第198話 アメリカ南部風のブランチを楽しもう
ホワイトミントリキュールが手に入ったことで完成したカクテル。その名をハリケーン。ホワイトミントリキュールを使うカクテルとしてはスティンガーと並んで有名なカクテルだとミナトは考える。スティンガーも造りたかったが、残念なことにまだブランデーは手に入っていない。いつかこちらも造りたいミナトである。
そんなカクテルグラスに注がれたハリケーンへシャーロットたちは興味深そうな視線を向けつつ、グラスを手にとる。そしてゆっくりと口へと運んだ。
「すごい!これはミントの香りね。ウイスキーもジンも結構入っているのにとても飲みやすいわ。このミントの香りは好き!さっぱりしていてとても美味しいわ。ミントってカクテルに使えるのね。とても興味深いわ!」
驚いたような表情でシャーロットが言ってくる。
「これはミントの香りが素晴らしい!使われた量としてはウイスキーやジンほど入っていない筈なのだがこれほど強い印象を与えるとは……。そしてこれは美味い。すっきりとした味わいは好みだ。我としては目覚めの一杯と言われたらこれを推してしまうだろう」
「ん!とても鮮烈!そして美味!ボクもミントの香りが好き!」
デボラもミオを気に入ってくれたらしい。
「ミントをこれほど感じるお酒は初めて飲みました。爽やかな味わいが素晴らしいですね」
オリヴィアにも好評のようだ。
「ミントがとても印象的で切れ味鋭くサッパリのめるカクテルだけど、結構お酒が入っているからね。飲み過ぎは注意のカクテルだよ」
そう説明しておくミナト。シャーロットたちは楽しく飲んでいるが、このカクテルにはウイスキーとジンが合計で三十mL……、いやミナトの造り方ではそれ以上入っている。ミントの鮮烈で爽やかな香りのためとても飲みやすく造られてはいるが、お酒が苦手な日本人だと結構酔っぱらってしまうくらいのお酒が入っているカクテルなのだ。
『みんなミントが好きみたいだ……』
ミナトは胸中でそんなことを考える。ミントを使った代表格のモヒートやミント・ジュレップはまだ造れない。ラムやバーボンが手に入ったら必ず造ろうと心の中でミナトは決意を新たにするのだった。
そうやってアイオープナー、または食前酒としてのハリケーンを楽しんだ面々はエッグベネディクトへと取り掛かる。
昨日のベイクドアップルに続いてエッグベネディクトを心から楽しみしていたミオの前に、マフィン、ベーコン、ポーチドエッグが重なり、上から黄色いソースが掛けられた料理が差し出された。
「ミオ。これがエッグベネディクト。ちょっと難しいけどソースと一緒に卵も切って全部一緒に食べるとより美味しさが分かると思う」
ミナトの言葉にミオはしっかりと頷いてエッグベネディクトに挑戦する。
「マスター!卵黄を割るの?」
こてんと可愛らしく首を傾げて聞いてくる。
「ああ、ベーコンとマフィンに黄身とソースをつける感じかな?」
「ん!やってみる!」
丁寧にソースのかかったポーチドエッグにナイフを入れとろりと流れた卵黄がソースに絡んだところにさらにナイフを入れる。見事に卵黄とオランデーズソースを纏ったベーコンとマフィンが切り出された。
「ミオも上手ね。じゃ、私も……」
「うむ。久しぶりだ!」
「こんな料理が異世界にはあるのですね……」
シャーロット、デボラ、オリヴィアもミオに続いて、ソースがかかったポーチドエッグにナイフを入れる。
その横で一足早くミオがエッグベネディクトをその口へと運んだ。
「ん~!美味しい!マスター!これもボクの大好きな味!」
満面の笑みで盛んに食べ進めるミオ。昨夜に続く会心の笑みであった。
「う~ん!卵の甘みとレモンの酸味にバターの旨味。やっぱり最高ね!」
「相変わらず見事だ。優しい酸味と食材が織りなすハーモニーが絶品だな!」
「これも初めての味です。酸味と甘みがこんなに美味しく感じるなんて……」
以前食べたことのあるシャーロット、デボラに続いてオリヴィアも気に入ってくれたらしい。
「ミオとオリヴィアにも気に入って貰えてよかったよ。そのソースはオランデーズソースっていう。エッグベネディクトにはこのソースが欠かせない。作るのがちょっと難しいから今回も美味くできてよかった……」
ミナトの言葉にグッと親指を立てたのはミオである。そうしてシャーロットたちは楽しそうに食事を続ける。
彼女たちがカクテルと食事を気に入ってくれたことが心から嬉しいミナトは自身もテーブルの席に着くと慎重にソースがかかったポーチドエッグにナイフを差し入れるのであった。
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