第49話 種を超越した存在
「これは…、この力の奔流は…」
レッドドラゴンの長は光に包まれつつそう呟いた。体内に圧倒的なまでの魔力量を感じる。これまでの自身が持っていた魔力量とは比較にならない大きさである。その夥しい魔力量に不安と恐怖を覚えるが不思議と不快感はない。
魔力の高まりと共に身体に変化を感じる。本質は同じままに存在そのものが書き換えられるような不思議な感覚。
『汝の名は?』
唐突に頭に声が響いた。女性のもので声質は穏やかである。
「何者だ!?」
周囲を見渡す。ここはレッドドラゴンの里にある建物の一角で周囲にはミナトやシャーロット、他のレッドドラゴンが居た筈なのだが周囲には誰もおらず何も見えず他者の気配を感じることもできなかった。
『汝の名は?』
重ねて問いかけられる。レッドドラゴンの長はこの現状はミナトが自身に付けてくれた名を問われているのだと判断した。
「我が名はデボラ…。レッドドラゴンの長にしてミナト殿の眷属…、
輝きが収まる…。そこには先ほどと変わらない姿のレッドドラゴンの長、改めてデボラが立っていた。
「特に…、変わっていない…、のかな…?」
ミナトが呟く…、と同時にそれはないだろうと心の中で自身の言葉を否定する。
「あー、ミナト…。これは凄いことになっているわよ…?」
シャーロットが即座にミナトの希望的観測を否定する。
「凄いこと…?」
「先ず種族が変わっている。あの子はレッドドラゴンの長だった。つまり種族はレッドドラゴンだったのよ。だけど今は…」
「い、今は…?」
聞いてはいけないことのような気がするミナトであるがついシャーロットに回答を促してしまう。
「今の彼女は『
「そ、そうですか…」
ミナトは相槌を打つので精一杯だ。
「それに伴って魔力量が桁違いに大きくなっている。身体機能やブレスの威力もとんでもなく強化されているみたいね。それと魔法が使えるようになったみたい。魔法は火属性の魔法のみらしいけど私と同じくらいには使えるみたいね…」
「えっ!?」
ミナトは心底驚く。シャーロットの魔法はこの世界を司る属性、火、水、土、風、光、闇の六つの属性の内、火、水、土、風、光の魔法が使えレベルは全て八の筈である。
「シャーロットと同じくらいって凄いよね…?」
恐る恐る問いかけるミナト。
「かつて存在した魔王であってもこのステータスと魔法のレベルを考えると一対一で勝ち切るのは難しいわね。深手を負ってギリギリの辛勝か悪くて相打ちといったところかしら?」
「魔王とほぼ互角?」
「ま、ミナトの眷属として相応しい存在になったって感じかしら?」
「人族の眷属としては過剰に凄すぎる!!それに…?その…、魔王ってとんでもなく強いんじゃ…?」
「ミナト!あなたは闇魔法 Lv. MAXなのよ?体は人族のままだから身体的な耐久力とか弱いし、状態異常への耐性とかが脆弱だけど、攻撃力だけならあの時の魔王なんて指先一つよ?」
純粋な攻撃力なら私よりも上、防御の方も
そんな二人のやり取りを見ていたデボラがこちらへと向き直る。
「主殿!この
そう言って跪く。
「デボラ!待って!眷属になったのは事実かも知れないけど、できればシャーロットのように普通に接してほしいのだけど頼めるかな?」
「主殿がそう言うのであればそのように善処しよう」
そう言ってデボラが立ち上がる。
「主殿って呼び方も何とかならないかな?」
「ふむ…。しかし、主殿は主殿であるからな…?」
デボラが考え込む。そこでミナトは彼女にBarで働いてもらう予定であることを思い出した。
「デボラ!働いてもらう予定のBarでは店主のことをマスターって呼ぶんだ。だからおれのことはマスターと呼んでくれ!」
「主殿!承知した。これより主殿のことをマスターと呼ばせて頂こう。我が一族であるレッドドラゴンは全てその呼び名で呼ばせて頂く!」
「ああ、それで大丈夫!」
そう応えると背後からレッドドラゴンたちの歓声が上がった。長の進化とミナトの眷属化を歓迎しているらしい。
「それにしてもおれとシャーロットとデボラが働くBarか…」
「そのBarから世界に覇を唱えることは十分可能といえるわね!」
嬉しそうなシャーロットからそう言われるが、とりあえずそういったことはしないようにしようと固く心に誓うミナトであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます