第62話 黒装束の暗殺者
「さてと…」
そう呟きつつシャーロットの背中から視線を外すミナト。眼前にはどこかの建物の屋上で見事なまでに意識を無くした暗殺者たち四人が転がっている。
「
ミナトは発動している
「あれ?この感じってデバフだけじゃなくてバフも施すことができるんじゃ…」
破格の性能を持つ闇魔法の
「ま、それは後でシャーロットに確認してもらうとして…、とりあえずデバフは解除して…、…おっと、もう目を覚ます?
ミナトの言葉と同時にミナトの姿がその場から消える。
姿を消したミナトの目の前でゆっくりと四人の暗殺者たちが起き上がる。どうやら状況をうまく把握できていないようだ。その戸惑う様子にミナトは納得の表情を浮かべる。
『これから暗殺対象に襲い掛かろうとした時に全員が仲良く意識を失ったからね…。戸惑うのも当然か…』
そう思いつつ暗殺者達との距離を詰め会話を聞こうとするミナト。
「………隊長、何が起こったのですか?」
最も小柄な黒装束らしいものを纏った者が同じく黒装束を纏った最も大柄な者へと問いかける。その声質は男のものだ。残りの二人はその小柄な男の傍らに控えるように待機している。
『様子から察するにあの小柄な奴が副隊長かな…』
ミナトはそんなことを思っている。実は四人とかなり接近しているが誰もそのことに気付かない。
「意識を失っていたか…」
大柄な黒装束の男がそう言葉を漏らす…、と同時に周囲に鋭い視線を飛ばして状況を確認する。当然、その飛ばした視線の中の一つは真正面にミナトを捉えていたのだがそのことに気付いた者は誰もいない。
「周囲に我等以外の気配はない…。だが全員が同時に意識を失ったということは何らかの攻撃を受けたのだろうな…。今回の作戦が何者かの介入を受けたということだろう…」
それを聞いた暗殺者たちに驚きの表情が浮かぶ。
「…しかし何をされたのですか?我らは状態異常無効の魔道具を身に着けています。意識を失うなどと…」
「分からん。だが対象を取り逃がした。我等の作戦を快く思わない者がいたのであろうな…。だがそうであれば我等が生きていることが不思議ではある…。完全に意識を失っていた…。殺すことは容易かった筈だが…」
隊長と呼ばれた者も困惑しているようだ。
「如何いたしましょう?対象を追いますか?」
そう問いかける副隊長らしい小柄な男に隊長は首を振る。
「いや…。作戦は中止する。このような状況では一旦引くのが我等の流儀。事前の計画通りのルートで退却!日の出と共に合流する」
「「「了解!」」」
その言葉と共に四人の暗殺者たちが全員別々の方向へと散ってゆく。
「なかなかの指揮系統だ。全員が訓練されているって感じだよね。じゃ、隊長さんに案内してもらおうかな…」
誰にも聞こえない呟きと共に隊長を追うミナト。その姿に気付けた者はこの世界には存在しなかった。
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