミナトが表情に疑問符を浮かべる。
「そこは大丈夫です!カレンの情報は信頼できます。オルフォーレの街のギルドマスターであるリコさんからもミナトさん達は優秀だと連絡が来ていましたし!」
王都の冒険者ギルドで受付嬢をしているカレンさんはどうやらここでも信頼されているらしい。Barの常連さんではあるのだが、どうやらミナトたちの知らない一面があるらしい。
とりあえずこの依頼を受ければ護衛任務をやりながら首都のヴェスタニアに行くことができる。ミナトはこの依頼を受けることを前向きに検討するのであった。
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