第25話 ウイスキー・ソーダ(ハイボールとも言う)完成!
『これもテンプレ的展開かな…。それにしてもやっぱりドワーフって酒の話になると目つきが変わるんだ…』
そんなことを思いながらもこの機会を逃すミナトではない。市場の人気の変化への対処はできないが、モチベーションが低下しているというなら彼の仕事が重要で、周りから必要とされる仕事であることを再認識させればよい。彼には品質の良いグラスを作る技術がある。今、この場の状況でミナトに出来ることとは…。
「しかし、お若いの、お主に燻り酒の何が分かるんじゃ?そもそもドワーフ以外は燻り酒をあまり好まんとも聞いておるが…」
「そうなの?シャーロット?」
「ええ。酒店で買うことはできるけど、これまで私もあまり飲む機会はなっかたわ…。確かにドワーフのお酒って認識があるかも…」
「へぇー。それは勿体ない。きっと美味しいよ。アルカンさん!どうでしょう?貴方のこのグラスを使って私に一杯作らせて頂けませんか?」
スキルの『泰然自若』が発動しているのかバーテンダーの口調となったミナトが店頭に並んでいた薄い
「一杯作るとは?」
この世界にはカクテルの概念がない。
「貴方のそのウイス…、じゃなかった燻り酒に少し手を加えます。貴方が言っていた水を加える飲み方…、私は水割りと呼んでいますがその飲み方も素敵だと思います。そして私はそれとは少し違う飲み方でとても美味しい飲み方を提案させて頂きたい」
「そんなものがあるのか?」
「はい。気に入って頂けるかと思いますよ」
「ミナト!それもカクテル?」
シャーロットが聞いてくる。
「ま、厳密にはカクテルかな…。独立した一つの飲み方になっているような気もするけどね…」
そう聞いてシャーロットの目も輝く。
「アルカンさん!ミナトの作るカクテルは本当に美味しいの!是非、試してみて!!そして、あのう…、で、できればそのついでに私も一杯頂きたいわ…」
後半はちょっと顔が赤くて声が小さい。
「お主…、ただのエルフか…?」
アルカンにそう言われシャーロットの耳がぴくっと動く。
「儂も年を重ねている故な…。まあよい…。ミナトとやら、一杯頂こうかの?こちらのエルフの嬢ちゃんにも作っておくれ」
そう言ってアルカンはミナトに燻り酒の入ったボトルを手渡す。
「ありがとうございます」
そう言って一礼し、ボトルの口を開いて香りを確認し、一滴落して味を見る。
「間違いない…。ウイスキーだ。それもアイラのスコッチ的な味と香り…。これなら大丈夫…」
そう呟く。日本で言うところの粗悪品と呼ばれるようなものだったらという一抹の不安もあったが杞憂に終わった。ミナトはシャーロットへと向き直る。先程のアルカンの言葉を追求する気は今のミナトにはない。自分の命を助け今も手伝ってくれている。それでミナトには十分だった。
「シャーロット!手伝ってほしい。氷と炭酸水を使いたいんだ。炭酸水は冷たいやつをお願いしたい」
「任せて!」
ドヤっとポーズを決める美しいエルフ。やっぱり魅力的だった。
「このグラスにちょうどいい大きさの氷を二つ入れて欲しいんだ」
「はいっと!」
ミナトがカウンターに置いた薄い
カラン!カラン!
グラスの中に立方体の氷が二つ出現した。
「み、水属性の魔法!?それもこれほど見事な魔力操作は…」
驚愕するアルカンの声を置き去りにナイフを取り出したミナトはグラスに入った氷をくるくると器用に回す。バースプーンを使いたいがまだそういった専用の道具はない。未だにナイフで代用である。グラスの温度を確認し、燻り酒ことウイスキーを静かに注ぐ。
「まだメジャーカップもないからね…」
正しくはジガーとも言われるメジャーカップも今は手元にない。あるともう少し様になると思うミナトであるが、プロのバーテンダーとしてボトルからグラスへウイスキーを直接注ぐその所作は誠に見事なものであった。
「シャーロット!冷たい炭酸水をお願い。このグラスで八分目くらいまで満たしてほしい」
「了解よ!」
シャーロットの右手が青く輝き空間に生み出された水に二酸化炭素が圧力と共に混ぜられる。空中で球体上に作られた炭酸水が静かに琥珀色の液体と氷が入ったグラスを満たしていった。
「な、なにがっ!?この魔法は!?何が起こっている!?」
「おっけーだ!ありがとうシャーロット!」
「えへへへへ…」
何かとんでもないものを見てしまったかのように驚愕しているアルカンを視線の端へと捉えながらそう言ったミナトは炭酸が沸々と沸く薄琥珀色の液体で満たされたグラスに手を添え、ナイフを用いて数回かき混ぜる。
「ウイスキー・ソーダ!完成!ハイボールとも言うけどね!どうぞ!」
そう言ってミナトはカウンターに座っていたアルカンの前へそっとグラスを置くのだった。
「いろいろと驚くべきものを目の当たりにした気がするが…、先ずは頂こう…、つ、冷たいのだな…」
そう言いながら薄い
「!!!!」
それは長年に渡りガラス工芸家として一線で活躍してきたドワーフを新たな出会いと挑戦の日々へと
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