第10話 魔法は貴重な才能らしい…
「ミナトはこの世界で初めて会ったのが私だから、魔法を使うことを異世界のこととして捉えていると思うのよ…。だけど実際は違っていてこの世界で魔法が使える者は極端に少ないの」
「魔法が使えるのは特別な存在?」
湊の問いに頷くシャーロット。
「ええ……。さっき子供の時に教会とかでステータスを確認するって言ったじゃない?もし【保有魔法】に表示があったら神童発見とかって大きなニュースになるわ。そうして国に連絡されて騎士団や研究施設に半ば強引に連れていかれることになって……」
それを聞いて顔が引き攣る湊。
「それはちょっと嫌だ……」
「だから魔法が使える者の大半はどこかの国に帰属して騎士団や研究所にいることが多いわ。中には貴族と同格の権利を得て庶民を見下すような者もいる。後はそういうのを嫌って冒険者になっているかしらね」
湊の頭には異世界ファンタジーでありがちな国に囚われ使い潰される絵図が浮かんでいた。
「シャーロットもそういうところにいたの?」
「私もここ数……………年……、数年よ!数年は東にあるアムル帝国の魔法研究所にいたわ」
「いま何か言葉を省略したよね?ね?十?百?千?」
どうしても気になってしまった湊がそう言うとシャーロットは真っ赤になって否定する。
「ち、違うわ!ちょ、ちょっと言葉を噛んだだけじゃない!数年よ!数年!そ、それにレディにそんなこと聞くものではないわ!」
今回は
「ごめん。もう言わないよ。それにしてもよくそんな施設から出られたね。簡単に辞められた?」
「ふふん。本気になった私を縛り付けることが出来る存在があるなら見てみたいものだわ……」
美しさはそのままに悪い笑みを浮かべてニヤリと笑うエルフ。
「円満退社とはいかなかったみたいだね……」
何かが吹っ飛んで燃え上がるような映像が脳裏を横切った湊にはそう呟くのが精一杯だった。
「私のことはいいとして、とにかく!もし【保有魔法】に何か表示されるのは重大なことっていうのは覚えておいて。滅多にないことだけどね」
「分かった。気を付けるよ。それと教えてほしいのだけどこの世界の魔法ってどんなものがあるの?」
湊の問いにシャーロットが答える。この世界の魔法は火、水、土、風、光、闇の六つの属性に分かれているという。属性ごとに個別の魔法が存在するがそれは種類が非常に多いので文献などで確認したほうがいいらしい。魔法が使える場合【保有魔法】のところにその属性とレベルが表示されるということだ。
「レベルは十が最高って言われているけどそこに到達した者はまだ誰もいないと言われているの。そうね…、レベルが五を超えると超越者とかって言われるかもしれないわ。普通は一か二よ。三あれば天才扱いね」
「そうなんだ……。シャーロットはどれくらいの魔法を使えるの?あ、聞いちゃだめなんだっけ…?」
「ミナトにはもう魔法を見せているし気にしなくて大丈夫よ。私はね闇属性以外の全ての魔法が使えるわ。レベルは全て八!」
ドヤっとポーズを決めて宣言する美しいエルフ。それを聞いて遠い目をする湊。
「それって……、めちゃめちゃ凄いんじゃ……」
それ以上、言葉が出てこない。実際に古の時代より生きてきたこのエルフは各国で畏怖、尊敬、信仰の対象となっており、魔法における天災級の災いにして至高の存在だったりするのだが湊はそんなことを知る由もない。
「ふふん。私の偉大さが分かったかしら?」
再び、ドヤっとポーズを決めるシャーロット。それを見てやっぱり美しくて可愛いと思う湊であった。
「これで大体の説明は終わったわ。ミナト!ステータスを見てみる?」
シャーロットの言葉に湊が頷く。
「ああ。頼むよ」
「私はステータスを見ないからもし聞きたいことがあれば後で言ってね」
そう言うとシャーロットは湊の背後に立ちその肩に手を置いた。目を閉じて集中する。青白い光がシャーロットの周りに集まり始めた。
「ステータス!オープン!!」
美しい声が響く。それと同時に湊の前に透明なプレートが出現し、そこには次のような表示があった。
【名 前】 ミナト・ホシノ
【年 齢】 二十一
【種 族】 人族
【攻撃力】 一〇〇
【防御力】 一〇〇
【俊敏性】 一二〇
【保有スキル】 泰然自若
【保有魔法】 闇魔法 Lv. MAX
「!」
思わず絶句する。
「ミナト……?どうしたの?」
背後からシャーロットの声が聞こえてきた。
「シャ、シャーロット……。君は命の恩人だ。だからおれのステータスを見てもらって構わないからどういうことか教えてくれ!」
「いいの?」
「ああ、お願い……、お願いします……」
湊の様子がおかしい。気になったシャーロットは湊の隣に来てステータス画面をのぞき込む。
「なんなのこれええええええええええええええええええええええ!!!!!」
美しくも大きな叫び声が東の森に響き渡るのだった。
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