第140話 魚介と野菜のアイオリ・ソース盛り合わせ
ミナトは魚介と野菜のアイオリ・ソース盛り合わせを作ると宣言し、料理へと取り掛かる。先ずはニンジン、セロリ、ブロッコリー、ジャガイモといった野菜を茹でる。全員分なので大量だ。セロリに関しては生でも問題ないと思ったが、今回はまとめて火を通すことにした。野菜に関してはある程度火が通った後、適当に盛り付けて貰えば問題ない。どうやら人化してメイドの姿をしたブルードラゴンさんたちが手伝ってくれるらしい。ミナトは喜んでいろいろと任せることにする。
次は干し鱈である。塩抜きした干し鱈も野菜と同様に今回は茹でることにする。この料理、具材は何でもよいのだが、真の魅力を引き出すのであれば干し鱈が欠かせない。
そしてもう一つ。ゆで卵も作ることにする。アイオリ・ソースにゆで卵。これは一つの王道だろう。
そうしてメイドさん達の助けを借り、アイオリ・ソースに合わせる具材の仕込みが完了しつつあるところを確認したミナトは真打であるアイオリ・ソースに取り掛かる。まずは大きな木製のボウルと王都のマルシェで手に入れた大量のニンニクを用意する。アイオリ・ソースとはフランスはプロヴァンスの言葉でアイ(ニンニク)とオリ(油)からきている。ニンニクがなければ始まらない。
「もとの世界であれば、皮むきが面倒とか、すり潰すのが大変とか言っていたかもしれないけど、この世界ではそのあたりは簡単に…、
その瞬間、ミナトの右手から漆黒の鎖が出現した。うにょうにょと生き物のように蠢く漆黒の鎖が木製のボウルの内側を覆い、そのボウルの内側で有機的な回転運動を始める。木製のボウルの内側がミキサーのように回転していると言えばよいのだろうか…、正直言って気持ちが悪い動きである。しかしミナトはそんなことは気にすることもなく漆黒の鎖が蠢く木製のボウルへ丸のままニンニクを投入する。
シュパン!
生物の目で追える速度を超えた漆黒の鎖がニンニクの皮や乾燥した根などの不要な部分だけを弾き飛ばした。その次の瞬間、ニンニクは細切れになり息つく暇もなく粒などは残らないほど滑らかな状へとすり潰された。それを確認したミナトは次々にニンニクを木製のボウルへと放り込む…。ほどなくして木製のボウルは滑らかにすり潰された大量のニンニクで満たされる。それでも漆黒の鎖は止まらない。ニンニクをすり潰し続ける漆黒の鎖が蠢くボウルへミナトは卵黄、塩、胡椒を立て続けに放り込んだ。
「あとはこれを少しずつ…」
そう呟きながらミナトは漆黒の鎖がニンニク、卵黄、塩、胡椒を撹拌し続ける木製のボウルへ少しずつオリーブオイルを投入する。ここで焦ってはいけないが、撹拌は漆黒の鎖が半ばオートで対応してくれている。ミナトは投入するオリーブオイルに集中することにした。そうしてある程度オリーブオイルを投入するとマヨネーズのようなクリーム状のソースが完成する。
「上手くできた!これがアイオリ・ソース!」
笑顔でミナトがソースの完成を宣言する。そして次々とアイオリ・ソースを増産した。
「ミナト!食材の盛り付けは出来ているわよ!」
シャーロットが声をかけてくる。ミナトは手ごろなやや深めの皿を貸してもらい、そこにアイオリ・ソースを取り分けて皆へと配った。全員がミナトへと注目する。
「この料理は魚介と野菜のアイオリ・ソース盛り合わせ!おれの元の世界にあるフランスという国の料理です。おれのいた日本という国にマヨネーズっていうこれとよく似たソースがあってそれがこの世界にはなくて尚且つ美味しいってことをシャーロットとデボラから聞いていたので、マヨネーズに似ていてもっとワインに合うソースであるこのアイオリ・ソースを作ってみました。茹でた干し鱈とか野菜につけて食べてみて!お酒はとりあえず白ワインがいいと思います!」
ミナトの言葉にその場に集まった者達全員の目が輝く…、と同時に次々と大量のグラスに白ワインが注がれ素早く全員へと行きわたるのだった。
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