第169話 国境の街で秋の味覚
「私が若い頃の話なので今もあるかは分かりませんがこの季節だと美味しいキノコ料理を食べれる食堂があったんですよ!」
そう笑顔で力説してくれたのは王都の冒険者ギルドで受付嬢をしているカレンさんだった。彼女一押しのお店だったらしく街の地図に印までつけてくれたのでミナトはシャーロット、デボラ、ミオを伴いその食堂へと行くことした。
「シャーロット。秋の味覚といえばこの世界でもキノコなの?」
「そうね。大陸のあちこちで食べられていると思うわ。私も好きよ。だからこれから行く店も気になるわ」
キノコ料理が楽しみらしいシャーロットは笑顔でそう答える。
「おれの元いた世界にもいろいろな種類があったよ。多すぎて全部は把握できないくらいあった」
「マスターはどんな料理が好みだったのだ?」
デボラが聞いてくる。
「そうだな…。シンプルに網焼きにして塩か醤油…」
そこまで言って気付く。
「あ…、そういえばこの世界に醤油ってあるのかな…?」
今になって異世界あるあるを感じるミナト。パンと元の世界でいう洋風な料理が主体である王都の食べ物は基本的にどれも美味しかった。そのためこれまで米や醤油といったものをそこまで意識していなかった。自分が思っている以上に異世界へと順応していたらしい。
「ミナト!ショウユはあるわよ!昔に異世界から来た人が苦労の末に造ったって聞いたわ。ルガリア王国とは距離がとても離れているけどこの大陸の東では使われているわよ?ルガリア王国には入ってきていないみたいだけど…」
シャーロットの言葉に驚くミナト。どうやら望郷の念を拗らせた転移者がいたようだ。だが醤油があるというのなら、
「いつの日か入手したい!」
「機会があったら大陸の東を目指して旅をするのもいいかもしれないわね?」
「来年以降の目標にしよう!」
拳を握るミナト。少し気合が入っていた。やはり日本人の心は捨てられない。
「面白そうだな!我もそのショウユというものに興味が湧いたぞ!」
「ん。ボクも!」
そんな話をしているとお目当ての食堂に到着した。入口には大きくお酒の持ち込み大歓迎との張り紙があるがどこにも看板らしきものはない。地元住民に愛される気軽には入れる大衆食堂らしい。ミナトたちは意気揚々とその食堂に入った。
「お待たせしました!こちらセップの網焼き盛り合わせでございます!」
大量のキノコが盛られた皿がミナトたちのテーブルに到着する。店員から『網焼、肉詰め、バター炒めがおススメだよ!』と言われたので全部頼んだ結果最初に来たのがこの網焼きだった。
「!?」
皿の上の光景にミナトが驚く。
「ミナト?」
シャーロットが此方を覗き込んでくる。最高に可愛いく美しい…、だが今は
「セップがセップだった…」
呆然とそう呟く。
「ミナト…?何を言っているの?大丈夫?」
「マスター?」
「ん?」
ミナトの意味不明な呟きにシャーロット、デボラ、ミオの美人三人が怪訝な表情で見つめてくる。慌てて我に返るミナト。
「ご、ごめん…。ちょっと驚いちゃった…。これとほぼ同じキノコが元いた世界にもあったんだ。名前も同じセップって言って本当に美味しいキノコだったから…」
「そうなのね!そう言われると期待しちゃうわ!では頂きます!」
「我も頂こう!」
「ん。頂きます!」
全員でフォークを手に取りセップの網焼きを味わうことにする。焼き加減はアツアツだ。丁寧に塗られたクルミ油の風味、振りかけられた塩、そしてセップの強い旨味と最高の香り、そしてキノコ独特の心地よい食感が相まって絶妙なハーモニーを奏でている。
「これは美味い!本当に美味い!」
「凄いわこれ!こんなシンプルな料理なのにこんなに美味しいなんて…。このセップと言ったかしら?このキノコ本当に美味しいのね!」
「これはたまらん!何という旨味と香り!!見事だ!見事すぎる!!」
「ん。最高!!」
競い合うようにして次の網焼きに手を出そうとする絶世の美女たちだが、
「みんな!ちょっとストップ!」
ミナトがその行動を制す。
「ミナト?どうしたの?」
シャーロットが聞いてくる。デボラもミオも顔に疑問符が浮かべているが…。そんな三人を前にミナトは一本のボトルを【収納魔法】の
「
そのボトルに三人の表情が輝く。それはミオの…、ブルードラゴンの里で造られた最高の白ワイン。
「ミナト…。それは危ないわ!存在がダメになるかもしれない組み合わせ!端的に言って最高よ!」
「あの持ち込み歓迎という張り紙に感謝だな!そのワインと
「ん。マスター!グッジョブ!!」
どうやら三人からの理解は得られたらしい。ミナトは店員にワインの持ち込みに関して確認した後、
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