第98話 護衛の不信は気にしない
ミナトはシャーロットにウッドヴィル公爵家から冒険者ギルドを通して護衛任務の依頼があることを話す。
「護衛って誰を護衛するの?」
「この書状によると複数の冒険者パーティに依頼が出されるらしい。おれ達三人はそんなパーティの一つってことで…。そして詳細は冒険者ギルドの大会議室で説明を受けることになる…。最終決定はその場で下していいらしいけど、辞退する場合は契約魔法で他言無用であることを契約させられるって…。そういえば契約魔法って何だろう?大体想像がつくけど…」
ミナトも元の世界で結構ラノベを読んでいた方である。契約魔法がどんなものかは想像がついたが、
「光属性の魔法の一つね。肉体と精神に働きかけて契約内容を順守するようにその対象の行動を縛ることが出来る魔法よ」
シャーロットが説明してくれる。それにしても自白を強要する魔法や契約魔法…、どうも光属性という名前にしては物騒なものが多いと感じるミナトである。
「ミナト…?どうせまた光魔法は物騒だとか思ってるんでしょ?この前も言ったけど光といってもこの世界を司る六つの属性の一つでしかないんだからね?」
お見通しのシャーロットがそう言ってくるがミナトよりもそれに素早く反応するものがいた。
「最も高貴とされる光属性魔法の価値を理解しないとは…。所詮は下級の冒険者風情といったところか…」
そう呟いたのは斥候役をやっていたらしい男。呟きの筈だが丸聞こえである。聞こえるように言ったのだろう。シャーロットはキョトンとした表情を浮かべ、ミナトも首を傾げる。
『ミナト!私、なにか変なことを言ったかしら…?』
『さあ?でもこの人は光属性が他の属性より価値があるように感じているみたいだよ?』
『ミナトも火の大樹を見たじゃない?世界にはあれと同じような大樹が他の属性分あと七本あって相互にこの世界を支えているわ。各属性が平等なんてあたりまえじゃない?』
『いや…、火の大樹の存在を知っている人族はおれだけのような気がする…。そんなおれもたぶん人族だけど…。どこかの宗教とかで光属性は大事とかって教えているんじゃないかな?』
『そう言われればそうかもしれないわね。どこのどいつかしら…、そんな間違った知識を与えているのは…』
キョトンとした表情のままだが念話ではシャーロットがプンスカしているこことが伝わってくる。眼前のキョトンとした表情も可愛いが、プンスカ怒っているときもまた美人である。斥候っぽい男のことなど気にしていないミナトはどちらのシャーロットも捨てがたいなどと思っていた。
「控えなさい、レイエス。このお二人とデボラ殿は魔法を扱い五体のジャイアントディアーを斃すことが出来るほどの冒険者です。そして今回のことはウッドヴィル家の決定です」
執事のガラトナがレイエスと呼ばれた斥候役を
「五体のジャイアントディアーをF級冒険者が…」
「控えなさいと言っている…」
食い下がる斥候役にガラトナが再度言い放つ。魔力を感じることが出来るミナトには執事からゆらりと立ち上る魔力が見えた。レイエスも何かを感じたのだろう。真っ青な顔で押し黙った。
「護衛の者が無礼を働き申し訳ありません」
頭を下げる執事にミナトは気にしないことを伝える。
「それで…、この書状によると冒険者ギルドでの説明は二日後ってことですか?」
「申し訳ありません。書状の内容は私どもには全く知らされておらず…。ただ書状の内容に嘘偽りはございません」
その言葉にミナトは頷く。
「分かりました。では二日後に冒険者ギルドに向かうことにします」
「畏まりました。主にもその旨お伝えさせて頂きます」
深々と頭を下げるガラトナ。そうして辞去する頃合いと考えたのかガラトナが立ち上がるとレイエスもそれに続く。
「休日の遅い時間にもかかわらずお時間を頂き誠にありがとうございました」
そう挨拶するガラトナの傍らで、苦虫をかみつぶしたような表情で頭を下げるレイエス。ミナトもシャーロットも既にレイエスと呼ばれた男のことは気にしていない。
ミナトとしては二日後の冒険者ギルドでどんな説明があるのかが気になっていた。
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