第33話 美人のエルフのダンジョン解説

「いい?ミナト!ダンジョンの内部はこの世界とは異なる世界である、とされているわ」


 幾分真剣な表情と共にそんな説明をしてくれる美しいエルフ。


「この世界とは異なる世界?」


 首を傾げつつも何とかそう答える。確かそんな設定のラノベを読んだことがあるような、ないような…。本業バーテンダーの知識ならいざ知らず…、冒険に関しては全くの素人である。今のミナトにはオウム返しがやっとであった。


「そうなの!」


 そう言って人差し指を立てるシャーロット。


「この世界では斃した魔物はそのまま死体になるわ。ミナトと初めて会った時に斃した魔熊がその証拠ね」


「美味しく頂いたよね?」


 ミナトの言葉に頷くシャーロット。


「そう、それがこの世界の普通!だけどダンジョンは違うわ」


「斃すと宝石とかアイテムに変わるとか?」


 何気なく返したミナトの答えにシャーロットが驚き、怪訝な表情で迫ってくる。


「ミナト…?あなた何でそれを知ってるの…?」


 怪訝な表情ではあるが元が相当な美形なので嫌な気は全くしないミナトである…、が、ちょっと距離が近い。


「い、いや…、前にいた世界にそんな感じの物語があって…」


 若干慌てながらもミナトが返す。


「ふーん…。あなたがいた世界って想像力の逞しい人が多かったのね…。それでダンジョンについてだけど…」


 怪訝な表情は冗談だったのかと思うくらいにいつもの表情に戻ったシャーロットは丁寧にこの世界のダンジョンについて説明してくれた。


 彼女曰く、ダンジョンはミナトが現在いるこの世界で原因不明に発生する迷宮の類であるとされている。その内部では魔物を斃すと何故か価値のある宝石、魔石、アイテムといったドロップ品と呼ばれるものを得ることが可能であり、時には宝箱のようなものまで発見される。不思議なのはどんなに魔物を斃しても宝箱の中身を持ち帰っても、それらはいつの間にか復活してしまうということだ。そういった内容の説明が詳しく続く。


「魔物の種類はそんなに変わらないけど、宝箱は出現位置が変わるのよね…」


 そうシャーロットは説明してくれる。またダンジョンによっては主と呼ばれる魔物がいてそれを斃すと一定期間ダンジョンから魔物と宝箱が消滅するらしい。人々はそれをと呼び冒険者にとっては富と名声を得るチャンスとなるのだという。また有名ダンジョンの踏破は高位の冒険者資格を得ることについて極めて有利に働くとのことだ。


「主がいないダンジョンもある?」


 ミナトの問いにシャーロットは曖昧な表情を浮かべる。


「恐らくいない、とされているけど証明はされていないのよね…。主が確認されていないダンジョンって呼んだ方が正確かも知れないわ」


の証明は難しいってやつね…」


「そういうことね…。それに関連してダンジョンには姿を隠して主や他の魔物を管理するさらに上位の存在がいて、それがダンジョンに冒険者を招き入れているって仮説を立てた人もいたわ。当然、証明はできていないけど…」


「確かそんなラノベがあった気もする…。確か感情の高ぶりをエネルギーにするから冒険者が死に過ぎないように丁度いい感じにダンジョンを運営する的な…?宝箱もその運営者が置いているって…」


「そんな感じよ。ミナトの世界の作家って本当に想像力が豊かなのね…。ええっと…、ダンジョンの一般的な説明ってこれ位かしら…。その他の細かい特徴は都度ダンジョンに行ってから説明するわ。ダンジョンによって微妙な違いがあるから一つの説明が全てのダンジョンに通じると思われるとちょっと危ないしね」


「分かり易かったよ。ありがとう、シャーロット」


「ふふん。もっと感謝していいのよ?」


 ミナトの素直な感謝の言葉にドヤっと胸を張る美しいエルフ。明るいイエローのニットからなる薄手のセーターはその胸の柔らかな膨らみを何故か強調している。深めのスリットから覗く見事なまでに美しい脚線美も目に悪い。


「となると…、次に必要なのは…?」


 なんとかガン見を回避したミナトが話題を振ると、


「買い物ね!装備を整えたら出発しましょう!」


 この世界にやってきたミナトにとって初めての冒険…、その幕が遂に上がろうとしていた。

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