第46話 おもてなしの効果1

「あなた!!レッドドラゴン達をテイムしているわ!!」


「へ!?」


 唐突なシャーロットの言葉に変な声が出る。出会った魔物と戦った後に仲良くなるのはテンプレだとは思うミナトであるがそれを素直に受け入れる心の準備はしていなかった。光り輝くレッドドラゴン達はいつのまにかミナトの前にひざまずいている。


「テイム?」


「そうよ!見て!」


 そう言うとシャーロットはミナトの背後に立ちその肩に手を置く。青白い光がシャーロットの周りに集まり始めた。


「ステータス!オープン!!」


 美しい声が響き、それと同時にミナトの前に透明なプレートが出現する。かつて見たのと同じ光景、そこには次のような表示があった。



 【名 前】 ミナト・ホシノ


 【年 齢】 二十一


 【種 族】 きっと人族


 【攻撃力】 一〇〇


 【防御力】 一〇〇


 【俊敏性】 一二〇


 【保有スキル】 泰然自若 火竜をきょうする者


 【保有魔法】 闇魔法 Lv.MAX 

        転移魔法 Lv.SP 

        眷属魔法 Lv.SP



「こ、これは…?」


 ミナトは息を呑んだ。


「ミナト?大丈夫?」


 少し心配そうなシャーロットの顔が相変わらず近い。そのことを嬉しく思う余裕もないミナトは辛うじて言葉を口に出す。


「シャ、シャーロット…。こ、今回もおれのステータスを見てくれないかな?お、おねがい…、おねがいします…」


 そう言われたシャーロットはミナトのステータスを覗き込む。


「あ…、ミナト!保有スキルが増えてるじゃない!?でも『火竜をきょうする者』ってどういう意味かしら?でも跪いているレッドドラゴン達はミナトに従うみたいよ?よかったじゃない!それに保有魔法も増えている!?てっ、転移魔法!?転移魔法って私も使えない伝説の魔法じゃない!?さっすがミナト!!眷属魔法っていうのはちょっと分からないけど、これだけあればこの世界に覇を唱えることができそうね!!」


 無邪気に喜ぶ絶世の美女エルフ。


「あ、あの…、シャーロット…、お、おれの種族が…」


「えっ?あ、ホントだね!こんなの初めて見るわ!あー、まあ…、でもしょうがないんじゃない?レッドドラゴンを従えて、闇魔法がLv.MAXで転移魔法まで使える存在は人族とは言えないもの!」


 そう答えながらもシャーロットは笑顔になる…、いやそうではない、どうやら笑いを堪えているらしい。


「で、でも…、ふ、ふふふ、きっと人族って…、ふふふふふ…」


「いや…、そんな反応をされてもね…」


 ぐったりするミナトである。


「もしかして魔王候補とかの方が…?」


「それは絶対嫌だ!」


 被せ気味にきっぱりと否定するミナト。その様子をニヤニヤしながら見ていたシャーロットであったが、不意に真剣な表情でミナトの両肩に手を置く。顔がこれまで以上に近い。思わず顔が赤くなるミナト。


「心配しないで!大丈夫!ミナトがどんな種族であっても私はこれからもあなたの側にいるから!」


 そう言って微笑むシャーロット。そんなとびっきりの笑顔を見て、最高に素敵だと思いつつ心から安堵するミナトであった。


「ミナト!スキルの詳細も見てみましょう!」


 そう促されてミナトはステータスが表示されているプレートの【保有スキル】に触れた。途端に画面が展開される。



【保有スキル】泰然自若:

 落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。


【保有スキル】火竜を饗する者:

 火竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。

 眷属化した火竜の能力も限定的に使用可能。

 火竜をもてなすことで火竜からの尊厳を得た者が得られるテイムスキル。

 もてなすだけではなく力量を示す必要もあり習得は非常に困難。

 テイムスキル【火竜を統べる者】の上位互換。



 ミナトは頭を抱えて天を仰ぐ。きっと頭痛がしていると思う。【保有スキル】火竜を饗する者はどうやらとんでもないスキルらしい。


「本当にすごいわね!【火竜を統べる者】の存在は知っていたけどスキルとして保有した者がいたという話は聞いたことがないわ。その上位互換って…。世界の属性を司る竜の一種を配下に加える…。かつての魔王も出来なかった偉業と言えるわね…」


 シャーロットが素直に感心する。


 きっとラノベの世界では喜ぶべきことなのだろう。闇魔法だけでも結構無敵だったらしいのに…、また人に言えないスキルが増えてしまいどうしようかと心で涙を流すミナトであった。


「ミナト!まだよ!【保有魔法】も楽しみね!」


 無邪気にそう言われて今度こそ頭痛がしていると感じるミナトであった。

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