第55話 トレントの取り扱い

 気絶している冒険者達とその依頼主らしい女性はとりあえず放置してミナトとシャーロットはエンシェントトレントをどう扱うかを話しあう。


「エンシェントトレントは全部頂くことにするわ」


「いいと思うけどシャーロットのマジックバッグって家一軒分くらいの容量だっけ?大丈夫かな?」


「大きさを考えて真っ二つにしてから横に四つに斬り分けて八分割。八分の一くらいならマジックバッグに入るし、どんな建材にも使えるでしょ?あとはここに隠すことにするわ。使える魔法を思い出したの!」


「おれの世界には短い材木を繋ぎ合わせる技術があった。木材の性質が同じならきっとこの世界にもあると思うからその辺りは問題にならないんじゃないかな」


 ミナトは元居た世界のテレビで観た宮大工の人々がやっていた継ぎの技術についてなんとなくであるがシャーロットに説明する。


「へー。ミナトの世界の職人って凄いわね」


「おれも完全には分からないけどとても巧みな技術だと思ったことを覚えている」


「それなら大丈夫ね!よし…、先ずは風刃斬ウインドカッター!!」


 あっという間にエンシェントトレントの巨体が八分割に分断される。枝は残されたままだ。


光の壁ライトガード!!それと氷の棺フリージングコフィン!!」


 シャーロットがそう唱えると八分割されたエンシェントトレントの内、七つが金色の膜で覆われ、さらに氷で覆われる。


「シャーロット?これって?」


「どう?ミナト!光の壁ライトガードが護りの魔法なの。それで表面を保護して氷の棺フリージングコフィンによる魔法の氷でコーティングする。温度は五度くらい。時間経過はこの魔法の特性で止めることができるわ。これで当分の間は傷んだりしない」


「そんな便利なことが…?」


「ふふ。すごいでしょ?そしてこっちの一個はマジックバッグに入るっと!」


 シャーロットが一つをマジックバッグに収納する。


「そしてこっちは隠す分…、この魔法も久しぶりね…、底なし沼マレ・サンス・フォン!」


 詠唱が響くと七つのエンシェントトレントの素材が地面へと吸い込まれてゆく。


「ミナト!とりあえずここにこうやって保存しましょう!ミナトの転移魔法|<テレポ>があればいつでも取りに来れるわ!」


「なるほど…。さすがはシャーロット!賢いっていうか魔法が凄すぎる!!」


「どう?凄い?もっと褒めて敬ってもらっていいのよ!!」


 可愛くポーズを決めて胸を張る美人のエルフ、そしてその姿を奇麗だと思うミナトはいつもの調子であった。


 そうして二人はエンシェントトレントの素材を大量に手に入れる。またエルダートレントに関しては人数比のみを考えその素材の三分の一を頂くことにした。


「全部奪って遺恨を残す気もないけど、わざわざ起こして話し合う程、私たちは優しくはないわ!」


 とはシャーロットさんの言葉である。


 そう言っていたシャーロットは死なれたら寝覚めが悪いということで時限式である守りの結界を冒険者達に張り、二人はその場を離れるのであった。


 そうそう、商業ギルドの依頼のために帰り道で小さ目のトレントを三体、シャーロットが頭部のみをその精密な火魔法で焼き、ミナトが幹を斧で斬り倒すことで討伐した素材を提出した。ミナト達にとっては中途半端な素材であるがそれでも商業ギルドマスター喜んでいたのでよかったことにする。

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