第11話 闇魔法が凄いことに…
「シャ、シャーロット…?大丈夫…?」
絶叫しているシャーロットに恐る恐る声を掛ける湊。しかしシャーロットには湊の言葉を聞いている余裕などなかった。
「闇魔法 Lv.MAXって…、ミナト!あなた帝国に雇われて私を殺しに来た伝説の暗殺者!?」
とんでもないことを言い出した。
「え…?」
唐突にそう言われて言葉を失う湊。シャーロットが止まらない。
「いやいやいやいやいやいや…、人族で闇魔法 Lv.MAXなんて不可能…、ミナト!あなた…、さては記憶を失った魔王でしょ!?これは魔王が記憶を失い王都でのんびり暮らそうとするとかっていうよくある物語の流れだったのねえええええええええええええ!!!!」
シャーロットの中で湊が魔王にランクアップした。
「シャーロット!!落ち着いて!!ステータスを見て!ほら!!人族って書いてある!!魔王じゃないと思うんだけど…」
そう言われたシャーロットはほんの少し我に返ってまじまじと湊のステータスを見る。
「……………………確かに人族って書いてあるわね…」
「ふぅ…。落ち着いてくれた…」
そう呟き胸を撫で下ろす湊。
「じゃあ!やっぱり伝説の暗殺者なのねええええええええええええええええ!?」
再度ヒートアップした。
「どこの暗殺者が暗殺対象にカクテルを振舞うのさ…」
「酔わせた隙に
「手口が伝説の暗殺者じゃなくてチンピラになってる!」
「ふっ!残念だったわね!この私はそう簡単に酒には酔わない!この私を酔わせたければ…」
「ちがーーーーーう!!違うから!!ね!落ち着いて!ほら深呼吸!おれは魔王でも暗殺者でも街のチンピラでもないから!!ほら息を吸ってーーーー!吐いてーーーー!」
すーはーすーはー。
湊に言われて律儀に従う美しいエルフ。
すーはーすーはー。
今度こそ落ち着いたらしい。
「シャーロット…。もう大丈夫?」
「ごめんなさい、ミナト…。ちょっと取り乱してしまったわ…。でもあなたのそのステータスどうなっているの!?」
湊とシャーロットはもう一度、ステータス画面を見る。
【名 前】 ミナト・ホシノ
【年 齢】 二十一
【種 族】 人族
【攻撃力】 一〇〇
【防御力】 一〇〇
【俊敏性】 一二〇
【保有スキル】 泰然自若
【保有魔法】 闇魔法 Lv.MAX
「【攻撃力】、【防御力】、【俊敏性】が三桁…。冒険者になるなら最高よ…。冒険者ギルドが知ったら放っておかないでしょうね…。【保有スキル】泰然自若?私も見たことがないスキルだわ」
「うーん…。何となくわかるような気もするけど…」
そう言って湊は何気なくステータス画面の【保有スキル】の部分に触れた。するとステータス画面が輝き【保有スキル】の下部に追加のメッセージが表示された。
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
「何だこれ…?」
「【保有スキル】にこんな解説が出るなんて見たことがないわ…。どうなっているのかしら…。それは置いておくとしても…、そういえばカクテルを作っているときのミナトって落ち着き払って流れるような動作だったわ。このスキルが作用していのかしら…?」
「そういうこと?確かに魔熊と出会ったときも何故か落ち着いていた気がする…」
「結構よさげなスキルじゃない?儲けものってやつだと思うわ」
「そうかな…?でもなんで接客する前提なんだ?」
後半の文章に何かひっかかる湊である。
「それよりも問題はこっちよ!」
シャーロットが【保有魔法】の項目を指し示す。
「闇魔法 Lv. MAXなんて聞いたことがないわ…。ミナト!この部分に触れてみて、今使える闇魔法が表示されるはずよ?」
そう言われた湊はシャーロットの言葉に従いステータス画面に触れる。するとステータス画面が再び輝き新たな文言が表示された。
「!!!」
シャーロットの目が点になる。
「ミナト…。あなたやっぱり魔王かも知れないわ…。これって伝説の闇魔法ばかりよ…。明らかに人外の領域ね…」
「なぜそうなった!?」
そう言いながら湊がステータス画面に触れると三度画面が輝きそれぞれの魔法に追加のメッセージが表示された。
【闇魔法】
全てを燃やし尽くす地獄の業火を呼び出します。着火と消火は発動者のみ可。火力の調節は自由自在。ホットカクテル作りやバゲットの温め直しなど多岐にわたって利用できます。素敵なアイリッシュコーヒーがお客様を待っている!?
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
【闇魔法】
至高のデバフ魔法。対象の能力を一時的に低下させます。低下の度合いは発動者任意。追加効果として【リラックス極大】【アルコール志向】付き。お客様に究極のリラックス空間を提供できます。
【闇魔法】
全ての音や生命反応を感知不能にする透明化に加えて
「完全に魔王で暗殺者だわ…。でも後半の文章はちょっと変わった内容ね…。ね?ミナトもそう思うで…」
「なんだこりゃあああああああああああああああああああああああ!」
シャーロットの言葉を遮って、今度は湊の声が夜の森に響くのだった。
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