第80話 火花
「そなたには我らを許してほしい。そして、今後もビークベル家の嫡男として国を支えてくれはしないか」
「ですが……私は朝議に許しなく乱入し、宮廷貴族の方々に大変な不快な想いを……」
「皆、お主の行動に感銘を受けたようじゃぞ。罰しろなどという者はおらんだろう」
国王の言葉に、ロシュアは深く頭を垂れた。
「……ヴィンドソーン国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます」
人をかき分けて寄ってきたヘリメナが、国王の前に立って挨拶をした。
「おお。王女殿下。こちらから呼びつけておきながら大変な無礼をした。貴国には正式に謝罪と詫びの品を送らせてもらう」
「いえ、そんなことはどうでもいいのです。ただ……こちらの方は?」
ヘリメナがロシュアのことをちらちら見ながら国王に尋ねた。
「我が国のギーゼル領を治めるドーリア・ビークベル伯爵の嫡男でロシュア・ビークベルと申す者である。恥ずかしながら、王太子が愚かな振る舞いをしたもので、この者が諫めてくれたのだ」
「さようでございますか……あの、私、サフォア王国の第一王女ヘリメナと申します。ロシュア様、とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「え?……」
一国の王女に突然親しげに話しかけられて、ロシュアは顔を上げて目を瞬いた。
そこへ、
「ロシュア様っ!」
「え、うわっ」
突然飛びついてきた少女を受け止めて、ロシュアは面食らった。
「私、感激しましたわ!ルティア様のために、こんなに……素敵ですわ!本当に素敵!」
「モ、モガレア様……?」
「嫌ですわ、ハルベリーとお呼びになって!」
「ちょっと貴方なんですの!?国王陛下の御前ですのよ、そのように殿方に縋りついて、羨まし……はしたないですわ!」
ロシュアにすりすりすり寄るハルベリーを見て、ヘリメナが眉尻を吊り上げる。
「あら、大変失礼致しました。ロシュア様、向こうでお怪我の手当を……」
「ちょっと待ちなさい!その怪我ではすぐに家に送り届けた方がよろしいわ!私の馬車ならすぐに出せますのよ。乗せて差し上げますわ!」
「あらあら、サフォアの王女殿下にそのようなお願いなど出来ませんわ。ご心配なさらず。ロシュア様のことは私が責任もって手当の後で家まで送り届けますわ」
ハルベリーは微笑みながら言う。侯爵令嬢と王女の間に火花が散った。
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