第108話 領都アクアパレスで待つもの

 ウッドヴィル公爵家の当主であるライナルト=ウッドヴィルから依頼を受けた数日後、ミナトはシャーロットとデボラを連れて冒険者ギルドを訪れていた。実際の地図でアクアパレスの場所を正確に確認することにしたのである。


 冒険者ギルドの資料室で地図を探し、ルガリア王国の版図をまとめた地図を見つけることが出来た。そしてミルドガルム公爵領の領都であるアクアパレスの位置を確認しているとシャーロットが突然声を上げたのだ。


「ここ!?ここって!?………そうね…、地名が変わっていてもおかしくないわ…。デボラ!これを見て!アクアパレスのここ!この湖!これって神秘の湖ヴィナスハートレアじゃない?」

「その名を聞かなくなって久しいが…、ん…?た、確かに…、…っと、ということはアクアパレスとは古都ガーライのことであったか!?」

「そうよ!水の都…、古都ガーライ…、懐かしいわ…。そういうことになると…、デボラ!!」

「そういうことだな?シャーロット様!!」


「「あの子(あやつ)に会いに行きましょう(行こうではないか)!!」」


 突然ものすごく盛り上がる二人に完全に置いて行かれるミナト。


「あ、あの…、ふ、二人とも…?誰に会いに行くって…?」


 おそるおそるミナトは訪ねる。この二人がミナトを連れて会いに行くことを喜ぶ存在といえば…。向かい合って盛り上がっていた二人は同時にぐりんとミナトの方へ顔を向けた。


「ミナト!この依頼は受けて正解だったわ!アクアパレスって街が古都ガーライだとは知らなかったの!」

「うむ!まさか街の名前がこのように変わっていたとは…。人族や亜人における時代の変遷とはこのようなことが起こったりするのだな…。しかしこれは僥倖!いつかはここを訪ねなくてはとシャーロット様と話してはいたのだ!まさかこのような形で訪問できるとは!!」

「そうよ!とっとと依頼を終わらせてあの子に会いに行きましょう!」

「我も俄然やる気が出てきたぞ!早く依頼を終わらせるために全力を注ごうではないか!」


 とても嬉しそうに語り続ける絶世の美女二人。ミナトも大体察することができたが念のために聞いてみる。


「えっと…、ここに行って会うのって…?たぶん…」


「「ブルードラゴンよ(だ)!!」」


 素晴らしい笑顔で断言された。


「ブルードラゴンはこの世界を司る六つの属性、火、水、風、土、光、闇の中、水を司るドラゴンね。ここ神秘の湖ヴィナスハートレアの地下には水のダンジョンが広がっていてその最下層には水の樹があるの。そこがブルードラゴンの里なのよ。あの子たちも独自のお酒…、確かほんのりワインに似たちょっと変わった味のお酒を造っていたからきっとカクテルに役立つわ!ついでにあの子ブルードラゴンたちを全員テイムしちゃって真なる魔王への道へ一直線よ!!」


 ほんのりワインに似たちょっと変わった味の酒…、その酒にミナトは心当たりがある。もしミナトの思う酒であったら絶対に手に入れなくてはならないものだ。


「真なる魔王は余計だけど、そのお酒には興味があるな…。よし…、依頼が終わったらブルードラゴンに会いに行くとしますか!!」


「「おお~!!」」


 普段は人の寄り付かない冒険者ギルドの資料室はこの日、妙に賑やかだった。


 そういった経緯でシャーロットもデボラもうきうきと護衛の旅路を楽しんでいたのだが…、


『ミナト…、気付いている?』

『マスター…』


『ああ、どうやらお客さんみたいだね…。どうするつもりなのか…』


 ミナトたちの索敵能力に魔力を持った一団が引っかかったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る