第21話 貴族御用達の店(これもテンプレか…)
「この物件に決められた際はご連絡お願いしますにゃ!他の物件を見に行く場合も声を掛けて頂ければ対応しますにゃ!」
ミナトとシャーロットの予算を知っているからか上客として認識されたらしくそんな言葉を貰って内覧を終了したミナトとシャーロットは王都の商業地区を歩いていた。今目指しているのはガイゼイル商会というところが運営しているという店舗。ガイゼイルと言えばこの王都において高級なカトラリーとテーブルウェアの代名詞だそうで…、つまり高級食器を扱っている店である。
品質に妥協はしたくないというミナトの希望に沿うような形で商業ギルドの受付嬢が教えてくれた店であった。
「ミナトの欲しいものがあるといいわね」
「さてと…。どんな感じだろうね…」
「やっぱり心配?」」
シャーロットにそう言われミナトは受付嬢との会話を思い出す。
「確かに多数の職人を抱えて高級品を扱っているのですが…」
「何か問題でも…?」
そう問いかけるミナトにガイゼイル商会の店を紹介してくれた受付嬢はもう一つの情報を教えてくれた。
「貴族相手の商売を中心にしていまして…、平民相手には接客態度が悪いとか…、販売する商品の質が悪いとか、最近はあまり良い噂を聞かない商会でもあるのです…」
そんなところもファンタジーだと思うミナトである。
「ちょっと不安もあるけれど別の工房も教えて貰ったしね…。とりあえずガイゼイル商会の店に行ってみよう」
「わかったわ!」
ミナトは美人のエルフを伴ってガイゼイル商会が運営している店舗を目指すのだった。
その結果…。
「申し訳ございません。当店ではお客様に相応しい品物は扱っておりません。お帰り下さい」
下品なほどにゴテゴテと仰々しい飾りがあしらわれた大きな門からなる入り口で、黒服を纏った店員から豪快に門前払いされるミナトとシャーロット。
「私たちは客よ!どういうことなの!?」
怒りを隠さずに店員に食い下がるシャーロット。呆れた顔で溜息をついた黒服の店員は言下に言い放つ。
「あのですね…。当店はこの国の王族や貴族をお客様に持つ高級店でございます。あなた方は冒険者ですよね?当店はあなた方のような冒険者風情が来るような店ではないのです。お引き取り下さい」
『あー、これもテンプレか…』
そんなことを考えていたミナトはとんでもない魔力を察知し思わず声を上げる。
「え!?」
ユラリ…。
闇魔法 Lv. MAXであるミナトはシャーロットから立ち昇る危険な魔力を目の当たりにして滝のような脂汗が額から一気に噴き出すことを感じていた。シャーロットによると魔力は魔法が使える者のみが感知することが出来るのだという。この黒服の店員は自分の命…、というかそれを含めた店舗全体の存在そのものが風前の灯火であることに気付いていないらしい。
「きゃっ!!」
「失礼しますー!!」
シャーロットを子猫のように抱き寄せ…、いや表現が優しすぎた…、彼女の身体を横ざまに引っ掴むかのようにしてその場を後にする。
「ふん…、貧乏人が…」
そんな言葉がミナトの耳に微かに届く。命の恩人になんて言葉をかけるんだと思うミナトであった。
「ミナト!なんで止めたの?消し炭にするつもりだったのに!!」
少し行ったところで可愛らしくも美しい顔をぷんすかと怒らせて物騒なことを言う美人のエルフ。
「まあまあ、シャーロット、落ち着いて…。あんな奴の相手をしても時間と魔力の無駄使いだよ。どのみちあの店で買い物はしなかったと思うし…」
「どういうこと?」
きょとんとしたシャーロットに聞かれてミナトはあの店の印象を語る。
「チラッとだけど奥にあった商品を見る限りではおれのバーでは使えないかな…」
ミナトが目にしたゴテゴテとした装飾のついた皿やグラスについてシャーロットに説明する。恐らく貴族の受けを狙った大仰な装飾を施した商品が中心なのだろう。とてもじゃないがミナトの店では使えない。
「もう一つ商業ギルドで教えてくれたドワーフがやっている工房があったじゃない?そっちに行って直接交渉してみよう!ドワーフか…。ファンタジーだね…」
「ぶー!」
まだ不満が燻っているのかぶすっとした表情のシャーロットにミナトは笑顔で片目をつぶり、その尖った美しい耳元でこそっと呟く。
「おれだってあんな奴に良い印象なんて持てないよ…。門前払いはないよな。実は…、ごにょごにょ…」
それを聞いたシャーロットは一瞬驚いたような表情をしたが、次第に笑顔を取り戻す。どうやら機嫌が直ったようだ。
『今頃、
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