第38話 闇魔法の効果
『いい?ミナト?
かつて出会ったルガリア王国の東にある大森林で闇魔法の訓練を行った時、シャーロットが言ってくれた言葉を思い出しつつミナトは
ミナトは全てのレッドドラゴンを拘束できる数の漆黒の鎖を自身の影から生み出した。出現した無数の鎖は触手のように有機的な動きをしながら空間そのものを埋め尽くすかのように凄まじい勢いで拡散しレッドドラゴンを拘束すべく襲い掛かる。それにしても鎖の数が多い。鎖が次々とレッドドラゴンに絡みつく。話しかけてきたひと際大きなレッドドラゴンも瞬く間に鎖に絡みつかれた。
「な!?この鎖は!?な、何!?」
そう言うと驚愕の表情を浮かべながら地面に落下する。他のレッドドラゴンも次々と落下する。
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
確かステータスにはそうあった。
「そうか…。ドラゴンは羽ばたいているように見えて翼に魔力を通して浮いているって設定のラノベがあったっけ…。この世界もその設定?それにしてもやりすぎたかな…」
思わず呟くミナト。あの大森林で最初にこの魔法を唱えたとき、同じように空間を覆いつくすかのような夥しい鎖を発生させ、それに絡めとられたシャーロットがあられもない姿になったのは二人だけの秘密としていた。
あのときのシャーロットはかなり…。目の保養になった光景を思い出しつつミナトは落ち着いた状態で話しかけてきたひと際大きなレッドドラゴンに近づく。漆黒の鎖に拘束されたレッドドラゴンは唸りを上げるもののそれ以上の行動はできないらしい。【スキル無効】【魔法行使不可】の効果で空を飛べず、ブレスも吐けないようだった。
「くっ!貴様!我々に何をした!?」
「えっと…。スキルと魔法が使えない状態にした…、のかな?」
「ふざけるな!!そんなことが…」
「いいから話を聞いてもらえないですか?」
若干うんざりした様子でミナトはレッドドラゴンに話しかける。状況は振出しに戻ったと言えた。
「こ、殺すがいい!!我らはこのように生き恥を曝してまで命乞いをしようとは思わん!!」
「なんでそう意地を張るのかな…」
そう言いながらミナトはレッドドラゴンの鼻先をツンツンとつつく。
「こ、こら…、そのようなことを…、あ…、や、やめて…、そこは…、ちょっと…」
ミナトは止まらない。さらにコチョコチョと鼻先を弄り始めた。
「…ふ、ふひゃ!!や、やめい!!やめて…、止めてくれ!!わ、我らを愚弄する気か!!このようなことをするとは一体何が望みだ!?」
「やっと話を聞いてくれる?先ずはっきりさせておきたいんだ。おれは魔王の先兵じゃないぞ!」
そういうミナトを前にレッドドラゴンは鼻を鳴らす。
「我が一族を一瞬にして無力化するような者にそう言われて信じられると思うか?」
「そんなこと言われても…」
ぐったりするミナト。
「彼の言っていることは真実よ!!」
ミナトの耳によく知った美しい声が届く。
「シャーロット?一体どこに…」
そう言いかけたミナトの言葉はレッドドラゴンの驚愕の言葉に遮られた。
「こ、この声は…?ま、まさか破滅のま…」
ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!
何かを言いかけたレッドドラゴンが鎖に拘束されたままに爆風に巻き込まれて飛んでいく。
『きっと触れてはいけない彼女の過去に触れたんだろうな…』
そう心の中で呟きつつレッドドラゴンの無事を祈るミナトであった。
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