第112話 闇魔法は結構強めで対応する
シャーロットやデボラが魔物の群れに対峙している一方でミナトは【闇魔法】
その馬車にはヴィシスト侯爵家の次男であるアラン=ヴィシスト、ウッドヴィル公爵家の先代当主であるモーリアン=ウッドヴィル、ウッドヴィル公爵家当代の長女であるミリム=ウッドヴィルが乗っている。
この段階でミナトの索敵能力は前方で待ち伏せしている刺客達の気配を捉えていた。その距離およそ一キロメートル。闇魔法Lv.MAXのミナトにとって魔力を持つ者の気配を感じることなど容易いことだ。そして待ち伏せしている刺客達の魔力にミナトは知っている魔力があることを確信する。
『これは…、前にモーリアンさんを襲った黒装束の連中だ…。あの隊長もいる…。バルコニーごと地面に叩き落したはずなんだけど…、頑丈なのかな…?…とりあえず先行して無力化だ!!』
心の中でそう呟いたミナトは一気に速度を上げ馬車との距離をあっという間に広げると、夜の森の中、刺客達が潜んでいる茂みを容易に特定する。街道の両側それぞれに刺客が五人ずつ配置されていることが分かった。その瞬間、ミナトはその片側へと飛び込む。ちなみに半径一キロ四方にここで待ち伏せしているもの以外の剣呑な魔力を感じさせるものがないことは確認済みだ。
【闇魔法】
【闇魔法】
全ての音や生命反応を感知不能にする透明化に加えて
そうしてミナトはお馴染みの闇魔法を放つ。今回は結構本気である。
「
【闇魔法】
至高のデバフ魔法。対象の能力を一時的に低下させます。低下の度合いは発動者任意。追加効果として【リラックス極大】【アルコール志向】付き。お客様に究極のリラックス空間を提供できます。
今回デバフの対象となるのは刺客たちの意識と耐久性も含めた身体能力。魔法のレベルはたった一の差であってもそこには威力に天と地ほどの違いがあるという。その世界において闇魔法Lv.MAXのミナトが結構本気で使ったらどうなるか…。
五人の刺客が一斉にその場に崩れ落ちた。完全に意識を失っている。著しく低下した身体能力のために崩れ落ちた拍子に足や腕を骨折した者もいるようだ。そんなことを気にも留めないミナトは、
「
そう唱えるとミナトの足元から出現した鎖が五名の刺客を一息に拘束した。
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
この時点になって反対側に待機していた刺客たちも仲間の異常に気が付いたらしいが既に遅かった。ミナトは既に反対側…、隊長らしき者がいる側に移動している。
「
ミナトの詠唱を彼らは聞くことが出来たであろうか…。
結果として、ミナトが想像した以上にあっさりと刺客たちは無力化された。馬車が後方から迫ってくる。
『さて…、どうしよっか…。この連中が口を割るとは思わないけど、ウッドヴィル領に連行して取り調べを受けさせるのがきっと最良の判断だよね…』
そう考えたミナトは
『たぶんこういうことが出来るはず…、
無詠唱でそう唱えられた結果、刺客たちの首へ首輪の形で漆黒の鎖が巻き付き、
『これでこの連中はスキルも魔法も使えない…。馬車が到着するまでに拘束してしまおう…』
ミナトがいそいそとロープで刺客たちを拘束している途中、モーリアン達を載せた馬車の隊列が追い付いてきた。十人もの黒装束が倒れている状況を目の当りにし驚いた先頭の騎士が合図を送ると隊列がその足を止める。
「そ、そなたは…、た、確かF級冒険者のミナトか!?なぜ我々の先にいる?魔物の出たあの広場にいたのではないか?そ、その者達は!?」
先頭を走ってきた騎士が大声を張り上げる。
「この者達が刺客です。もう周囲に脅威はありません。折角だから拘束するのを手伝ってくれませんか?」
穏やかな声色と共に、ゆらり…、とミナトの体内で膨大な魔力が揺らぐ…、と同時に馬上の騎士は顔面蒼白となった。彼は上級騎士であり魔法の心得がある。ミナトの魔力を感じた騎士はミナトの実力が…、おそらく彼の実力がA級冒険者のティーニュを遥かに凌ぐことを瞬時に理解した。心の中で今更ながらにモーリアンやミリムの言っていたことが事実であったと痛感する。
「わ、分かった…、モ、モーリアン様に…、か、確認し対応に当たることにするが…、そ、それでよいか?」
青ざめた顔はそのままに、なんとか絞り出したその言葉にミナトは笑顔で頷くのであった。
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