第173話 その依頼内容は…
ミナトたちがオルフォーレの街を訪れた翌日、街には今日も秋の青空が広がっている。ここはオルフォーレの街の郊外にある森。この街にある冒険者ギルドのギルドマスターであるリコからの依頼でミナトはグランヴェスタ共和国へ向かう予定を変更しシャーロット、デボラ、ミオを連れてこの森に来ていた。
ギルドマスターの部屋に移動した後…、
「ミナト。あんた達にはこの魔物の調査を頼みたい!」
ギルドマスターであるリコが渡してきたのは依頼票とこれまでの調査結果をまとめた資料であった。とりあえず目を通してみるミナト。
「雷を纏った大きな四足歩行の魔物…?キリン…?」
そう呟いてしまうミナト。かつて必死にモンスターを狩っては素材を手に入れていた東京での日々を思い出してしまった。ちなみにとある一作に関してはソロで全クエストをクリアしているミナトである。カニが二匹も飛竜が二匹もソロでなんとかした日々…。ボッチなどと呼んではいけない…。
「ミナト…?キリンってあの首の長い動物よね?どうしてキリンが雷を纏うことになるの?」
シャーロットが冷静に聞いてくる。デボラもミオもポカンとしている。アフリカにいるキリンはどうやらこちらの世界にもいるらしい。
『ごめん。シャーロット。前にいた世界でそんな魔物が出てくるゲームがあったんだ』
慌てて念話で説明するミナト。
『そういうこと?げーむってミナトが言っていたきかいってものを使った遊びよね?ミナトがいた世界は本当に想像力の逞しい人が多いのね』
そんな念話のやり取りもしつつミナトは資料に目を走らせた。
「人を襲わない…?」
ミナトは顔を上げてギルドマスターに問いかける。
「そこなんだ!近づこうとすると全身に雷を纏って威嚇してくるらしいんだけど、逃げ出した者達を追ってくることはないらしい。だからギルドとしても討伐に躊躇しているのが現状なのさ。もし討伐依頼を出したら、実は強力な魔物で冒険者が返り討ちにあうなんてのは困るしね」
「それで調査依頼か…」
「何回か調査依頼を出してこれだけの情報を集めたけど、あたしとしてはまだまだ情報不足と考えている。今は何の被害も出ていないが今後どうなるか分からないしね。可能であれば何故その魔物があの森の居座ったのかを知りたいところなのさ。頼めるかい?」
ミナトはその魔物に少し興味をそそられた。シャーロットたちはミナトの決定に従うらしい。
「分かりました。その依頼、受けさせて頂きます。明日出発しますね」
そんなやり取りがあって現在、ミナトたちはその魔物が目撃された森へと来ている。しばらく歩いているが秋晴れも気持ちよくちょっとしたピクニックの気分だ。だが、
『ミナト…、いいの?あの連中付いてきてるわよ?』
シャーロットが念話を飛ばしてくる。どうやら昨日絡んできたケヴィンという冒険者とその仲間が一定の距離を取ってミナトたちを尾行しているようだ。
ちなみにケヴィンには魔力の反応があるので彼は魔法が使えるようだ。この世界において魔法は特別な才能だ。興味がなかったので階級すら聞いていないが、魔法が使えるケヴィンは自身が優れた冒険者であるという自負があるのだろう。昨日のやり取りでミナトたちにメンツを潰されたと考え、依頼の横取りを考えているのかもしれない。
『マスター!あのゴミどもを我がブレスで一掃しようと思うのだが…?』
『ん!ボクも参加!!』
デボラとミオもそんな物騒な念話を飛ばしてきた。
『ま、今は放っておいても問題ないんじゃないかな?あの連中に何があっても助けるほどおれもお人好しではないからさ。基本無視で!』
「ミナトがそう言うなら私はそれでかまないわ!」
そう言って片目を瞑ってみせるシャーロット。その姿は間違いなく美しかった。
「うむ。マスターはそれくらいでいいとすることにしよう」
「ん。それくらいでいい」
三人を宥めつつ歩みを進めるミナト。先頭を行くミナトの背後でデボラがシャーロットの方へちらりと視線を送る。
『シャーロット様…。雷を纏う四足歩行の魔物とは…、あ奴では…?』
『あの子がこんな街の近くに現れるなんてまずありえないけど…、可能性はゼロではないと思っているわ。ま、あの子がミナトをどうこうできるなんてことは絶対にないから私たちは楽しく見学しましょう?』
『シャーロット様がそう判断するなら我はそれに従うが…』
シャーロットとデボラがミナトには届かない念話を交わす。聞こえていたミオは首を傾げるがとりあえず黙っておくことにするのだった。
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