第146話 これがハーレム展開か?
『第二夫人として頑張るのでよろしく!』
ブルードラゴンの長でありミナトにテイムされたことでミオと名付けられた美少女は間違いなくそう言った。ミナト、シャーロット、デボラの三人は驚くと共に一瞬だが固まってしまう。
「……………えっと…、ミオ…?ソレハイッタイドウイウコトデショウカ?」
いち早く活動を再開したミナトがカタコトになりつつも辛うじて状況確認をしようと試みた。
「ん?ボクがマスターの第二夫人!」
無表情で言い切るミオ。ミナトの傍らで殺気を纏った炎の魔力がゆらりと揺らいだような気がするが、そっちを見てはいけないような気がしたミナトはミオへさらに問いかける。
「いや…、そこを名詞で断言するのではなくて…、だ、第二夫人ってどういうこと?」
未だ冷静でいられないのか同じ質問を繰り返してしまうミナト。問われたミオは不思議そうに首を傾げる。
「ん?マスターはシャーロット様のパートナーと伺った…」
「そ、そうだけど…、それが…?」
確かにシャーロットがそう説明したような気がして思わず頷いてしまうミナト。
「男女で互いがパートナー…、それは
ビシッと指されながらそう断言するミオ。思わずミナトは赤くなる。異世界に来る前は三十九歳とかなりいい年齢だった筈なのだが、こちらに来てからは心が若い外見に引き摺られているのかリアクションも若くなっているらしい。
「つ、
泳いだ視線でシャーロットを見ると、彼女は顔を赤くして頬を両の手で押さえつつニマニマと笑みを浮かべていた。
「ふふ…、えへへ…、私とミナトが…、えへ…、えへ…、えへへ…」
シャーロットが嬉しそう、ということはミナトが嫌われてはいない…、というか好かれているらしいのでそれはそれで嬉しいと感じるミナトであるが今は戸惑うばかりである。
「だが強いオスは
そういって可愛らしいサイズの胸を張るミオ。
「ほーーーーう?」
背後からかけられた声にミナトは完全に固まる。本来なら危険を感じて回避の行動に移るところだが、一瞬で恐怖に足がすくみ上がり一歩も動けなかった。【保有スキル】泰然自若が全く機能していない。
「名を授けられたようだから我もミオと呼ばせてもらおう…。そなた…、この我を差し置いて第二夫人を名乗るとはよい度胸だ…」
そんなことを言ってくるデボラをミナトは辛うじて振り返りその姿を確認する。彼女の背後に…、ミナトは不動明王が纏うような地獄の炎を確かに見た気がした。
「ん?デボラはBarの従業員と聞いた。だからボクは従業員と第二夫人!」
なんてことはないといった風で無表情にミオが告げる。
「どうして我が従業員でそなたが従業員と第二夫人なのだ!?我とそなたは魔物の格としては完全に同格であろう!?そしてパートナーとして過ごした期間はシャーロット様の次に我の方が長い!この場合、我が第二夫人でそなたが第三夫人だろうが!」
デボラが堂々と第二夫人であることを宣言する。
「ん?そうなの?」
ミオがくりんとこちらを向いて確認してきた。
「どうなのだ?マスター!?」
デボラも追い打ちをかけてくる。
どう返答するか困るミナト。彼女が三人というラノベのハーレム展開を通り越して夫人の座を決める話になっている。ちょっと待ってほしいというのがミナトの本音だが、未だ幸せそうに体をくねらせているシャーロットとこちらを真剣に見つめているデボラとミオの前ではそんなことを言える状況ではない。【保有スキル】泰然自若は全く機能していないようだがミナトはマヒしそうになっている頭を必死に回転させて考える。
シャーロットは命を助けてくれてこの世界のことを教えてくれた恩人で大切な人である。そんなシャーロットが恋人というのはとても嬉しい。そんな彼女と将来的に結婚する…、そう考えて…、そこには何も問題がないことに気付くミナト。そしてデボラはとても頼りになるかけがえのない存在。ミオのことはまだよく分からないが可愛らしいとは思っている…。
『なんかひどい男みたいだけど、ここは異世界だ。この世界を楽しむって決めたのだし…、彼女たちと一緒であれば退屈するなんてこともないだろう。これからの人生が楽しいに決まっている。そうであれば…』
短時間で思考を巡らしもう全てを呑むことに決めたミナト。この世界の属性を司るドラゴンがあと四種類いることは意図的に頭から排除したのは秘密である。
「そうだね。みんなと一緒にいるとするなら…、ふ、夫人というのはちょっと早いかもしれないけどシャーロット、デボラ、ミオの順だね!」
「ん。マスターがそう決めたのであればボクに異存などはない。ボクが第三夫人!デボラが第二夫人!これからもよろしく!」
元から素直なのかテイムされているからなのか簡単に意見を翻意してミオがデボラに右手を差し出した。
「さすがは我のマスターだ!話が分かるし器が大きい!ミオに関しても認めてくれたことは我からも感謝する!ミオよ!こちらこそよろしく頼む」
デボラもそう言うとミオと握手を交わした。
『ふー。うまくいったみたい…。でもやっぱりドラゴン同士って本質的には仲がいいのかな…?』
心の中で大量に冷や汗を流しながらミナトはほっと息を吐いた。いろいろとなんとか丸く収まった筈なのだが、
「ん。それにしてもマスターは凄い。シャーロット様の横に並び立つことができた男の人…。そんな存在は聞いたこと…、いや、おそらくいかなる種族の歴史や伝承にも存在しない…」
「確かに…。シャーロット様を我がものにしようとして自ら滅びの道へと歩みを進めた者は枚挙に
ガシッ!!
デボラとミオの首根っこがシャーロットによって鷲掴みにされる。
「二人とも…、楽しそうなことを話しているじゃない?私にもくわーーしく聞かせてくれるかしらぁ…?」
デボラとミオの顔色があっという間に青くなる。ミナトはその光景から視線を外すことにした。
「ミナト!ちょーーーと三人で話をしてくるわね…?」
二人を引きずる様に移動を始めるシャーロット。
「ドウゾゴユックリ…」
ただそれしか言うことができずにミナトは三人の背中を見送るので精一杯である。
「あ!?
そしてもう一つの大事なことを思い出すのであった。
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