第177話 白狼がいる理由とは
盛大に飛んで行った白狼の魔物。デボラやミオの時と同じであるならきっと無事な筈である。
「ううう…、シャーロット様…。なぜこのような場所に…?」
飛んで行った白狼の魔物がそう言いながら戻ってきた。流石は高位の魔物、頑丈である。
『シャーロットたちはこの魔物のことを知っていた…?』
そんなことが気になるミナト。戻ってきた白狼はきちんとおすわりのポーズでシャーロットの前へと座った。
「ふふふ…、改めて久しぶり!元気だったかしら?」
笑顔でシャーロットが話かける。
「ついさっき殺されかけましたが…」
「そう!元気そうでよかったわ!」
世界の属性を司るドラゴンを相手にする時と同様、シャーロットは強気であった。やっぱり過去に何があったのか気になるミナトであるがそのことには触れないでおこうとそっと心に決めていた。
「シャーロット様は相変わらずですね…。それと…、レッドドラゴンとブルードラゴン…?な、なぜ世界の属性を司る伝説のドラゴンが二体も…、それもその
デボラとミオを見て白狼の魔物は驚いたようにそう言ってくる。
「久しいな!いろいろとあってな…。いまの我は
「ん。久しぶり。ボクもいまは
デボラとミオがそう答え、白狼の魔物が目を丸くする。
「お二人が名前を…?
「何ですって?」
シャーロットが白狼の魔物を睨む。周囲の空気が一段冷えた。びくっと震えた白狼の魔物はふせの姿勢をとる。服従を表現しているようだ。もう少しプレッシャーをかけたらお腹を見せて服従のポーズを取りそうである。
「まあいいわ。違うわよ。私の眷属じゃないわ!ミナトのよ!」
「そうだ!我はマスターの眷属となり存在が進化したのだ!」
「ん!ボクも同じ!」
シャーロット、デボラ、ミオの三人はそう答えてミナトの方を指し示す。それに合わせて白狼の魔物も視線をミナトへと移した。
「
やっぱりとんでもないことを言いだす白狼の魔物。
「だから誰が新たなる魔王だ!」
思わず突っ込むミナトであった。そんなこんなでミナトはシャーロットに白狼の魔物を紹介してもらうことにする。
「この子はフェンリルという種族の魔物よ。この世界に生きる幻獣と呼ばれる魔物の一体として知られているわ」
白狼の魔物はフェンリルだった。白いオオカミだったのでテンプレ的にはそんな感じがしていたミナト。
『やっぱりフェンリルか!イメージどおり!実にファンタジー!』
などと思っていたりする。
「なるほど…。ミナト殿は異世界人であると…。それであのような【闇魔法】の素養が…」
ミナトのことをシャーロットから聞いたフェンリルが頷いている。
「ところでどうしてあなたがこんな南に…、それにこんな街の近くにいるの?あなたの住処ってもっと北よね?」
シャーロットの問いでミナトは今回の依頼を思い出した。何故この森にフェンリルが居座っているのかを解明しなくてはいけない。
「実は…、暇を持て余していましたので散歩でもしようかと下界に降り、この辺りを歩いていましたら
フェンリルの言葉にシャーロット、デボラ、ミオの三人が驚く。
「それは珍しいわね!」
「ほう!?」
「ん!奇跡!」
そんなことを言っているがサンクタス・アピスというものがよく分からないミナトだけは首を傾げている。
「こんな人里近くに巣を作る魔物だったかしら?」
シャーロットが疑問を呈す。
「違いますね。何らかの偶然が重なったとしか思えません。ですが見つけることができたのは幸いでした。私はあれが好物でして…。それに巣を移動させることができるようになるのはもう少し時が必要であったためこの場に留まっていたのです」
犬がブラッシングされているときに浮かべるようなうっとりとした表情になりながら答えるフェンリル。どうやらフェンリルは
「なるほど…。あれが出来るのを待っていたのね…。ということは…」
シャーロットがそう言いかけると、
「シャーロット様!これはマスターに味見をしてもらう案件だと我は考える!」
「ん!間違いなくマスターの出番!!」
デボラとミオが力強くそう言いきった。
「もうあれは出来上がった?巣も移動できるのかしら?」
二人の様子に笑顔で同意を示したシャーロットがフェンリルに問いかける。
「実は今日がその日なのです。ちょうど食べごろだと思いますよ?」
フェンリルの言葉を受けたシャーロットがミナトへと振り返る。彼女はとびっきりの笑顔である。
「ミナト!あなたに味見してほしいお酒があるの!」
そう言われたミナトは
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