第142話 ステータスの再確認を1

「ん?この光…、そしてこの感じは…?それに力…?魔力がみなぎる…?」


 ブルードラゴンの長が柔らかな光に包まれつつそう呟く。


「「「「「おお…、こ、この力は…?」」」」」


 他のブルードラゴンたちも光に包まれながら驚いている。ミナトがレッドドラゴンをテイムした際に得た【眷属魔法】眷属強化マックスオーバードライブの効果だろう。


【眷属魔法】眷属強化マックスオーバードライブ

 極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。眷属化した存在を強化する。眷属を確認して自動発動。強化は一度のみ。実は強化の度合いが圧倒的なので種を超越した存在になる可能性が…。


 視線の先にはそんなブルードラゴンたちがいるのだが、ミナトはミナトでそれどころではない。こうなったからにはステータスを確認しなくてはいけないのだ。


「シャ…、シャーロット…、あの…、お、おれのステータスをお願いできる…?」


 狼狽えつつもミナトはシャーロットにステータスの表示をお願いする。


「ふふふ…、もちろんいいわよ!楽しみね!ステータス!オープン!!」


 美しい声が響き、それと同時にミナトの前に透明なプレートが出現する。かつて見たのと同じ光景、そこには次のような表示があった。



【名 前】 ミナト・ホシノ


【年 齢】 二十一


【種 族】 人族かな?


【攻撃力】 一〇〇


【防御力】 一〇〇


【俊敏性】 一二〇


【保有スキル】 泰然自若 火竜をきょうする者 水竜をきょうする者


【保有魔法】 闇魔法 Lv.MAX 

       転移魔法 Lv.SP 

       眷属魔法 Lv.SP

       収納魔法 Lv.SP



「これはアカンやつかもしれない…」


 ミナトはがっくりと肩を落として項垂れる。


「ミナト?ふふ…、どうだった?大丈夫?」


 レッドドラゴンをテイムした時は心配そうなシャーロットだったが今回は笑顔で聞いてくる。


「シャーロット…。今回もおれのステータスを見てくれない?デボラも!おねがい…、おねがいします…」


 そう言われてシャーロットとデボラはミナトのステータスを覗き込む。


「ミナト!また保有スキルが増えているじゃない!?今回は『水竜をきょうする者』ね。それに保有魔法も増えている…、おお!収納魔法よ!闇魔法で時空間を操るものだけが会得できるという伝説の魔法じゃない!?さーーーっすがミナト!!これまで以上にこの世界に覇を唱えることができそうね!!」


「『火竜をきょうする者』に『水竜をきょうする者』か…。マスターに相応しいスキルであろう!そして収納魔法とはまた規格外な…」


 無邪気に喜ぶ絶世の美女エルフと感心しながらも驚き御隠せていない絶世の美女ドラゴン。


「それでね…、また…、お、おれの種族が…」


 ミナトが種族の欄を指し示す。これまでは『きっと人族』と表示されていた箇所だ。なんだか凄く微妙な表現になっている。


「えっ?あ、ホントね!これも初めて見る表示だわ!これはもう受け入れるしかないわね…」


「ほう!このような表示があるのだな…。なかなかに興味深い…」


 真面目そうに答えるシャーロットとデボラであるが…、


「で、でも…、ふ、ふふふ、って…、ふふふふふ…」


「シャ、シャーロット様…、わ、笑っては…、マスターに…、く…、失礼…」


 二人とも笑いを堪えきれないようだ。ますますぐったりするミナトである。


「納得がいっていなさそうね?じゃあ超越者とかはどうかしら?」


「真なる魔王というのも相応しいと思うが…?」


「どっちも嫌です!」


 被せ気味に否定するミナト。するとシャーロットとデボラが不意に真剣な表情でミナトの手を握ってくる。


「大丈夫よ!前にも言ったでしょ?ミナトがどんな種族であっても私はこれからもあなたの側にいるから!」


「うむ。我も、我か世界が滅びるまで、我もマスターと共にあるぞ?」


 そう言って微笑むシャーロットとデボラ。そんな二人の笑顔に心から安堵するミナトであった。


「ミナト!前と同じようにスキルの詳細も見てみましょう!」


 そう促されてミナトはステータスが表示されているプレートの【保有スキル】に触れた。途端に画面が展開される。



【保有スキル】泰然自若:

 落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。


【保有スキル】火竜を饗する者:

 火竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。

 眷属化した火竜の能力も限定的に使用可能。

 火竜をもてなすことで火竜からの尊厳を得た者が得られるテイムスキル。

 もてなすだけではなく力量を示す必要もあり習得は非常に困難。

 テイムスキル【火竜を統べる者】の上位互換。


【保有スキル】水竜を饗する者:

 水竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。

 眷属化した水竜の能力も限定的に使用可能。

 水竜をもてなすことで水竜からの尊厳を得た者が得られるテイムスキル。

 もてなすだけではなく力量を示す必要もあり習得は非常に困難。

 テイムスキル【水竜を統べる者】の上位互換。



 ミナトは頭を抱えて天を仰いだ。【保有スキル】水竜を饗する者は火竜を饗する者と同様のスキルらしい。この世界の属性を司る伝説的存在であるレッドドラゴンとブルードラゴンを従える…、それがどれくらいヤバいことなのかは容易に理解できた。


「文字で見ると本当にすごいわね…」


「人族でこのようなスキルを身につける者がいるとは俄かには信じ難いであろうな…」


 シャーロットとデボラがしみじみと感心している。


 これまでもそうであったがもう決して他人に見せることができないスキルボードになってしまったと心で涙を流すミナト。


「ミナト!まだまだ!【保有魔法】も楽しみね!」


「さてどのような記載が見られるものか…」


 そう言われて思わず頭痛を感じるミナトであった。

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