第51話 商業ギルドの依頼
「やっぱりこうなったか…」
「仕方ないわよ。王都で店を開くのであれば商業ギルドとの関係は大事にしないとね」
森の中を歩きながらそう話しているのはミナトとシャーロット。ここは王都から東へ数日歩いたところにある大森林。この森の奥地でミナトはこの世界に転生され魔熊に襲われると同時にシャーロットと出会った。ミナトとしては忘れられない森である。
なぜこのような場所にいるかというと…。結局のところ商業ギルドのギルドマスターからの依頼を断れなかったのである。ちなみに
その予定をすべて狂わせたのがギルドマスターからの依頼である。それが、
「東の大森林でトレントが大量に発生しているのでその素材を回収してほしい。マジックバッグはこちらで用意する」
というものだった。
何でも今二人が歩いている東の大森林で魔樹とも呼ばれるトレントという魔物が大量に発生しており冒険者ギルドからは討伐依頼が出されているらしい。確かに周囲にはちらちらと他の冒険者パーティの姿を認めることができる。
ミナトがシャーロットから聞いた話によるとトレントはミナトがラノベの知識で得たものとほぼ同じらしく樹木の魔物であった。この世界のトレントは再生能力が高いことが特徴であると同時に炎に弱い…、なので冒険者達は森に延焼が広がらないよう樹木の少ない一角などに誘導して火矢や松明を使って討伐することが多いそうだ。その結果として得られるトレントの魔石はなかなかの報酬となるらしい。
しかしその討伐方法ではトレント本体は燃えてしまう。実はトレント本体が燃えていない場合、その魔物の素材は木材として非常に優秀な性質を持っているとのことだ。木材を扱う商会などでは高値で取引されるらしい。そんな経緯で冒険者ギルドでは常にトレントの素材回収依頼が出されてはいるのだが、素材が持ち込まれることは決して多くないのだという。再生能力の高いトレントを燃やさずに討伐するのは高ランクの冒険者パーティでも面倒な討伐方法と言われている。いくら高値といってもそれができる高ランクの冒険者パーティはそれ以上に稼ぐ方法を知っているので率先してそのような討伐は行われていなかったとのことだ。
「なんでそんな依頼をおれ達に…。完全に力量を計られているよね…?」
「だと思うわ。ま、適当に狩りましょう。ミナトの闇魔法なら簡単よ?」
笑顔でシャーロットに言われて頷くミナト。
「そうだね…。商業ギルドへは一、二体を持ち帰って…。シャーロット?トレントの素材ってそんなにいいものなのかな?」
「ええ。高級な木材と言えるわね」
「だったら店の内装用に狩っていこうか!?売ってもいいお金になるっていうしね?」
「いい考えだと思うわ!『火のダンジョン』のルビーも私が思っていた以上の価値だったもの!同じように使えるかもしれないわ!」
東の大森林に来る少し前、ミナトとシャーロットはアルカンとバルカンに会いに行った。物件が手に入ったことを報告ついでに商業ギルドの依頼を受けたためグラスや道具類の確認が遅れることを謝罪に行ったのである。その時、『火のダンジョン』で他に何か見つけなかったかと聞かれてサラマンダーから得た大きめのルビーを一つ見せるとアルカンとバルカンの目の色が変わった。
ミナトが『火のダンジョン』で斃しまくった
「「儂らの報酬はこのルビーと店が完成してからのカクテルで頼む!!」」
そう力強く言われたミナトとシャーロットは持っていても仕方がないので大量のルビーを二人に渡した。アルカンとバルカンはその量に驚くと共に貰い過ぎだと言ってきたがミナトは返品を固辞。その結果、
「「絶対に最高のグラスと道具を揃えてみせるからな!!」」
そう宣言されていたのだった。
「トレントも同じようになるといいな」
「そうね。そうなったら最高ね」
そんな話をしながら歩みを進める。しばらくして大森林のそこそこ深い場所まで到達する。
「この辺りならいいトレント…、の上位種とかがいそうだけど…」
「シャーロット…。上位種って…?」
ミナトがシャーロットの言葉に反応したとき、助けを求める女性の悲鳴が二人の下に届くのだった。
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