第116話 領境の関所
デボラからシャーロットが発動したという魔法の話を聞いたミナト。
『と、とりあえずその
念話でシャーロットに聞いてみる。
『も、もちろんよ!な、何を言ってるのよミナト!わ、私が魔力制御に失敗するなんて…、あ、ありえないわ…』
シャーロットにしては珍しく歯切れが悪く視線も泳ぎ気味だ。
『シャーロット様…。正直に世界の秩序が崩壊する一歩手前までいったとマスターに説明しては…?』
ジト目のデボラが言ってくる。
『デボラ!?な、何を…、ちょ、ちょっと何を言っているのかよく分からないわ…』
語尾が消え入りそうになっている。これ以上は追及しないことにしようと思うミナト。
「シャーロットが決断したならそれが正しいことだったとおれは思うよ」
言葉に出してそう伝える。
「さすが!ミナト!大好きよ!」
とびっきりの美しい笑顔でシャーロットがミナトの腕にひっつく。
「おっとシャーロット様!抜け駆けはよくないのだぞ!」
デボラが神速で移動し反対側の腕にくっついた。
『いい…』
と心の中で呟いてしまう…。このまま【転移魔法】
「え、えっと、モーリアンさんに騎士達の無事を知らせに行ってくるよ。領境の関所で会おう!」
まだ騎士達はミナトの姿に気付いていないが、馬車を追っていったミナトがここにいるのはちょっとよくない。
「分かったわ!またね!ミナト!」
「我らのことは問題ない!道中気をつけて!マスター!」
その言葉と共にミナトの腕を放してくれる二人。ちょっともったいないと思うミナトだが二人に頷くと
無事に馬車の上へと転移してきたミナト。転移魔法が光などを発することはないし、
ミナトは関所に到着するまで馬車の上で静かにしていることにした。程なくして馬車は関所の門前に到着する。領境には柵が張られておりこの先に進むにはこの門を越えていく必要があるらしい。関所というか要塞には明かりもなく静まり返っているように見えた。まだ夜明けには時がある、通常通ることが出来るのは日中だけなのかもしれない。そんなことをミナトが考えていると、
「開門!ミルドガルム公爵ウッドヴィル家先代公爵モーリアン様の馬車である!開門!開門!」
馬車に馬で並走していた騎士が声を張り上げる。途端にサーチライトのような強烈な明かりが要塞に灯りモーリアン達が乗っている馬車や並走してきた馬上の騎士を照らし上げた。
「モーリアン様の馬車であるというならその
音響の魔道具なのか増幅された声が響き渡った。確かに…、とミナトも思う。騎士の数も到着の時刻も事前の報告とは異なっている。
『警戒はするよね…』
そう心の中で呟きながらミナトはそっと馬車から降り付近の森に潜んだ。タイミングを見て姿を現す予定である。
『さて…、
少し興味があるミナト。
護衛の騎士は懐からコインのようなものを取り出し掲げてみせる。
『コイン…?確かそんなものを貴族の名代とかの証にするって設定がどこかのラノベにあったっけ…』
そんなことを思っていると騎士が掲げたコインに向かって紫色の光が放たれた。
『あれって…?』
ミナトの目にはレーザーのようなものによる認証確認に見える。しばし待つと…、
「確認しました!このような時刻の到着とその少数の騎士に警戒してしまったこと申し訳ありません!開門します!」
巨大な門が開き始める。ここがタイミングだと考えたミナトは
「ミ、ミナト殿?」
「ど、どこから…」
「我等、全速で馬を走らせたのですが…」
刺客を圧倒したミナトにここに居並ぶ騎士達は一目置いてくれているらしい。
「えっと…、それに関しては冒険者の秘密ということでお願いします…」
そう答えてミナトは軽く頭を下げる。
「おお!ミナト殿!護衛ご苦労!」
馬車の小窓が空きモーリアンが声をかけてくる。少しだけ離脱をしていたことを秘密にするのは心苦しいが、ミナトはモーリアンに頭を下げて報告する。
「広場に残って魔物達と戦闘を行ったパーティメンバーから連絡を貰いました。騎士達に負傷者はいますが死者はゼロとのことです」
周囲の騎士達から歓声が上がる。
「それは重畳!では儂らはこの関所にて皆を待つことにしよう。すぐに補給の部隊を編成する。ミナト殿!貴重な情報に感謝する!」
やっと晴れやかな表情を見せるモーリアン。その表情を見ることができてミナトも安心するのであった。
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